振りまわされる一般人?
誤字脱字、意味不明な表現ありますがご了承ください。
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ク「今回はこの話に出てくる『四季』の組織の大まかな全体像を掴んでもらうさね」
仙「全体像?」
ク「うぃ、まぁ一つの組織の中にどれくらいの部隊があるかって感じさね」
仙「ふむ」
ク「まあこれが大まかな感じさね」
四季部隊名
・睦月
・如月
・弥生
・卯月
・皐月
・水無月
・文月
・葉月
・長月
・神無月
・神在月
・霜月
・師走
ク「まぁざっとこんな感じさね。あと無季、青龍、朱雀、白虎、玄武なんてものも存在してるさね」
仙「なんか複雑だな……」
ク「ミニマム脳みそには全部の記憶は無理さね?」
仙「誰がミニマム脳みそだ!!……ただちょっと覚えるのが億劫だな…」
ク「それが貴方の人間性さね」
仙「?」
ク「ある偉人の言葉さね」
仙「ふむ……」
花の盛りが過ぎた4月下旬の午後、港にある工場に一組の少女と若い男がコンテナの前でなにやら話をしていた。
少女は緑の軍服を着ており、肩にはどこの国のものかわからない階級章、咽元に鉄十字を佩用している。四季・水無月のヴァルプルギス=ドーラだ。
「うん?2個小隊分の火器を夕凪に移送せよと?」
そう話す男はドーラとは違う白の軍服を着て白手袋をしており、オールバックですこし強面な顔つきの男性だ。
「できれば今すぐにでも持っていってほしいかな。てかあと30分8秒以内に届けてもらわないと私の頭が吹っ飛ばされるかな……ヘルに…」
ドーラは火器が満載に積まれているであろうコンテナを軽く蹴りながら、ポケットから懐中時計を取り出し、時間を確認しながら苦笑いしていた。
「……ちょいとばかし急すぎやしないか?ドーラさんよ……」
男は腕を組み「う~ん」と唸り声を上げる。
ドーラは男の前で両手を合わせて懇願する。
「お願いかな!急いで欲しいかな!!私は今からドラマの再放送見ないといけないかな!!!」
「………………仕方ない、了解した…」
男は腕を組みながら、しぶしぶ頷いた。
「さっすが両舷直の親玉。みんなの頼れる親分かな~」
「……念のため言っておくがあんたがこの隊の長だぞ…OK?」
「ja!!心得てるかな兄貴!」
ドーラはタバコを銜えた男にライターをかざす。
「…そうかい、まぁ任せておけ、すぐに届けるさ」
「今夜は私の奢りかな…」
「うんと良い酒を用意しろよ?」
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「お!あったさね!カリカリ梅☆」
仮面のような眼帯に銀髪、黒をベースとしたフリルの半袖、ももの付け根まで見えそうなショートパンツにサイハイトストッキングの少女は、駄菓子屋の中で声を弾ませながら商品を手に取った。
喫茶鬼灯の従業員兼、鬼灯 仙人のボディガード、五月雨 クリルだ。
「お前、それ本当に好きだよな……」
少し翠がかった髪、瞳の色が左右で微妙に違うが普通な高校生、鬼灯 仙人は、プラスチックの小さなカゴに、梅のお菓子が大量に詰め込まれていてもなお、両腕で梅のお菓子を抱えている少女にドン引きしていた。
「え~と~…全部で3,780円だよ」
商品を一個一個数えながら値段を言ったのは、この駄菓子屋を統轄、支配する人物。通称『駄菓子屋のおばちゃん』だ。
推定体重は優に80kgを越えているであろう見事な体格、パンチパーマで鼻のすぐ右上にはとても大きく立体的なホクロ。なんだかとても神々しいオーラを感じる。
「まったく、仕入れて二日で売り切れだよ。まいったねこりゃ」
なんだか妙に神々しいオーラを放っているおばちゃんはビニール袋の中にお菓子を詰め込みながら、クリルにオマケのビンに入った牛乳を差し出した。
「うゅ?消費者に独占禁止法は適用されるさね?」
