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北の将軍現る!

ク「この作品はフィクションであり、実在した人物や団体とは一切関係ありません……それだけは言っておくさね!」








「噂っていうのは一日で千里先までも伝わるものかなヘル」


「……何が言いたいのよドーラ…?」


「クリルに武器壊されちゃったって聞いたんだけど本当かなって思って来たかな」


「……本当よ、私の得物は真っ二つ。まだ半日も経ってないんだけどね…噂ってのは馬鹿にできないわね」


「そんなヘルのために武器を持ってきたかな」


「はぃ?」


「うんっしょっと…ヘルみたいに狙撃銃で接近戦を好む変態さんなんて世界中駆け廻って、異世界へ行っちゃったとしても貴方以外いないかな。でもこれはそんなヘル専用の武器かな」


「言い方がすごく腹立つんだけどそこは追及しないであげるわ……見た目は前のとあまり変わりないようだけど…?」


「見た目は普通でも中身はまるっきり異次元の性能かな…例えるならそう……ツングースカ大爆発かな…」

「ヨロヨロになってるのにも関わらず、夜中に仙人せんとの部屋へ侵入とは…なかなか大胆じゃねえか」


「ウランそれどういう意味さね?私の見解が間違いじゃなかったら私が貴方を串刺しにしてやるさね」


「お~怖い怖い」


「むぅ、妖力だけ抜くのは何かとテクがいるから今はしたくないんだけど…」


「なら血を吸うか?」


時雨しぐれさんに怒られたくないさね」


「そうかい……ん?」


「………なんだ寝ちまったのか……まぁいいか」

「ん……ん?」

若葉が薫る5月の初めの朝、仙人せんとは息苦しさで目が覚めた。

ここは仙人せんとのベッドの上、当然仙人はそこで眠ってたわけなんだが……


「クリル……お前一体ここで何してる?」

仙人せんとの腹の上、途中で力尽きたのか心臓に小太刀を突き刺しそのまま眠ってしまっているクリルが。

何も知らない人が見たら火曜日にあったサスペンス番組みたいな展開の世界の幕開けである。


「あぅ……?」

いつもはどこぞのお年寄り並みの早起きで本当にどこぞのお年寄りとゲートボー…もとい客寄せの仕事をするクリルが珍しく仙人に起こされ目を覚ます。

半開きのまなこをこすりながら、


「Good Morningさね仙人………うゅ?」

ずれかけた眼帯がんたいの位置を調整しながらクリルはある異変に気づいた。

よだれまみれにしてしまった仙人の服からその下のズボンの位置、ちょうどその位置には突起物ができてクリルの胸に接触しており、クリルはそれを直視していた。


「あ…」

仙人の言葉と同時にクリル覚醒。


「…………」

クリルは無言のまま一瞬のうちに仙人の顔面に頭突きを打ち込んだ。


「理不尽だぁぁぁぁ!!!」

鼻血を盛大に噴きながら仙人は叫ぶ。

もとはといえば仙人の部屋にいたクリルが悪いのだ。仙人に何の罪もない。


「ちょっとは滞った血流が良くなったさね?」

クリルは目尻をピクピク震わせながら言ったが仙人の鼻血を見て、急遽それを舐め始める。その瞬間碧の瞳が紅く変化した。


「ちょっ!舐めんな!!くすぐったい!!!」


「暴れるなさね!!あっこら!?ティッシュで拭くなさね!!!もったいなぁぁぁぁい!!!!!」

ガタガタ……ガッシャーンという朝から近所迷惑な騒音とともに一日は始まった。

(3時間後……)

「あ…朝からちょっとバタバタしすぎたさね…しんどい……」

仙人が学校に行き、客もだいぶ少なくなってきた午前中。クリルはテーブルに突っ伏していた。


「あらあらどうしちゃったのクリルちゃん?元気ないわね~♪」

そうニコニコしながら話しかけてきたのは仙人せんとの母親、鬼灯ほおずき 時雨しぐれだ。

少し緑がかった髪の色をしており身長は140cmほど、顔つきはとても幼く見え、どうみても小学生くらいにか見えない。仙人せんとが小学生だった時の授業参観の際、先生が時雨のことを生徒と間違え、いろいろ(時雨による一方的な私刑リンチ)あったというくらいとんでもない外見の持ち主だ。


