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知恵のある熊と火の鳥とペガサス。

永遠の命を持つという不死鳥「火の鳥」と天馬ペガサス。この天上世界の生き物達がとある星の動物園に降り立ちました。そして一匹の寝ている熊に目をつけます。


「あれが知恵のある熊か。アイツにするコケコッコーッ」


「うむ。あの寝てる姿が憎たらしいヒヒーン」


二匹が力を使うと、知恵のある熊は真っ白な異空間にテレポート。そして異空間内に浮いてる小さな牢屋に閉じ込められてしまいました。


「そこの冬眠熊。貴方は重い重〜い罪を犯しました。((100000)!)!年の間、その檻の中で暮らしなさいコケコッコー」


「ちなみにこの異空間内の檻から出るまでは君は死ねないからなヒヒーン」


熊が必死に鉄格子を揺すっても微動だにしません。


「罪ってなんだガオ!?私は動物園で寝ていただけじゃないか!コラ鳥と馬!ここから出せ。出せ」


「たとえ自殺を試みても無駄ですコケッ。異空間に浮かぶ砂時計の輝く砂が落ちきるまで、貴方は不死なのだなコケコッコー」


「ワハハ。突然になんの冗談なんだガオッ。不死だなんて、ふざけるなガオーッ!・・・って熱っ。翼から火の粉が飛ばさないでガオ」


「すぐにやる事などなくなるだろう。さしあたって((100000)!)!を暗算でもしてるが良いぞ熊。知恵のあるお前ならそれだけで100億年ほど時間を潰せるだろうヒヒーン」


そう言い残して不死鳥と天馬は去ってしまいます。


「ちょっと待て!((100000)!)!年って全然ピンとこないガオ!100000×99999×・・・桁が多すぎて無理ガオッ!」


しかし熊の叫びは虚空に消えていきます。



「おーい火の鳥さん戻ってきて。ペガサスさんも私を元の場所に戻して!なんか知らないけど謝るからー」


「謝るからー」


「謝るからー・・・」


不死鳥と天馬は異空間から実世界へワープしていきました。


「本当に置いてけぼり。本当に私は不死なんだろうか。まさかね」


〜檻に閉じ込められて100年後〜


「そんな・・・。本来なら私の寿命は尽きているはず。では本当に宇宙年齢を遥かに超える時間をここで一匹で過ごすことになるのガオッ?」



想像するだけで身震いします。


「恐ろしい。とりあえず寝るガオ」


熊は床に力なくへたり込みます。そして、とめどなく溢れてくる涙を必死に拭い再び冬眠をはじめました。



〜((100000)!)!年後〜


異空間内に浮かぶ砂時計がついに砕け散りました。


異空間に浮かぶ牢獄を包む白い霧。それは徐々に集まり牢獄の中で熊の形になっていきます。


ーこの時が来たガオ。



知恵のある熊は懲役((100000)!)!年の刑を耐えきったのです。その間に人間であるニュートン、アインシュタイン、キュリー夫人を超える知性を獲得し、脳内シミュレーションだけで人間の持てる最高の知識を得たのです。


お陰で脳内活動を遅らせる術を開発し、1000兆年が1秒に感じられる内的世界をも作り出しています。さらに己の体を分解し気体化し、限りなく非生物化することにも成功していました。