クリルはケロッとした表情で受け取った牛乳を飲みだす。
「あっはっは、適用はされないさ」
おばちゃんは笑いながら空になった空の商品棚に別の商品を陳列し始める。
「んっんっんっ……ぷは~」
クリルは腰に手をあて、一気に牛乳を飲み干した。
クリルは物足りなさそうな顔をしつつも、空になったビンを置きそっと置き、仙人を引っ張りそのまま駄菓子屋を後にした。
しばらく道中を二人で歩いていると不意にクリルは、梅のお菓子を齧りながら、
「そういえばさ仙人、この前の事なんだけどね」
「ん?この前の事?」
「うぃ、この前の神社での事さね」
「阿形…」
仙人は先日襲いかかってきた女性の顔を思い出し、苦虫を噛み潰したような顔になる。
「そう、あの狛犬は一体どっからウランの情報を得たのか気になって、いろいろと調べてみたさね」
「はい……?」
あの時阿形は逃亡したし、クリルはそれを追わずに帰った。
詳しく調べられる時間などほとんど無い。
(調べるったって、一体どうやって……)
「BLOOD」
クリルは仮面のような眼帯を怪しく反射させ、静かにつぶやいた。
「血液…?」
「そう、血液さね。前にも言ったよね?血液は命の媒体。私はそれを採りこむ者さね……てか仙人昨日調べてたさね?吸血鬼について」
「っ!!」
「なぜ分かったんだ~!って顔してるさね。ふふふ、私を甘く見ない事さね」
驚愕している仙人をよそにクリルはにやにやしながら揉みあげのくせ毛をクルクルいじる。
「まっ、そんな事はどうでもいいさね……問題はそこじゃないさね」
「ん?」
仙人は珍しく言葉を選ぶクリルに怪訝そうな目で見つめる。
しばらく髪をいじっていたクリルはその動きを止め、
「どうやら四季の組織は今、内部分裂起こしちゃってるみたいさね」
「内部分裂?」
「うぃ、派閥争いが行き過ぎた感じさね。血液から得た情報では、一部の四季の連中がもう一つの組織と密かに密約してたみたいさね」
「ん?もう一つの組織?って事は他にも似たような組織が存在していたのか?」
「その通りさね。もう一つの組織が本来管轄外の区域まで幅を利かせてこっちにやって来ている…なんだか厄介な事になりそうさね」
クリルは空をしばらく見つめると、梅のお菓子が入った袋を仙人に全部押し付け、小太刀を一本出現させる。
「仙人……話の途中だけど、厄介な事が早くも起こったさね」
クリルは突如、空に向かって小太刀を一本投げる。
放たれた小太刀は空中で見えない何かに突き刺さり、そこから空中に歪みが生じた。
ピキピキと歪みから破片のようなものが落ちていき、その空間の中から3機の漆黒で二枚羽のヘリが出現した。
「ヘリ?」
「チヌークって機種さね。人員輸送に使われてる軍用ヘリさね……ん!?」
上空を見上げていると、ヘリから一つの黒い塊が仙人達に向かって落ちてきた。
「仙人!逃げるさね!!」
クリルはそう叫ぶと魔方陣を出現させ、中から大量の小太刀を取り出し、上空に放つ。
よく見ると、黒い塊は人間だった。上空からパラシュートも何もつけずに人間が降ってきたのだ。
クリルは小太刀を片手で放ちつつ、仙人の手首をつかみ、逃げようとする。
「ッチィィ!!!」
クリルは逃げようとするが、上空から弾丸の雨が襲い、行く手を遮られた。
逃げ道を失い、立ち止まっている間にも上空からは敵が迫っており、クリルは焦燥感にかられる。
遂に、仙人達のすぐ背後にバコッ!とコンクリートを砕く音とともにそこらじゅうに破片をまき散らしながら、空から降ってきた人間が着地した。
普通の人間なら言うまでもなく体がぐちゃぐちゃになるだろう。しかし、空から降ってきたのは『普通』ではない。
「うわ~、我ながら無茶したものね~。まっ、修理は他にまかせればいいか~」
土埃が晴れ、そこから現れたのは黒のゴスロリを着て、口に棒付きのキャンディーを銜えた少女。
無季のヴァウムガルト・ヘルだ。
