表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/36

1.白石彩乃の場合(北海道・帯広市)

目が覚めると、世界は白く染まっていた。


……いや、最初から白かったわけではない。そこは無音の空間だった。壁も床も天井もない。まるでホワイトアウトした吹雪の中にひとり放り出されたような、不気味で、どこか静謐な場所。


「……え?」


声は、自分のものだった。感覚はある。体も、ある。けれど、目の前に何もない。ただ、足元には微かに光る文字が浮いていた。


【転生プロセス:認証完了】


「転生……? プロセス……?」


彩乃は、二十九歳。帯広市で事務職として働くごく普通の女性だった。彼氏なし、家族との関係も良好だが淡白、職場の人間関係も特にトラブルはないが特別親しい人もいない。趣味は料理とSNSでの飯テロ投稿。人生は、平凡だった。


だからこそ、その日も平凡に始まり、平凡に終わるはずだった。


だが——


「……あのトラック、まさか……」


脳裏に、最後の記憶がよみがえる。通勤途中、交差点の横断歩道でスマホを見ながら立ち止まっていた時、不意に感じた振動、耳元で聞こえた叫び声、そして強烈な衝撃。地面に叩きつけられる感覚。


「……え、ちょっと待って。私、死んだ……?」


【確認:生前終了】【死因:交通事故】【同時転生者数:1名】


【支給スキル:基本スキル×3、ユニークスキル×1】


「え、は? なにそれ? ……ゲームか何か?」


【基本スキル】

・翻訳(全言語対応)

・無限収納(制限なし)

・鑑定(対象の概要を読み取る)


【ユニークスキル】

・味覚強化(味覚精度1万倍/毒物検知・栄養判別機能付)


「味覚……?」


思わず口に出してしまう。味覚? それってつまり、美味しいものが美味しく感じられるってこと?


「いや、嬉しいけど、どう使うのこれ?」


不安がこみ上げてくる。けれどその直後、真っ白な世界がぐらりと傾き、彼女の意識は急激に収束していった。


【転生開始:地域・帯広市/元の時間軸継続/記憶保持/身元・社会関係再構築済】


「ちょ、待っ——」


叫ぶ前に、世界が光に包まれた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