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鎮魂家の仕事

 「亡霊が見える???」


 学には瑠璃の言っていることがさっぱり分からなかった。

 

 「ええ。そうよ。私は特殊体質で亡霊を見ることができるの」


 「それと鎮魂って何の関係があるんですか?」


 「んー、簡単に言うと、何らかの影響で「悪」に染まってしまった亡霊である悪霊を成仏させることなの。悪霊は生きている人たちに不幸をまき散らす存在だからね。時には健常な人に憑依して悪さをすることだってあるの。だから、私が息の根を止めてあげるってこと」

 

 シンプルに「息の根を止めてあげる」っていう表現がサイコパス感溢れていて怖いんですけど。


 「はあ。そうなんですね。じゃあ、どんな時に悪霊が生まれるんですか?」


 「大体は()()()()()()をした人です。具体的に例を挙げるなら、虐待で両親に対する憎悪を持ったまま殺されてしまった子とか、愛していた人に裏切られた末、自殺に走ってしまった人など様々です」


 「じゃあ、その悪霊たちを鎮めるためには一体どういうことをするんですか?なんというか、勝手な偏見を言うと、白い紙のついた棒を振り回しているようなイメージなんですが」


 それを聞いた瞬間、瑠璃は指をチカチカと左右に揺らした。


 「もーう、それは神社とかでやる儀式でしょ?実際に悪霊退散する時はこれを使うのよ」


 瑠璃は服の中から小さなナイフのような刃物を取り出した。

 

 「それ、何ですか?」


 「これは、悪霊を斬り倒すことができる唯一の武器よ。今はカバーをつけているけどね、この刃は引き抜くと真っ黒になっている仕様になっていて、悪霊の急所を突くとそこから悪霊の体が分解されていくの。まあ、これ以外にも何個か悪霊討伐ようの道具は持っているのだけれど、普段から愛用しているのはこれかな」


 「へえー。てっきり特別な装置でも使うのかと思いましたよ」


 「そんなことないわよ。私、機械音痴だし。そんな難しいことをするよりも物理攻撃よ!」


 見た目に反して恐ろしく脳筋だぞこの人。怒らせちゃいけないタイプだ。


 「それで、報酬はどのくらい頂けるのですか?」


 「まあ、あなたの活躍にもよるけど、基本悪霊一体倒すのに協力してくれれば一回につき30万ほど払いますわ。多少は変わるかもしれませんが。あ、あと今日契約してくれたら契約金の50万、今から出してあげることもできるのだけど」

 

 「そ、そんなに頂けるんですか?ぼ、僕、やります、鎮魂家のビジネスパートナーになります!」


 条件を聞いた途端、学は即答した。

 

 こんなにも待遇が厚いなんて思ってもいなかった。


 しかも、ここで契約すれば今からでも大金が懐に入ってくるのだ。


 「うふふ。いい返事ね。ただー、ビジネスパートナーをやっていただく上で条件があるわ」


 「条件?って」


 「それは私が指定したところに住み、私が命令したことには必ず従うことよ。まあ、当然だよね。こちらもあなたにそのお礼として大金を支払うのですから」

 

 言われればその通りだ。

 

 部下が上司に従うのは当然、しかも職を失った自分に救いの手を差し伸べてくれるのだから。


 「わ、分かりました。従います。たとえ火の中水の中ついていきます」


 その言葉を聞いた瑠璃は口角を挙げた。

 

 「いい返事ね。それじゃ頑張っていただきますよ。本日から」 


 そう言うと、瑠璃は着物の中から、札束を取り出してそれを学に渡した。

 

 「受け取りな。契約金の50万円よ」


 先程の優しかった口調とは異なり、低音のガチトーンだった。


 50万の束が自分のものになったことを改めて実感した。


 このお金を何に使おう、家族に何か買ってあげようか、それとも自分で大きなものでも買おうか。


 こんな想像をしているうちに、瑠璃は一人で河川敷から出ようとしていた。

 

 「家を紹介してあげる。ついてきて」


 そうして、後ろを向いて学がついてくるように促した。


 「は、はい!ついていきますよ!」


 学は瑠璃の背中のほうに吸い込まれるかのようにつけていった。


 学からは聞こえない位置で、瑠璃は独り言をつぶやいた。


 「ふふふ、今年の新人君はどこまで生き残れるかな。楽しみだ」

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