ヘルはマズルブレーキが外された対物ライフル。バレットM82を肩に担ぎ、仙人に楽しそうな口調で話しかける。
「やっほ~仙人久しぶり。そしてやっと見つけたわ~。はじめまして五月雨 クリルちゃん。それとも鉄の処女って言われた方が好み?」
「っ!!」
仙人は口元をピクピクと震わせながら、後ずさりする。
「別にどう呼ぼうが好きにしろさね。あと初めましてって事は無いと思うさね」
「あら?どこかで会ったかしら?」
「ふん」
クリルは首をかしげて考えているヘルの首めがけて、小太刀を横薙ぎに払った。
「ッ!?」
「ちょっと~。不意打ちは無いんじゃないの~」
クリルの薙ぎ払った小太刀は空を切り、ついでにヘルも一瞬のうちにクリルの背後にまわっていた。
ヘルは仙人の髪をつかみ、鳩尾にひざ蹴りをあてる。
「ッぐ!」
仙人はその一撃で気を失い、地面へ崩れ落ちる。
「このっ!」
クリルはヘルめがけて小太刀を突き立てるが、ヘルは仙人を抱えたままジャンプし、近くの民家の屋根の上に飛び移った。
「返して欲しかったらちゃんと来てね?」
ヘルはクリルにバレットの一撃を放ち、走り去って行った。
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「……で、一体これはどういう状況ですか……?」
「ん?見ての通り、貴方は私に誘拐されちゃったのよ。身代金とか何も要求してないけど」
「おおぅ…」
仙人はヘルに抱えられたまま、近くの廃工場まで連れてこられた。
仙人は全身ギチギチに縄や手錠で拘束され、その上なぜかヘルに抱きつかれている。
「俺が誘拐されて拘束されているのは分かった……でも抱きつく必要なくね?」
「貴方は私のお気に入りなのよ~ふふ」
ヘルは拘束されたままの仙人に更に強く抱きついた。
「おおぅ…」
仙人は辺りを見ると、70近い数の武装した僵尸がうろうろしていた。
「ねぇ見てあの僵尸達。動きが凄く滑らかじゃない?」
「そう言われると…」
仙人はトリガーに指をかけ、滑らかに歩く僵尸をまじまじと見る。
「燐もなかなかやるわね~。中々できるものじゃないわよ?」
「まぁ召喚に馬鹿見たく時間がかかるがの」
「げっ!?生きてたのかよ」
仙人は青龍刀を携えた女性、夕凪 燐を見て、露骨に嫌そうな顔を作る。
「おう、生きておったわ!ヘルがいなければ今その場で首を叩き斬ってやるところじゃったが…」
「燐!私は許さないわよ」
「…はいはい了解じゃ。頭吹き飛ばされるのは御免じゃからな~」
「ちょっ!?私はそれだけで吹き飛ばしたりしないわよ~!」
ヘルは空を眺め、目を細める燐にたいして思い切り叫ぶ。
「……何よその目は?」
ヘルは燐から仙人へと、攻撃目標を変えた。
「いえ、なんでも…」
仙人は目線をなるべく合わせないように顔を横へそらす。
「そう……ならいいんだけど~?」
ヘルは仙人の頭をつかみ無理やり目を合わせる。
「ん!……ヘルよ。そろそろじゃ」
「そう。なら準備して」
ヘルは仙人の頭をつかむのを止め、呪符を取り出し、それを空中にばら撒いた。
地面に呪符が付くと、それは溶けるように消えていった。
「了解。総員配置につけ!!」
燐がそう叫ぶと僵尸達は一斉に燐の左右に3列ずつ整列し、前列の僵尸はライオットシールドとVZ61(スコーピオン)、次いでモスバーグ、最後列にミニミ機関銃と後ろになるほど火器が凶悪になっていく。
「狙撃手の配置も完了しておる」
「なかなかの手際ね。丁度来たみたいだし」
ヘルが向くその先からはクリルが歩いてきた。少女の横には一匹のフクロウ?も飛んでやってきている。
「ねえ仙人、見てなさい。今貴方が契約した妖怪の強さを。そして痛感しなさい。貴方に今どれほど価値があるのかを」
「俺の……価値?」
「そう、貴方の価値……とその前にあの子の実力を測らなきゃ」
ヘルは仙人に抱きついたまま、棒付きのキャンディを取り出し、それを口に銜えた。