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玄武・金正日の野望

ク「毎度毎度チマチマと投稿してる作者だけど、最近学校で行われた歯科検診で歯のウィルスが発見されて歯医者通いしてるせいか、さらにチマチマ度が上がった感じがするさね」


仙「歯のウィルス…あぁ虫歯のことね…」


ク「歯のウィルスはご飯を食べづらくする恐怖のウィルスさね。うつになっちゃうんだょ?」


仙「ふむふむ、それで?」


ク「歯はちゃんと磨くことさね」


仙「前書き使ってまで伝える事ではないね……」





クリルと金正日キムジョンイル滝桜たきざくらから少しいった所にある『そば屋』に来ていた。

クリルたちは店の外のテーブルに腰を下ろしていた。


「これカフェさね?明らかに間違ってないさね?馬鹿さね?それとも革命さね?」

揉み上げの癖っ毛をクルクルいじりながら、椅子に座り早くも悪態をつくクリル。

クリルは持参したカリカリ梅をポケットから取り出し、それを口に含み、舌の上でコロコロもてあそぶ。

一方、蕎麦そばと三角油揚げをガッツリ食べていた金正日キムジョンイルはその手を止め、


「私の部下は、いままで君に送り込んだ組織の部隊及び、妖怪どもとの戦闘を観察し記録していた」

金正日はどこからともなく取り出したレポート用紙を確認しながら、それをクリルの目の前にポンと置く。

クリルはそれを拾い上げ、一通り目を通す。


「さっき知ったことかとかほざいた割にはずいぶん詳細に書かれてるさね~…」

クリルは目を細め、金正日を見据える。

視線を感じ取った金正日はゴホンゴホンとわざとらしく咳をして、話題を流した。


「とにかくだ。無季のあいつを退けた今の君は相当の妖力を回復していると私は思っている」


「妖力をほとんど作れない私にとって仙人は最高の栄養食品さね。御察しの通り、ここ最近私はすこぶる調子がいいさね」


「やはり喰らっていたか…そこでだ」

金正日はそこで一度言葉を区切り、水を一気に飲み干す。


「君にはある妖怪を退治してもらいたい。もちろん承諾すればそれなりの報酬は呈示しよう」


「……」

一瞬の沈黙が生まれた。

クリルは手に持っているレポート用紙をテーブルに放り投げ、足を組み、テーブルに肘をつけて静かに笑いながら、


「お断りするさね……私は貴方らをぶっ殺すために組織を抜けたさね。それがなんで組織に加担しなくちゃならないさね?」


「否!!今だからこそだ」


「今だからこそ…さね?」


「ああそうだ、君は確かに妖力を回復している…しかしそれはあの少年あっての話。もしそれが襲われ、命を落とした場合どうだ?不意の事故で折角の食糧を失いたくはないだろう?」