「あぅ…」

言葉もまともに発せられなくなったクリルを見て、時雨しぐれは嬉しそうにポケットからビンに入った液体を取り出した。


「ふふふ、そんな疲れ切っちゃったクリルちゃんにはこれ♪」


「何さね!?…この液体は……」

クリルは受け取ったビンを目を目尻をピクピクさせながら慎重に質問した。


「うん?特製ドリンクよ♪私もこのとしになって使ってみてるんだけど、元気でるわよ~♪」


「このとしって、時雨しぐれさんて一体なんさぃ…ひぃぃ!?」

クリルの迂闊うかつな発言に時雨はテーブルの目の前にフォークを投げ、クリルの目の前に突き刺す。

弾丸を口で咥えられるほどの動体視力をもってしても反応できないほどの速度でフォークが飛んできたのだ。


「クリルちゃん、私はこのとしじゃなくてこのとしでって言ったのよ~♪」

時雨しぐれはキャップをあけて一口飲み、口をパクパクさせているクリルに、


「味もなかなかよ♪」

そう言ってクリルに自分が飲んで味の良さを証明させた後にそれを差し出す。


「うゅ!じゃぁ私も飲むさね」

クリルは時雨からビンを受け取ろうとする……とそこへ、


「待たらっしゃ~い!!!!」

と突然、魔王まおうウランがやってきて時雨の握っているビンをかすめ取った。


「マダム、疲れてるっていうんなら常に羽を羽ばたかせ、浮遊している俺のほうがLvは数段上じゃん!てな訳で飲ませてもらうってら~!」

ウランはそう言うと、腰(?)にてをあてドリンクを飲み始める。


「そう♪ウランちゃんも疲れてたのね♪まだまだあるわよ、特製ニンニクドリンク♪」

時雨はエプロンの裏に取り付けられたドリンクを大量に二人に見せる。


「あうゅ!?ニンニクさね!?」


「あぼばぼゃあっがるぎゃぁぁあっぁぁあぁぁぁ!!!!!」

直後、ウランが口から泡をブクブク吹きながらぶっ倒れた。


「あら?どうしたのかしら♪」


「うっ…ウランはその~、なんというか……その……そうっ!ニンニクアレルギーさね!」

クリルはそう言うと慌てふためいた様子でウランの首根っこをつかんでクリルの部屋へ駆けていった。


「……アレルギーね~……大変ね♪」

時雨はニコニコしたまま店の掃除を始めた。

「ウラン大丈夫さね!?」

クリルはウランを掴んだまま自分の部屋へ入っていった。


「くぅぅぅ、あのドリンク不味過ぎら~!!もうちょっとで俺の舌が爆発するところだったぜ…」

クリルに掴まれたままウランは手足をばたつかせ文句を言う。


「そのニンニク嫌いは克服できないさね?」


「馬鹿言っちゃいけねえよ。俺はてめえみたいな化け物じゃないんだ。こんなもの克服できるか~!?」


「外見からするとウランの方がよっぽど化け物さね。ちなみに今晩はニンニクたっぷり餃子な予感がするさね~」

クリルは首を横に振るとウランを解放し、下の階へ降りて行った。


「何?…ニンニクが餃子(?)だと!?……ふん、まぁいいさ。俺には二つ~とっておきな秘密の食糧庫がある…」

ウランは一人ぶつぶつ独り言をつぶやくと目を光らせ、


「そうっ!仙人の部屋の机の中とクリルのポケットの中には何かしらの菓子が入ってあらぁぁ~!!」

ウランはまだ午前中にも関わらず、夕食確保のため、下の階へ降りて行った。


「おらクリル!まずはてめえからだぁぁ!そのポケットに忍ばせているカリカリ梅をよこしやがれぇぇ!!……んぉ!?」

ウランは階段から勢いよく降りていき、階段で止まっていたクリルにぶち当たってそのまま跳ね返される。

よろよろと頭を押さえながらウランが飛ぶと、クリルの目線の先には見覚えのある一人の大男がいた。


如月きさらぎの……ジーク?」


「何しに来たさね…?」

