第25話 悪霊の住まう島
「従士ボルクス、ただいま参上いたしました」
ボルクスが使用人に呼ばれて来たのは執務室。モードレッドにいよいよ戦闘を視野に入れた任務が下された。無論、ボルクスも従士としてモードレッドと共に任務にあたるため、その説明があるそうだ。
執務室の机にはモードレッド、隣にはガスパー、ボルクスが入ってきた扉の横には、見慣れない男が立っていた。少なくとも、この家の使用人ではないし、新しく来た使用人という格好でもない。横目で見ながら、ボルクスはモードレッドのいる机に前に立ち、その男も隣に立った。
見慣れない男は黒いコートを羽織り、コート以外も全身を黒色の衣服で覆っている。足の先のブーツも炭を塗りたくったように黒く、黒一色の手袋を身につけ、露出させているのは顔ぐらいだ。その顔も厳つい形のサングラスで目元を隠している。年齢が全く窺い知れない、少なくとも二十を超えていることは何となくわかる。
とりあえずボルクスが軽く会釈すると、全身黒の男も会釈を返した。
「来たか、気になるだろうが自己紹介は後にしてくれ、先に今回の任務の説明を始める。ガスパー、頼む」
モードレッドに声を向けられたガスパーが頷き、手に持っている紙を見ながら、慣れた口調で話し始める。
「今回の任務であなたたちが向かうのは、ガリア島、人口は十五万人ほど、アルマ神聖帝国の領土に属するそこそこ大きな島です」
ボルクスはガリア島という名前は聞いたこともなかったが、ガスパーは簡潔にわかりやすく説明してくれている。どうやら紙に書いてあることをそのまま言っているわけではないらしい。
「そこに悪霊が出現したとの報告があり、何人かの騎士が討伐に向かいましたが、彼らは想定していた討伐期間が過ぎても帰ってくることはありませんでした。さらに何人かの騎士と冒険者が討伐ではなく調査に向かったところ、先に討伐に向かった騎士たちがなんと、島への上陸を防ぐ門番のように立ち塞がり、敵対する行動をとったそうです。恐らくは悪霊に取り憑かれたものと思われます」
ガスパーが咳払いをして、それまでより一段と低い声を出す。
「そして何より重要なのが、悪霊憑きとなった騎士の口からかの魔王ジャンヌの名前が出たこと」
執務室が静まり返る。モードレッドまでもが閉口し、深刻な面持ちをしている。ボルクスだけが首を傾げ、状況がいまいち飲み込めてなかった。魔王ジャンヌという名前が初耳だからだ。ボルクスが申し訳なさそうにガスパーと視線を合わせる。
「魔王ジャンヌ、数百年も前の魔王ですが、その力は魔王の名に相応しく恐ろしいほどに強大かつ残虐で、聖十字教の信徒を何人も、当時の町一つの住人を丸ごと虐殺するという極悪の限りを尽くした。と伝えられています」
「悪い奴だな~」
ボルクスが顔をしかめるが、どこか軽い口調であった。太古の時代の神々とて、ほんの些細なことで数多の人間の命を奪ったり、時には死ぬよりも辛い目に合わせることもあるので、あまりショックは受けていない。
「悪い奴どころではありませんよボルクス殿! 歴史に名を残す魔王が現代に復活したとなれば、島で起こっていることは、それこそ歴史的な大事件かもしれません! 例え偽物であっても魔王の名を騙ることなど、決して許されることのない大罪ですっ!」
いまいち緊張感のないボルクスにガスパーが、顔を赤くして、激しい口調で唾を飛ばす。モードレッドにたしなめるような視線を送られ、それに気づいたガスパーが咳払いをして、さっきまでの口調に戻る。
「島の中の様子も、島民が無事かどうかも、まだ決定的な報告はありません。島にいる悪霊の数も危険度も未知数です。こちらの戦力が悪霊に取り憑かれることによってそのまま敵に回ってしまうのは非常によろしくありません。大規模な戦力で向かうよりも、少数精鋭で向かい、速やかに島の内部を調査、可能であれば島民と騎士の解放を、とのことです」
「非常に残念ですが、私はこの任務に同行することはできません。ですが、幸運なことに、そこにいるマシュー殿が今回の任務に参加したいと志願してくれた次第でございます」
ガスパーが顔を上げ、黒づくしの男、マシューを見る。部屋にいる人間の視線を全て受けたマシューはせきばらいをして、意気揚々と自己紹介を始めた。
「ただいまご紹介に預かりました天導騎士団武装開発局所属、上級騎士マシューと申します! この度は私めの志願を受け入れてくださりまことにありがとうございますモードレッド卿!」
モードレッドが軽く手を振って応える。黒づくめという格好の割にはやけに明るいマシューがボルクスの方を見る。この場でマシューと初めて会ったのはボルクスだけだ。
「モードレッド卿の従士、ボルクスだ。よろしく頼む」
「よろしくお願いします!」
マシューが手を差し出し握手を求めてくる。ボルクスは一瞬、手袋をはめたまま握手を求められたのが気になったが、天導騎士団という職業柄、隠したい傷があることや、義手の可能性も考慮して、そのまま握手に応じた。マシューの手はごつごつとしていて硬かったが、少なくとも義手ではない感覚で会った。
「なんでもそちらのマシュー殿は数百年前、魔王ジャンヌを討伐した英雄、魔女狩り将軍マシューの血を引き、同じ名前を持つ子孫なのです!」
