表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放された宮廷調香師は、辺境騎士団で花開く  作者: 水無月ヨルコ
第3章:黒獅子騎士団

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/26

【3-7】10年ぶりの再会


 「カイル……」


 私は、目の前の男を見つめた。


 赤い髪。緑の瞳。あの頃の面影が、確かに残っている。


 でも、あの小さな少年が——こんなに立派な騎士になっていたなんて。


「十年だ。十年も探してた」


 カイルの声は、震えていた。


「お前が宮廷に行ったって聞いて、会いに行こうとしたんだ。でも、俺みたいな平民は、宮廷には入れなくて——」


「カイル……」


「そしたら、追放されたって噂を聞いた。それからずっと、お前がどこにいるか探してて——」


 カイルが、私の両肩を掴んだ。


 その手が、熱い。


「なんで……なんでここにいるんだ? どうやってここまで……」


「私は——」


 言葉が、詰まった。


 追放されて。行く場所がなくて。ギルバートに辺境を勧められて。流れ着くように、ここまで来て——


「……長い話になる」


 私は、小さく笑った。


「でも、今は元気だよ。ここで、調香師として雇ってもらう予定なの」


「調香師……そうか、お前、調香が得意だったもんな」


 カイルの顔が、ようやく緩んだ。


「覚えてる。子供の頃、お前が作ってくれた花の香り袋。俺、ずっと持ってたんだ」


「え……?」


「捨てられなくてな。お前を思い出すから」


 カイルは、照れたように頭を掻いた。


「……って、こんなこと言って、気持ち悪いよな。十年も会ってなかったのに」


「ううん」


 私は首を振った。


「嬉しい。覚えててくれて」


 沈黙が落ちた。


 夕暮れの訓練場。騎士たちの声が、遠くから聞こえる。


「リーネ」


 カイルが、真剣な目で私を見た。


「俺は——あの時、お前を連れ出せなかった。伯爵家で虐められてるお前を、助けられなかった」


「カイル……」


「ずっと後悔してた。俺がもっと強ければ、お前を守れたのにって」


 彼の声には、深い痛みが滲んでいた。


「でも、今は違う。俺は騎士になった。お前を守れるだけの力がある」


 カイルは、私の手を取った。


「だから——もう二度と、お前を一人にしない」


 その言葉が——胸に、熱く響いた。


「……ありがとう、カイル」


 私は、彼の手を握り返した。


「でも、私はもう大丈夫。ここで——自分の力で、生きていくから」


 カイルは、少し寂しそうに笑った。


「……相変わらず、強情だな」


「そうかな」


「ああ。昔から、お前はそうだった」


 二人で、小さく笑い合った。


 十年ぶりの再会。でも、不思議と——すぐに打ち解けられた。


 まるで、昨日まで一緒にいたかのように。



     ◇◇◇



 その様子を——訓練場の隅から、一人の男が見ていた。


 ヴァルター・ローゼンハイン。


 彼は、リーネとカイルが手を取り合う姿を、黙って見つめていた。


 その銀灰色の瞳には——どこか、複雑な光が宿っていた。


「……幼なじみ、か」


 小さく呟いて、ヴァルターは踵を返した。


 胸の奥で——何かがざわついていた。


 それが何なのか、彼自身にもわからなかった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