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公爵家の末っ子娘は嘲笑う  作者: たくみ
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2. 公爵家の末っ子娘誕生②

 オギャーオギャーと再び赤子の泣き叫ぶ声。エレナが優しくポンポンとお腹をたたくと泣き止む。


「お母様、お疲れ様でした。そして無事に出産されたことお祝い申し上げます。おめでとうございます」


 長女のエミリアの言葉に続いて次女のアンジェと三女のセイラもお祝いの言葉を述べる。


 出産してから初めて聞く労りの言葉とお祝いの言葉に美しい笑みを浮かべるエレナ。それを見て慌てておめでとうございますと言う男性陣。仕事のミスはほとんどしないのに、家に入れば気の利いたことも言えない。


 そんな男性陣に冷たい視線を向けたあと、母親に向き直るエミリア。


「可愛い……。私と同じ金の髪ということは女の子ですか?」


「ええそうよ。我が家はなぜか女の子は金の髪。男の子は銀の髪なのよねぇ」


 そう、カサバイン家の者たちは男性陣は銀色の髪の毛。女性陣は金色の髪の毛だった。きれいに洗われ魔法で乾かされた赤子には自分はカサバイン家の娘ですと主張するかのように金色の髪の毛がフッサフサにはえている。


「ところでお母様……いつまで私達に赤ちゃんと呼ばせるおつもりなの?」


 少し茶化した言い方をするのは次女のアンジェ。


「いや、その質問は父親の私にするべきでは……」


 父親の言葉をスルーし母親と産まれたばかりの赤子を囲みキャッキャと盛り上がる娘たち。娘たちからいろいろな案が出る中エレナは宣言した。


「この子の名前はアリスよ。アリス・カサバイン。理由はなんか響きが可愛いから!」


 アリス~アリスちゃ~ん……と呼び出す面々。特に反対するものはいないよう。そして、呼ばれた赤子ーーーアリスは薄っすらと一瞬目を開く。その瞳は父親譲りの、いや彼よりも澄んだ煌めくような紫色。


 それは、魔法を使う国でも桁外れの魔力量を持つ者の証。


 こうしてアリス・カサバインは公爵家の末っ子として生を受けた。




~~~~~



 アリスが生まれる1ヶ月前、公爵邸ではもう一人の赤子が産まれていた。


 オギャー、オギャーと明け方に産声が公爵邸に響き渡る。


「よく頑張ったな」


 そう言って産まれたばかりの赤子を腕に抱くのはロナルドだった。そして産褥の場にいるのは茶色の髪に可愛らしい顔をした女性。


「旦那様……私達の可愛い…大事なお子です」


「ああ、そうだな」


 ロナルドは腕の中の赤子を見る。母親譲りの茶色の髪の毛の女の子だ。その瞳は母親と同じく茶色だろうか……その瞳が開くのが待ち遠しい。


 愛おしげに赤子の小さい手を撫でながら、その母親に視線を向ける。


「この子の名前はリリアとしよう」


「可愛らしい名前をありがとうございます」


 嬉しそうに微笑む女性はロナルドの妾である。王家を除けば最高位である公爵たる妻を持ちながら、愛人を持つ。マジかと思われがちだが彼自身も大将軍の地位を持つやり手の軍人。寄ってくる女性は数しれず。


 一夫多妻制であるこの国で彼の妻はエレナ一人のみ。彼の地位からしたらもっといてもおかしくはない。こちらのお妾さんも妻にする気はない。エレナと喧嘩してしまい夜会でやけ酒を飲んでいたところに声をかけられ思わず手を出してしまった女性。


 この国は愛人の存在も忌避されるものではない。むしろ成功者の証とでも思われている。そもそも金がなければ多数の着飾る女性を養うことはできない。


 エレナは当然激怒した。しかし年若いマリアと出会ったのは上の子達が成人した後。愛人の子が跡取りに~などとごちゃごちゃする時期ではなかった。そしてエレナが懐妊したときであった為殺生な真似は……と二人は助かった。更に公爵邸に足を踏み入れる許可まで得ることができた。


 ロナルドは嬉しそうにしている彼女に言い聞かせるように言葉を紡ぐ。


「わかっているな?」


「勘違いはしません。わかっております」


 そういう彼女の瞳には怪しい光が宿っている。それに気づかぬロナルドではないが目を逸らす。野心があることは悪くはない。行き過ぎた叶わぬ夢を見て強行せねば……だが。



 こうしてアリスと同じ歳の異母姉リリアは誕生した。

 




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