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訪問者

「私?私は~……」

そう言いながら少女は立ち上がり、髪をくるくるいじりながら


「私の名前は五月雨さみだれ クリルさね。妖力ようりょくとかは説明めんどくさいから省くさね」


「いや、それが一番気になるんだが……」


「話すと長くなるさね」


「いやそれは一向に構わな」

「私が嫌だ!めんどくさいさね」

(言ってる途中で拒否された!どんだけめんどくさいんだよ!?)

肝心な部分が聞けなかった。


貴方あなたの名前は何て言うさね?ちょっと気になるさね」

クリルは眼帯についてるガラスを反射させながら聞いてきた。

「そういえば言ってなかったか、俺の名前は鬼灯ほおずき 仙人せんとだ。お前らと違って普通の高校生だよ」

仙人は軽く頭を掻きながら答えた。


「ふーん普通さね……これだけの妖力ようりょくをもちながら…」

なぜかクリルは目尻めじりをピクピク震わせながらこちらを睨んできた。


「おいおい、なんでそんな睨む」

仙人は少し後ろに下がった。

すると今まで黙っていたウランが突然叫び


「おいクリル!」


「分かってるさね、妖力ようりょく少しは回復したさね」


「仙人、話の途中だけど私たちもう行くさね、今は何かと忙しいさね」

そう言うなりウランとクリルは仙人の前から走り去った。


「あっおい!」

仙人は呼び止めたが一人と一匹は走り去って行った。


「そんなに忙しいならなぜ木に引っ掛かってたんだ……」

仙人はすでに走り去った二人を見ながらそう呟いた。





仙人は何かモヤモヤしたものを抱えながら家に着いた。


「結局妖力ってなんだったんだ……俺にもあるみたいな事話してたが…」

考えれば考えるほどモヤモヤしたものが頭に積み重なる。

頭を抱えて悩んでいる時、不意に後ろから声が聞こえてきた。


「おう仙人、随分遅い帰りじゃないか、どこか寄り道でもしてたのか?」

そう言うこの男の名前は鬼灯ほおずき 神治しんじ、仙人の父親だ。喫茶店を営んでおり、今は休憩で外まで出ていたところだ。


「なんだ親父か…まぁそんなところだ」


「なんだって何だよ、つまらなそうに言うんじゃねぇよ。嘘でもここは父親に敬意を払うべきだろ」


「嘘でも払えねえよ、てかなぜこんな駄目人間おっさんに敬意を払わなければならない」


「ったく可愛げのねぇ息子だ。誰に似たんだ?母さんか?母さんなのか?」


「つまりそれは母さんに可愛げがないと?」


「よ~し休憩終了。さぁ仕事仕事、お前も手伝え」


「…話しをそらしたな」


「何の事かな?俺はそんなこと言った覚えはないぞ」

神治は早足でその場を去って行った。


「まぁいいか…」

結局仙人は仕事を手伝わず部屋に戻って行った。

 仙人の部屋は2階の片隅にある。

手伝いもせず、特にやることもない仙人はゲームをしていた。

2時間ほど経ったか経たないかしたとき、不意に父親の声が聞こえてきた。


「おーい仙人、お客さんだ」


(客?陽平でも来たのかな?でもあいつは部活のはずだが…)

仙人はそんな事を考えながら階段を降りて行った。

しかし一階にいたのは陽平ではなく、まったく会ったことのない女性だった。黒のコートを着ていて、黒く艶のある髪をしている。しかし髪の艶に反して生気のない肌の色をしていた。

