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ひょんな出会い

この小説は誤字、脱字、意味不明な表現が多数あります。

ご了承ください。

 さくらが咲き誇る4月中旬、ジュースを大量にもった少年が歩いていた。


「あいつら……これはひどすぎるだろ……」

この少年の名前は鬼灯ほおずき 仙人せんと、少し翠がかった髪で瞳の色が左右で微妙に違うのを除けば、これといって特徴とくちょうのない高校生こうこうせいだ。なぜ仙人が大量のジュースを持って歩いてるかというと理由は簡単で放課後、仙人がジュースを買うために購買横の隅にある自動販売機へ向かったところ、全ての自動販売機に「故障中」の紙が張り付けられていたため、あきらめて帰ろうとした矢先、同じ目的のために集まってきた同級生らに「ジャンケンで負けた者が皆のジュースを近くのコンビニまで買いにいってくる」というありきたりな展開になり、それに巻き込まれた仙人が見事グー9人、チョキ1人といった清々しい結果を残しコンビニまで買い出しに行かされたという次第である。

コンビニから学校に戻ってくるなり


「おい随分遅かったじゃないか。たかが10人分のジュース運ぶのに一体いつまで待たせてんだ?」


そうにやにやしながら言ってくるのは同じクラスの佐藤さとう 陽平ようへい、バイクに轢かれながらかすり傷一つ負わず逆にバイクの運転手を病院まで送りとどけたというタフな体つきの持ち主だ。


「全員で1.5Lのジュース2本ずつ買わされりゃ遅くもなるだろ!もう買ったから俺は帰らせてもらうぞ!」


「まぁそんな怒りなさんな、不幸の後には幸せがやってくるって相場は決まってんだろ?なんかあるさ」


「そんな相場があるのか?」と仙人は内心思いながら学校を後にした。



 家に帰る途中、「このまま帰ってしまうと、後々悲しくなるだけだ。少し遠回りして帰ろう」

とお財布が妙にスッキリして清々しいんだが、イライラした気分を晴らすべくいつもとは違う道を歩き出した。

 ここの道はひと気がなく、とても静かだ。聞こえるのは鳥の鳴き声くらいだ。

仙人は、


「ここは本当に静かだ、もう少しここで気持ちを落ち着かせようか……できればこのまま忘れよう……」

などと軽い現実逃避を試みたその時


「てめぇぇぇいつまで寝てんだ!とっとと起きやがれ!でないと俺が困るんだってば~!」

と何やらさっきまでの静寂をブチ壊すとても大きな声が聞こえてきた。


「……おぃおぃ、こんな時にまさかの花見客ですか?花見するならほかにいい場所どこにでもあるだろ、なぜ俺が静かにしてもらいたいって時に盛り上がってくれてんの?」

さっきまで静まりつつあった怒りの感情が再びよみがえってきた。そんな事お構いなしに


「てめぇぇぇぇぇ!!!!!!!」

などと静寂をブチ壊す本当に迷惑な声が、あたりに響く。周りの鳥たちが一斉に逃げ出すほどに……

我慢の限界に達した仙人は


「さっきからそこ五月蠅うるさいんだよ!少しは声のボリューム下げろってんだ!」

と声のする方向へ速足で向かいそう叫んだ。

すると…………


「あれ?誰もいない……声はたしかに、ここからしたんだけどな~…」

仙人は軽く頭を掻きながら辺りを見回した。しかしここには仙人以外誰もいない。


「遂には幻聴げんちょうまで聴こえるほどおかしくなっちゃった!?」

仙人は自分がおかしくなったという不安にあおられ、頭を抱えグルグル回りながら悩む。その時ふと見上げた桜の木の枝に何かが引っ掛かってた。


「ん?」


仙人はそれが何かなのかを見た。見てしまった。

引っ掛かっていたのは少女だった。

春に着るにはまだ早そうな、黒をベースとしたフリルの半袖、太股の付け根まで見えそうな短いショートパンツにサイハイトストッキングという少女が着るにしては、やけにアダルトな服装だった。


「えっ!?」


仙人はおどろき、硬直した。数秒の沈黙が生まれ、さらに数秒たち


「いや!ないない!この子があんな渋い声を発声するとは考えられないし、なによりこんな所に引っ掛かってるなんて絶対ない!これは俺の中の幻想が見えてるんだ!そうに違いない、帰ってすぐ寝よう!疲れてるんだ……」