もはや牢屋からの脱出も簡単なのですが、熊はそこが気に入ったのかあまり外に出ようとはしませんでした。


なんにしろ永遠の如し途方もない年月を経て、待ちに待った時が訪れたのです。


「待ちかねた、この瞬間(とき)を。とは言え今となってはこの牢獄にいるのも悪くないと思い始めているガオ。あと恒河沙年程度ならいても構わない」


今の熊は、もはや現人神の如き精神性を持つ熊なのです。


すると約束通り、再び異空間に不死鳥と天馬が現れます。


「おお。神の使い達よ。ついに解放の時ですね」


不死鳥は出し抜けに言いました。


「ゴメンゴメン。あの時は言い間違えてましたコケコッコー。期間は((100000)!)!じゃなくて(((100000)!)!)!年です」


「ガオ?」


「だから。まだめちゃくちゃ序盤なんだコケッ」


突然に異空間内に新たな砂時計が次々に現れます。


「ガオガオ?」


「エクスクラメーションマークが1つ足りなかったんだ。それじゃヨロシク、ヒヒーン!」


と言い残して去っていきましたとさ。こうなると神の精神性を持つ熊も激怒。


「そ、それでは序盤にもなってないガオ!そんなの言い間違えで済むかぁ!ぶっ殺してやるガオ」


虚空から天馬の声がします。


「じゃあ『!』をもう一つ追加でヒヒーン!」


「ひぃぃぃ〜!!!!!!!!!」


「コケッ!コケッ!。その顔が見たかったのです。((100000)!)!年待った甲斐があったコケコッコッ」



これが永遠の時を持て余す不死鳥と天馬のお遊び・・・。だが彼らは気づいません。途方もない年月の果てに、知恵のある熊が恐ろしいまでの自己変革を遂げていたことを。


「なんちゃってガオ♫」



異空間からワープし、天上世界に戻った二匹を待ち構えていたのは熊でした。


「な、何!?どうして熊が天上世界にいるんだコケコッコー!?」


「私に不死の肉体と果てしない時間を与えたことが仇になったガオ。この日のために極限まで進化させた私の力をみるガオ。ふぅ!」


熊が大きく息を吸って吐き出すと、火の鳥の身体を纏う炎を吹き消してしまいました。


「ひゃああっ」


「次は馬だガオッ!」


続いて天馬の額にある秘孔を突くと、翼が落ち、代わりに額からツノが生えてユニコーン になってしまいました。


「私の翼がもげた、これではただの馬だヒヒーン!」


「お前たちを追いかけてワープするぐらい容易いのだよガオ。そもそもあの檻を脱出して、動物園に戻ることなどいつでもできたのだガオ。でも動物園が閉園どころか宇宙が終焉していたから結局檻に戻っただけ。今の私は火の鳥と天馬への復讐心だけで檻の中で永遠の如し時間を生きてたガオ」


「むうう。我々はとんだモンスターベアーを育て上げてしまったようですコケッ」


「不死鳥さん。熊がまさか我らの力を超えてしまうとは驚きですな、ヒヒーン」


熊が念じると、ただの不死鳥になった鳥と、元天馬を四方と上空から現れた壁が囲み、閉じ込めてしまいました。


「なんだコケコッコー」


「で、出れないぞヒヒーン!」


「今度はここがお前たちの墓場だガオ。(((100000)!)!)!)!年でも何年でも仲良く暮らすがいい」


すると空間がねじ曲がり、元天馬と不死鳥を檻ごと、天上世界から放逐してしまいました。


「あーれー!」


檻がたどり着いたのは既に熱的死状態の宇宙でした。



「はぁ〜真っ暗だコケッ。もう宇宙も終焉してるのに私達は何をして過ごせばいいのコケッ?暇だコケコッコ」


「全くだ不死鳥さんよ。(((100000)!)!)!)!年の間、何もやることがないヒヒーン」


「(((100000)!)!)!)!年。私達でしりとりでもするかコケッ」



一方、天上世界に降り立った熊は、救いをもとめて神様を探しましたが見つかりません。


「神さまどこガオー?私を元の時代に戻して欲しいガオー。いくら私でも過去に戻る力はないんだガオ」


天上世界の野を超え山を越えて、3年神さまを探しましたがどこにもおられません。


「困ったな。檻の中にいた感覚のままでいると、あっという間に寿命が尽きてしまうガオ。気をつけねば」


ついに諦めて、天の野原で座禅を組みました。


「仕方がない・・。退屈凌ぎに私の命から剥ぎ取った原子分子陽子電子クオークをコントロールし、新たなる宇宙を作り出そうガオ」



熊が念じると空中に光の玉が浮かびます。これを熱的死した大宇宙にワープさせると、すぐにインフレーションだのビッグバンだのを起こしました。そして宇宙が再び誕生したのです。


これが私達の宇宙のはじまり・・・。


そして熊も新宇宙へとワープし、光速移動により138億年後の未来へと旅立ちます。そして地球と呼ばれる星に降り立ち、動物園の熊の檻の中にこそっと紛れこみました。これには飼育員も仰天。


「な、なんか一匹増えてるんですけど」


「気にするなガオ」


「喋った!」



飼育員は目の前にいる熊が、自分たちの宇宙の創造主だと気づくことなく、世話をすることになるのでした。

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