女性は仙人を見るなり近づいてきて


ぬしが鬼灯 仙人君かい?」


「はぁまあそうですけど…」

そう言うと女性は仙人の背中に軽く手をやり


「そーかい君がか、では仙人君、すまないけど場所を移動してもらってもいいかいな?ここでは何かとね」

あまりにも唐突な事だった。

無論見ず知らずの女性にそんなことをする義理はない、仙人は無難に断ろうとしたのだが、


「ッ!?」

なぜか女性と目が合った瞬間体が動かなくなった。


「もう質問はやめじゃ、すまぬがお主には来てもらう」

女性はそう言うと席から立ち上がり


勘定かんじょうじゃ、コーヒーいくらじゃった?」


「え?まだ御出ししていませんが…」


「後で戻ってくるゆえ、置いといてくれ」

そう言いながら女性はおさつをテーブルに置き店を後にした。

仙人もそのまま女性と一緒に店を後にした。

神治はコーヒーを女性が座っていた席に置き


「ごゆっくり」

神治は誰もいなくなった空間でそう呟いた。




女性に連れてこられたこの場所は工場だ。この日は休みなのか人ひとりいない。もしくはもう7時を過ぎたところ。すでに作業員は帰ったのかもしれない。

(こんな場所に連れてこられるなんて、これから先絶対良い事ないよ!下手すりゃもう家に帰れねぇよ!)

仙人は体の自由が利かず、女性に操られている感じになっている。

女性は工場の入り口にかけてある南京錠なんきんじょうを手刀でぶち壊し、中に入っていく。


「主よすまんなーこんな所まで連れ込んで、じゃがこれも仕事のためじゃ、悪く思わんでくれな。」

そういって、女性は服の裾から何やら怪しいふだを取り出した。


「上はこの手の問題にうるさいからの~」

女性はその札を空中にばら撒いた。


「まぁ私はできることなら組織に入れたかったんじゃが、奴らと関わってしまったからの・・・」

空中にばら撒かれたふだは地面に触れた瞬間、札から人が現れた。


「札から人が!?」

仙人は動けない体でそう答えた。


「おいおい主よ、これはそんな脆い存在ではない、これは私の召喚した僵尸きょうしじゃ、あとこの札は呪符じゅふと言うものじゃ」


僵尸きょうし?それってもしかしてキョンシーの事か!?」


「ふむ、まぁ主から言わせればそんなところかの、まぁそんな事はどうでも良い。」

女性は肩をさすりながら。


「死ぬ前に教えてやる、主は魔族まぞくと関わったが故にこんなはめになった。まぁそれだけで十分なんじゃが主の場合、理由が2つあってな…」

女性は仙人を指さし


「一つめはさっきも言った通り主が魔族と関わったからじゃ。二つめは主の…いやそこまでは止めておこう。説明面倒だからそろそろってもらうかの」

女性は腕を振り下ろした。すると周りの僵尸達は一斉に仙人に飛びかかった。


「うわぁちょっと待て!死ぬのも御免ごめんだが、なにより説明途中でぶん投げんな!銀髪少女に続いて2回目かよ!」

なぜか妙に冷静なツッコミをする仙人。これも頭がパニックになったが故にできる技だろう。動かない体で必死に叫ぶ。


「それは良かったの。まぁ痛みは一瞬じゃ、すぐに楽になれる、安心して逝け」

呪符から召喚された僵尸と呼ばれるゾンビは仙人の首めがけ噛み付いてきた。


「うゎぁぁぁぁやめろぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!」

仙人は完全に死を覚悟し目を思い切り閉じた。


「………あれ?」

しかし何も起こらない。仙人は恐る恐る目を開けた。

目の前には僵尸がいた。しかし目の前の僵尸の頭と首の辺りには無数の小太刀こだちが突き刺さっていた。そしてそのまま僵尸は仙人の前に倒れた。倒れたと同時にそこには破れた呪符が散乱し僵尸は消えた。


「え!?何これ俺生きてる!?」

仙人は思わずそう叫んだ。


「なっ!?」

女性は目を丸くしそこに立ち尽くしていた。しかしその間にも小太刀は無数に飛んでいき周りの僵尸全てに命中した。小太刀で突き刺された僵尸は次々と消えていき破れた呪符と化していった。