このまま何も見なかった事にして帰ろう……そう仙人は決心してすぐに帰ろうとした……。

そう思ったのだが…


「ん~見たところ人間のようだが……」

となにやら渋い声が聞こえてくる。

仙人は首を180度回転させた。しかし途中、首を痛め体も向ける。そこには、「く」の字になって桜の木の枝に引っかかってる少女が一人


「やっぱり夢でも幻想でもなかった……いや!それよりも今の声!?」

仙人は首の位置を調整させながら少女に近寄った。

少女は銀髪で、左眼にはなぜか仮面のような眼帯をしている。華奢な体つきで、背は小さい。

意識がなく話すどころか、生きているかも怪しい。


「現実逃避はやめよう……おい、お前か?さっきから大きな声で叫ぶのは?というか生きてるのか?」

当然返事はかえってこない…。


「とりあえずこれはおろした方がいいのかな…?」

仙人は少女をおろすためその木に登り少女を抱えようとした。

しかしその少女が引っ掛かっている枝に足を掛けた瞬間、その枝が折れた。


「あ………」

仙人は反射的に枝から枝へ飛び移り難を逃れたのだが少女は木から地面へ一直線に落ちた。

少女は頭を地面に打ち付けた。


「イっタァァァァァァ☆×○※」

断末魔のような叫びが響いた。


「やっちまった…これはヤバい……」

仙人は罪悪感にさいなまされながら恐る恐る少女に近寄った。


「あぅ…とてつもなく痛いさね……」

さっきまで意識がなかった少女は涙目になりながら頭を両手で押さえていた。


「あの~………大丈夫ですか?」

仙人はかなり小さな声でそう言った。


「これで大丈夫に見えると言うなら貴方を火星まで吹っ飛ばしてやるさね!」

少女は痛みと怒りに震えながらそう答えた。


「あはは…は…ん?」

仙人はある事に気がついた。それは少女が変わった眼帯をしてるからとかそんな事ではない。


さっきまで聞いていた声と全然違う。


仙人は辺りを見回した。


「誰もいない…」

「私がいるさね」

「いやっ!そうじゃなくて…」


「もしかして眼中にない?私の事は見えていない妖精さん扱い?…出会った直後でこんなに殺意がわいたのは貴方が初めてさね」


「だからそうじゃなくて……」


「そんなに私の存在を認めたくないさね?本当にひどい人さね、人権も何もあったもんじゃないさね!」

少女は騒ぎ出す。それをしずめるために仙人は静かに深呼吸し、


「人の話を聴け!!!」

仙人はそう一喝した。


「あぅ!」

少女はようやく静かになった。


(あのまま放っておいた方が良かったかな……) 

そんな事を考えながら仙人は少女が木に引っ掛かっていた間、別の違う誰かの声を聞いていたと話し始めた。すると少女は


「うゅ?変な声?それってウランのことさね?」


「ウラン?それって鉄鉱石の?」


「話の流れからして普通、名前でしょ!貴方大丈夫さね?」

半分呆れられながら少女はそう返した。


「名前……あぁ、あんたのか。」

「一体どういう思考回路してたらそんな答えがでるさね!?話巻き戻してもっかい考えろさね!」


「巻き戻してもウランって誰だか分からねぇ……」


「ウランってのは魔王さね。貴方の横にいるさね」


「はぁ!?魔王?お前こそさっき木から落ちたショックで大丈夫じゃなくなって……」

と仙人は中二妄想病な少女の言論を確認するために左右振り向き、あたりを見渡す。


「あっ上さね」

「上かよ…」

仙人は呆れながら上を向いた。しかし魔王らしき者は当然いない。見えるものと言えば青い空と白い雲、満開に咲き誇る桜とその枝にいるフクロウくらいだ。

 ・

 ・

 ・

「ん?フクロウ?」

仙人は不自然な点に気付き少女に確認をとった。


「おい、あのフクロウが魔王だって!?」


「フクロウではないけど今指さしてるのは確実に魔王さね」


「……もう一度聞く、あれが魔王だと?」


「何度でも言うけどあれが魔王さね」


そんな事を言い合ってるうちにフクロウ(?)は木から降りてきて


「誰がフクロウだって?」


「喋った!?フクロウが喋った!?」


「だからフクロウじゃなくて魔王さね、ウランってのはこれのことさね」


「おいクリル、これって何だよ…俺…魔王だよ?扱い酷くね?」


「うゅ?」


「…まぁお前がそうなのは今に始まった事じゃねぇか…」

魔王?は少し間を置いて


「おい小僧、クリルの言ったように俺はフクロウなんかじゃねえ、魔王だ!よく覚えておけ。それと本当に俺の事に気付かなかったのか?」

そう言いながら魔王は仙人に近寄り、蹴りつけ始める。

仙人は自分の頬をつねり、ちょっかいを出してくるフクロウを殴り飛ばしてこれが夢や幻想ではないことを知った。


「夢じゃない!」


「夢でいて欲しかったさね?」

すかさず少女は答えた。

仙人は少女に


「本当にこのフクロウが魔王だって?」


「本当さね。何度でも言うと言ったけど、あと何回同じ質問繰り返すつもりさね?」


「…」

黙り込む仙人に


「あ~ちょっと俺の事なに殴り飛ばしたあげく無視してくれちゃってるのかな~。こんな常識から外れた人間あってはならないよ!?」


「常識から一番外れてんのはお前だろうが!」

仙人は叫んだ。


「じゃぁお前が魔王であるという証拠を見せろ!そうすれば信じてやる」

仙人は自称魔王に指をさしながら質問した。


「何?証拠?ふ~む…俺単体じゃ何も力を見せつけられないんだが…」


「それみろ、お前が魔王なんて証拠どこにもないじゃないか。嘘つくならもっと知識を蓄えろ。人の言葉を覚えた程度で人間は騙せないぞフクロウ!」


「てめぇぇぇぇぇ!!!!上等だ!おいクリル!このグリンピース野郎に灸を添えてやれ!それで俺が魔王だということを見せつけてやれ!」


「無理言うなさね!恐怖政治きょうふせいじはもう行わないはずじゃないさね?それに妖力だって癒えてないし…」

少女はそういってしゃがみ込んだ。


「くぬぬ、もうそんなに妖力使ってたのかよ…」


「あの時はそうでもしないと私の首と胴体サヨナラバイバイしてたさね」


「まぁこんな時にそうなるのは俺としても困るはな…」


「そういう事だ小僧、運が良かったな、串刺しにならなくて」


「どういう事だよ?」


「それより、さっきから妖力だとか本当に…お前は何者なんだ?」


「うゅ?」


「いや、だからお前は何者なの?」


「だからこれは魔王さね。魔王ウ・ラ・ン。いい加減覚えろさね!」


「このフクロウはもうどうでもいい、お前が何者かを俺は聞いている」


「私?私は~……」

少女は右手で髪をくるくるいじり始めた。





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