表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/36

6.「すれ違うふたりと“普通”な日常」

翌朝。帯広。


白石彩乃は、もはや日課となりつつある“味の負担”に備えて、意識的に呼吸を整えていた。


「……今日の社食が怖い……」


会社の玄関をくぐった瞬間、風に乗って漂ってきたパンの匂いがもうヤバい。近所のパン屋の焼きたてあんパンは毎朝の風物詩で、彩乃にとっては半ば拷問でもある。


教室に入れば、周囲の会話が耳に入り、


「ねえ、昨日のツイーチョ見た?」

「また#味覚地獄タグ付けてたよ~、彩乃ちゃん」


「うるせえ、タグ使うな」


机に突っ伏していた彩乃は、心の中でそっと涙を流した。




呉。


藤堂隼人は、その日も“ちょっと便利だけど地味すぎる”スキルを持て余していた。


「振動の精度、確かに上がってきてるんだけどさ……使い道が……」


会社の研修中、ノートの隅で鉛筆を微振動させながら、ノートが自動で文字を書き取る装置の試作に取り組んでいた。


周囲は当然、彼のノートを見てドン引きしている。


「藤堂……おまえ、ノート、息してないぞ……」


「気にするな。未来の文房具ってやつだ」


妙にカッコつけたが、ペンが突如暴走し、隣の女同僚の教科書に『カレー』と震え書いた瞬間、人生終わったかと思った。


「……ッ、ち、ちが……これは、AIが勝手に……!」


「は?」


笑いとざわめきの中、隼人はノートをそっと閉じた。


その日の夜。


Tweecho。


@ayano_815「あんパンの香りで脳がとろける。これが幸福か、狂気か」


@hayato_kuromaru「研修中に“カレー”って書いたら人生詰みかけた。俺のスキル、たまに反乱起こす」


@lizard_kimo「転生者あるあるやな」#転生スキル難民




ふたりのやりとりに混ざる、謎のアカウント。


観測室では、ヒトリが身を乗り出していた。


「誰だこいつ……? 予定にない……観測外部の……?」


主任が即座に操作し、該当アカウントのログを抽出。


「……“旧記録群由来”。……まさか、野良転生者……?」


観測ログが、新たな展開の匂いを放ち始めていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