喫茶店のドアの前にいたのは身長2m超えで顔中に傷があり、黒スーツに身を包んだ大男、如月のジークである。

ジークはカウンター席に着くと、時雨にコーヒーを一杯注文する。


「今日はこいつを渡しに来た」

スーツの内ポケットからジークは一枚の手紙を取り出し、クリルに差し出す。


「手紙さね?宛先は……っ!?」


「嫌なら行かなくても構わないが?」

ジークはコーヒーを啜りながら適当な調子で答える。


「ふん、断ったところで殲滅部隊が来るのは目に見えてるさね。むしろこっちの方が好都合さね」

クリルは手紙をウランに投げ渡してジークの襟首を掴む。


「場所はどこさね?」


「ほう行く気か…。場所は三春みはる……滝桜たきざくらのある場所だ」

ジークはそう言い残すと代金をテーブルに置き、立ち去って行った。

時雨しぐれはテーブルを拭きながらクリルに


「クリルちゃんも大変ね♪やっぱり無理に前の組織から抜けたのはマズかったんじゃないのかしら?」


「元四季……それも四神の朱雀すざくまで登り詰めたにもかかわらず、文月ふみづき所属の神治さんと一緒に抜けた人間が何をいうさね」

クリルは目の前のニコニコ笑っている人間を見て、自嘲的に笑う。


「あら?私はそこまで大層な人間じゃないわ♪それにそんな大昔のことは忘れちゃった♪」

時雨はテーブルに置かれたおさつを拾い、クリルに手渡す。


「はい、交通費♪」


「おっと、これは助かったさね」

クリルはウランを連れ、喫茶店を出て行った。

しばらくすると厨房から仙人の父親、鬼灯ほずずき 神治しんじが現れ、時雨のもとにやってくる。


「本当に行かせて良かったのか?」


「かわいい子には旅をさせよ♪」


「いかにもお前らしいな」


「♪」

「流石に5月になると桜が散り始めているな」


「そのようですね」

大きく立派な桜の木があるその下で、二人組の男がいた。

一人はスラックスを着用しており、正方形のメガネ、中年で肥満の男だ。もう一人は黒のスーツで初老の男でさっきの男とは対照的でかなり痩せて長身である。


「…どうやら来たようです」

スーツを着た男は、こちらにやってくる人影を見て耳打ちする。


「これはこれは、四神、玄武げんぶにして親愛なる指導者様がこんなちっぽけな私に一体何の用さね?」

二人組の男の前に、ツカツカと足音をたて、クリルはやってきた。

クリルは嘲りを含めた笑みを見せているが、今までにないくらい目がつりあがっており、全体的にピリピリした感情を露わにしている。


「そう殺気立つな、今日は君たちを始末しに来たわけではないんだ」


「それを信じろと?今まで何人の部隊を送り込んだと思っているさね?」


「……」


「答えろっ!金正日キムジョンイル!!」

クリルは牙をむき出しにして叫ぶ。


「知ったことかそんなもの!!」


「なんだと?」

クリルは目をピクピクさせながら拳を軽く握る。


「今まで貴様を始末しに行かせた部隊の数などいちいち記憶などしていない。私は命令したことは成功するまで続行させるのだよ」


「……」


「貴様は黙って私の言うことを聞けばいいのだ!屑の妖力を奪わなければまともに戦えぬ雑魚はな!!」


仙人せんとを屑呼ばわりとは…いやはや恐れ入ったさね」

クリルは空間から魔法陣を出現させ、小太刀を二本取り出す。


「私はどう呼ばれようと構わない……でも貴方は今この場で私の主を侮辱したんだ……生きて帰れると思うなよ…ぶち殺すぞ豚野郎!」

クリルは小太刀を十字に構える。

一方、金正日キムジョンイルは余裕の表情を浮かべ、隣の男から受け取った桜餅を食べながら、


「貴様の主はそこの伯爵はくしゃくではなかったのか?」

