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2.藤堂隼人の場合(広島・呉市)
「……どこだ、ここ」
藤堂隼人は、暗闇の中で呟いた。だが正確には、そこは暗くもなく明るくもなかった。ただ、色がなかった。自分の存在だけが、宙に浮いているような、不思議な感覚。
「俺、たしか……トラックと……?」
思い出す。朝の通勤。いつものバイク。青信号で横断したはずだった交差点。だが、右折車が急に飛び込んできて——
「……マジかよ」
【転生プロセス:藤堂隼人/死亡確認完了】
「なんだよ、ゲームみたいなこと言いやがって……」
【基本スキル】
・翻訳
・無限収納
・鑑定
【ユニークスキル】
・超微振動操作(対象物の表面分子を微細に振動させる能力)
「……地味すぎないか? それ」
戸惑う。だが文句を言っても、戻れる気はしなかった。妙に冷静な自分が、どこか他人のようにすら感じる。
【転生開始:地域・呉市/元の時間軸継続/記憶保持/身元・社会関係再構築済】
「どういうことだよ、時間軸継続って……」
呟いた直後、意識が遠のく。全身を光が包み、思考が音を立てて崩れていく。