「そんなゾンビにやられて安心して逝ける訳ないさね。噛み付かれて痛くないはずないさね、そこんとこ少しは考えろさね」

どこかで聞き覚えのある声。

後ろから足音がコツコツと足音が聞こえ仙人に近づいてくる。

仙人は顔を横に向けるとそこには銀髪で左眼には仮面のような眼帯をつけた少女が立っていた。


「お前はもしかしてクリル!?」


「もしかしなくてもクリルさね、やっぱり狙われたさね」

何がなんだかと言いたいところだったが、どうやらこれは仙人に投げかけた言葉ではなかったようだ。


「おいクリル、そろそろ構えろ、敵さん狙いをそこの小僧からお前に移したぞ」

そう言うのはフクロウ、もとい魔王ウランだ。クリルのすぐ後ろでふわふわ浮いている。

クリルは空間からゲームやアニメなどで見られる魔方陣まほうじんのようなものを出現させそこから小太刀を二本つかみ取った。


「…どうやら主は魔族のようじゃな、して主がこの哀れな少年と関わったが故に消される。なんと悲しいことか…」

女性は裾から呪符を取り出しそれを空中にばら撒いた。するとそこからまた新たな僵尸が出現した。


「別に消すのは貴方達でしょうが、魔族と関わっただけでそれを消すとは心配性にも程があるさね」


「おや?主もそう思うか、私もそう思っとる、じゃが私にはどうする事もできんしの。というか主が現れたおかげで仕事が増えた、魔族は見つけ次第抹殺と命じられておる、面倒だが主にもくたばってもらうかの」

女性は腕を空高くあげ


四季しき夕凪ゆうなぎ りんじゃ。主にはこの場でちりになってもらう」


夕凪ゆうなぎ……あぅ」

クリルは一瞬顔をしかめたが再び小太刀を構え直し、


「私は五月雨さみだれ クリル…まぁ魔族みたいなもんさね」

クリルは小太刀を十字に構えて答える、周りには無数の魔方陣まほうじんが出現しクリルを囲む。


「仙人は邪魔じゃまだからとっとと逃げるさね、とりゃぁ!」

クリルは小太刀を仙人に向けて投げつけた。


「ちょっ!何して!?」

小太刀は仙人の背中をかすった。

背中には呪符が貼り付けられていて、それが破れ落ちた。


「おおぅ!」

今まで動かなかった身体が嘘のように動くようになった。


「こんな紙切れ一枚に身体を支配されているようじゃ、まだまださね」

クリルはにやにやしながら魔方陣からまた新たな小太刀をとりだした。


「ちゃっちゃと逃げるさね、人一人抱えて勝てるほどクリル姉さんは強くないさね」


「人一人抱えてなくとも私には勝てんよ。勘違いしなさんな」

燐の周りにはすでに30ほどの僵尸が出現している。


「逃げるさね!仙人!」


「!!」

仙人は全力で走りだした。その場から逃げるために。


「ウラン!仙人を頼むさね!」


「へいへい、分りましたよ」

ウランはふわふわと仙人の後を追っていった。


「おいおい、私がそう簡単に逃がすとでも思うのかい?」

りん呪符じゅふを2枚、空中に放った。その札は仙人の逃げた方向に向かって飛んで行った。


「……」

クリルはそれを何もせずに、ただ小太刀を十字に構えていた。


「おや?その呪符は主も知っている通り僵尸が召喚されるぞ、それを知っていてむざむざ通すなど主は何を考えておるのやら」


「なら投げるなさね」

クリルは目尻めじりをピクピク震わせながら答えた。


「主の言うことにも一理あるが、あくまで私は捕まえて殺さなければならんのでね。ではそろそろ始めるとしようかえ」

燐は腕を振り下ろした。


「青二才の分際で私を倒すさね?……ふん、身の程を知れ!」

クリルは一気に駆け出した。






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