と、馬鹿にしたような口調でウランを指さす。


「なんか違ったみたい」

クリルの隣にずっと静かに浮遊していたウランはクリルからすこし距離をとる。


「そうかそうか、しかしそんな事はどうでもいい。そちらがその気ならこちらもそうさせてもらう」

金正日は指をパチンならす。


「仕事だ。ヴァウムガルト・ヘル」

金正日がそう言うと、どこからともなく呪符が舞い降りてきて、一人の少女が出現する。

身長は少し低め、ピンクの髪色で黒のゴスロリを着ている。無季のヴァウムガルト・ヘルだ。

ヘルは自分の身長並みの大きさの銃、バレットM82をクリルに構える。

その時、周りにいた人々はその銃をみて、悲鳴を上げながら一目散にその場から逃げていく。

一方クリルは邪悪な笑みを浮かべ、ヘルに近づき小太刀を十字に構える。


対峙たいじするだけでいい、この場では撃つな……ん?聞いているのか?おい!」

金正日はヘルが何も反応しないことに苛立ちながら怒鳴る。しかし…


やかましい!」

ヘルは低い声で一喝する。


「これは私たちだけの闘争。口先だけの雑魚がいちいち口をはさむな、ぶっ殺されたいの?」

ヘルは金正日に向けて銃を放つ。銃弾は腕のすぐ横を通過していき、手に持っていた桜餅を吹き飛ばした。

弾丸は滝桜のすぐ目の前にある賽銭箱さいせんばこに命中しそれを粉々に粉砕する。

そして中に入っていた小銭がそこらじゅうに飛び散った。


「ふふふ、確かにそうさね。これは私たちだけの闘争さね、さぁ来なよ、遊んでやるさねゴス女。今日はその首を切断して体を串刺しにしてやる」


「ふふふ昨日のようにはいかないわよ貧乳ペタンコ


「いっ!?いかん!!よせっヘル!!!」

金正日は一生懸命ヘルをなだめる。しかし興奮し正気を失った化け物を前に言葉での説得は何の意味も成さない。

ヘルは引き金を引こうとし、クリルは小太刀を喉元へ突き刺そうと駆けだす。

しかし、


「……なんの真似さね、ウラン?」


「なぜ邪魔をするのかしら、影武者ドッペルゲンガー?」

両者がそれぞれの者の名前を忌々しそうに言う。

クリルはウランによって召喚された中世ヨーロッパの鎧を装備した騎士二人に押さえられ、ヘルは見えない何者かの『影』によって引き金にひっかけた指が折られている。

ヘルは金正日のすぐ横にいる初老の男性を睨んでいる。


「撃ってはならぬと言うことですので」

初老の男性はヘルに睨まれていても臆することなく淡々と語る。


「またぶっ倒れるまでドンパチやるか?言っておくが俺はお前を運べるほどの力はないぞ?」


「ふん」

クリルはウランを睨んだまま小太刀を空間の中へ納める。

ヘルも銃を袋の中へしまい、背中に担ぐ。


「興が冷めたわ。帰って寝る…」


「将軍様の護衛は?」

立ち去ろうとしているヘルに初老の男性は一応聞くだけは聞いてみる。


「別に私は護衛に来たわけじゃないし…仙人無しの貧乳ペタンコなら貴方でも十分よ」

ヘルは呪符を空中高くばら撒き、そして消えて行った。


「ふん、次は絶対串刺しさねゴス女……で貴方は一体私に何の用さね?」

クリルの目の前、そこで腰を抜かしている北の将軍こと金正日は、ずれた眼鏡を調整しながら起き上り、


「あ~そのことなんだが……話は近くのカフェでどうかな?」


「ふん、了解したさね」

クリルはウランの首を掴み、初老の男性の方へ放り投げる。


「おりよろしくさね」


「畏まりました」

初老の男性はウランを抱えたまま、頭を下げた。

クリルと金正日はカフェの方へ歩いて行った。



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