クリルは口で弄んでいたカリカリ梅を種ごとバキィ!と粉砕し、バリバリと音をたてながら噛み砕き、右腕を横にまっすぐ伸ばす。

それを見た金正日は両手を左右に振りながら、


「まぁ落ち着け、だから言っただろう?不意の事故で…と。私の言う不意の事故というのは組織の部隊ではなく妖怪…それも君が一度敗れかけた…」

クリルは伸ばした腕をさげ、軽く息を吐く。


土蜘蛛つちぐも……」

忌々しげに呟き、項垂れるクリルを見て、金正日キムジョンイルは口端を歪ませる。


「そうだ、その土蜘蛛つちぐもだ。正直我々も困っているんだ。そいつを退治してもらえれば私は私の仕事に従事できる」


「?」


「君も知っているだろう?組織の派閥争いの事だよ。今は私がほとんどの権限を持っていると言っていいが、残党がどうもうるさくてね」


「ここは一時休戦といこうじゃないか。君も妖怪と我々をいっぺんに敵にするより、どちらか片方を確実に叩いておいたほうがいいのでは?」

クリルは指を口にあて、しばらく考えた後、


「…それもそうさね。貴方らは共食いして、私は妖怪に集中できれば、こちらとしてもおんさね」


「そういって貰うと助かる」

金正日はそう言うと、アタッシュケースをテーブルの上におき、それをクリルに渡す。


「前金だ。受け取っておけ」


「ふん、貴方は本気で妖力を軍事力として使うつもりさね?」


「あぁそうだとも。この力は下手な核よりも恐ろしい力を持っている。戦場に投入されればたちまち世界のパワーバランスは崩壊する……これは私の切り札なのだよ」


「貴方が国の政権を息子に譲った理由が用意に想像できるさね。戦場に再び舞い降りたその時こそは名実ともに英雄さね?精々そうなることを祈ってろ」

クリルはアタッシュケースを持ち上げると、その場から去って行った。


「まったく、恐ろしい程貴方の計画通りに事が進んでるわね~」

クリルが立ち去った後、金正日の前に一人の少女が現れた。

歳は10代後半、男性用の黒のタキシードを着て、青い髪に紫のメッシュをしていて耳に髑髏どくろのピアスをしている。

見た目はまるでピエロのような少女だ。


「あぁ計画通りだ……このままあいつには妖怪と…組織の残党も一緒に片づけてもらう」

金正日キムジョンイルはそう言って再び食事を始める。


「妖力…嗚呼、それはそれは素敵な力だ……影武者ドッペルゲンガー!急ぎ組織の安定化を図り戦力を整えろ!あのどっちつかずの平和主義者にも声をかけろ!それでも躊躇ためらうようなら始末しろ!!」


「その平和主義者と仲が良いヘルも一緒になってあっちについちゃった場合は?」


「始末しろ」


「……人使いが荒いわね…」

クリルはアタッシュケースを持って一人歩いていた。


「ん?」

クリルは途中何者かの気配を感じ、動きを止めて右の拳を軽く握る。

そして振り向きざまに小太刀を出現させ、軽く振るう。


「ぬぉわぁぁぁぁぁああ!!!!!!!」


「…なんだ、ウランさね」


「なんだって事はねえだろうがよぉ!」

クリルの背後に近寄ってきたのはウランだった。ウランの背負っているリュックにはいつもは空薬莢が詰まっているのだが、今日はその上に訳の分からないおもちゃまで詰まっていた。

クリルは小太刀をしまうと、服のポケットに手を突っ込みカリカリ梅を取り出す。


「見ろよこれ、俺が華麗にキャッチし、見事俺の所有物となった品々~」

ウランはリュックの中身を自慢げに見せてくる。


「UFOキャッチャーの景品さね…じゃぁ今度はこっちの収穫さね」

クリルは鬱陶しそうに景品を手で払いのけウランにレポート用紙を渡す。


「わぉ、こいつは随分詳細に書かれてんじゃねえか」

ウランはクリルの戦闘結果が記されたレポート用紙を一枚一枚確認していき、それをクリルに返す。


「どうやらあちらさんは、相当お前の情報を掴んじまったみたいだな」

ウランはタバコを取り出し、それを口にくわえる。


「ジークがいる時点で、情報なんてものはざるのように漏れることくらい覚悟してたさね」

ウランはタバコを吸っていると、不意にクリルの表情がいつもと違うことに気づき、声をかける。


「なぁクリル……お前の戦闘能力を完全に把握されてるってのに何笑ってんだ?」

よく見るとクリルは笑っている。口元を歪めつつも、顔を手でふさいで笑いを必死にこらえていた。


「ウラン…私は愉快で愉快で腹筋が崩壊しそうさね」


「あ?愉快だ?」


「その通りさね」

クリルはそう言うとウランからタバコを取り上げ、その先端をレポート用紙に押し付ける。


「あの底なしの妄想狂バカが遂に理想郷ユートピアから帰ってこれなくなったさね。あいつ…将軍は本格的にその妄想を具現化するために動きだしたさね……」


「ほお……ではお前はどう動く?」

ウランは新たに葉巻を取り出し、それに火をつける。


「決まってるさね。外道の力を扱う輩は同じ外道の力をもってしてぶっ殺す。化け物は化け物同士で殺しあえばいい……」

クリルは正面から徐々に燃え広がってくるレポート用紙を投げ捨てた。


「力が回復するまでのその間…精々踊ってやるさね」

クリルは手に持っていたタバコを握り潰し、その場を立ち去った。

落ちた紙切れはやがて真っ黒な灰となり消滅していった。


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