嬉しそうに手を向けてマシューを示すガスパーに、ボルクスは再び申し訳なさそうに眉根を寄せる。魔女狩り将軍も先祖マシューも、意味が分からない。
「私の先祖は、何食わぬ顔で民衆に紛れる悪しき魔女を炙り出し、処刑台に送ることで神に多大な貢献を成した騎士でした。それを生業として数多の魔女を神の名の下に裁きを与え、ついた異名が魔女狩り将軍というわけです」
魔女、ボルクスにとって並々ならぬ複雑な思い入れのある言葉をマシューは自慢げに舌に乗せる。無実の人間も殺されたのではないかという疑いや嫌悪感もあったが、今更確かめる術はない。目の前のマシューがやったのではなく、先祖のマシューがやったことだ。ボルクスはそうやって割り切った。
「かの魔王ジャンヌも、魔女だったと聞いています。魔女の王、即ち魔王。私の先祖が魔王ジャンヌを討伐したのも、今の私が現代に復活した魔王ジャンヌを打ち倒すのも、全ては必然の運命なのです!」
マシューが目の前で握り拳を作り、やる気にみなぎっている様子を、他の三人に示す。
「まだ魔王ジャンヌが復活したかどうかは、可能性の域を出ませんがね……」
ガスパーが眼鏡の位置を整えながら、呟くように言う。あっと、驚いたような顔をマシューがする。
「いやあ申し訳ありません。ついつい気持ちが逸ってしまいました。真偽はどうあれ、この任務は私と私の先祖の存在意義みたいねのがかかっていますからね」
照れ笑いをするマシューにモードレッドが軽く笑った。
「意気込みがあるのはいいことだ。その調子でよろしく頼むぞ」
恥ずかしそうに笑いながら、周りの三人に馴染んだようにマシューがぺこぺこする。
「よし、それでは明日の早朝、首都ロメカの入り口にて集合し、ガリア島に向けて出発する。敵が本当に魔王ジャンヌかどうかはこの目で見るまではわからないが、我々はそのつもりで行く。明日に備えて英気を養い、万全の準備で事に当たるように、では解散する」
モードレッドのその言葉で今日は解散となった。モードレッドの言う通り、ボルクスも今日の分の自主鍛錬は軽めにやった。例の重りも置いていく、人命がかかっているかもしれない状況で、重りはつけていられない。
翌日の早朝、首都ロメカの大きな門の前に荷物を持ったボルクスと、マシューが居た。まだ集合時間に早いが、二人ともモードレッドを待っている。
ずた袋を担ぎ、うんこ座りをしたボルクスがマシューを見上げた。
「昨日は聞かなかったけどさあ、武装開発局って何?」
マシューは振り返りもせず、はるか向こうの景色を身ながら答える。
「大体名前の通りですよ。天導騎士団が使う武器や防具を開発して騎士たちに戦力として提供する組織です。今の騎士たちの標準装備を製作、配備したのも武装開発局です。開発局の人間は、実際に闘いに出ることはあまりありませんが、戦場においては多くの騎士の命を救ったと自負しています」
「あんたは大丈夫なのか? 俺はよく知らんけど、開発局の人間ってのは要するに職人みてえな感じだろ? 先祖の因縁とかは一旦置いといて、今回の任務は、聞いた限りでは結構危険な任務だと思うぜ」
「要らぬ世話というものですよ。私は数少ない例外。騎士として前線に立ちつつ、開発局にも身を置き、戦場で直に得た知識や経験を基に、より強い武器、より頑丈な防具を開発する。それが私の騎士としての役目です」
「悪い、確かに余計な世話だった。そういえば上級騎士だったな」
「それに、開発局は何も剣や鎧ばかり作っているわけではありません。少し見せてあげましょうか、私が今回の任務で使う装備、武装開発局の叡智の結晶である魔装を」
「魔装……?」と言ってボルクスが眉根を寄せる。マシューが振り返り、わかっていますとでも言わんばかりの顔をする。
「悪魔の身体を利用して作られた武装、略して魔装です。悪魔を召喚・使役する悪魔使い、悪魔を人の身に宿す魔人と同様、悪魔の力を天導騎士団の戦力として有効活用しようというアプローチの一つです。とにかく私の魔装、バルベリトを見れば、この私は少数精鋭の戦力として、あなた方二人に何ら劣ることはないと証明できるでしょう」
マシューが、両手に力を込め、握り拳を作り、拳闘の構えをとる。すると、マシューの両腕と両足が黒い霧に包まれ、その下から、指先から肘までを覆うガントレットと、つま先から膝までを覆うグリーブが現れた。色は黒いが金属に近い光沢があり、輝いている。
バルベリトを装備したマシューを見た瞬間、ボルクスは全身の毛が一気に逆立つような高揚感に襲われた。今目の前にいるマシューはこの上なく強い。バルベリトを装備したことにより、何段階も上の強さに至ったかのように見える。実際そうかもしれない。さっきまでとは雰囲気がまるで違う。修羅場を幾つも潜り抜けた猛者のような、ベルガにも似た気迫を纏っている。正直に言えば、闘ってみたい。おそらくバルベリトの形状と構えからして、自分の身体と体術を戦闘の際の最大の拠り所とする、同じタイプのバトルスタイル……!!
ボルクスはマシューの発するオーラに当てられ、思わず勢いよく立ち上がる。ずた袋は知らぬ間に手放していた。ただ、バルベリトを何かに取り憑かれたかのように凝視する。
「モードレッド卿にはすでにお見せして、今回の任務同行の許可を得ました」
構えたまま小さく得意げに笑うマシュー、ボルクスは立ち上がったことを気恥ずかしそうにしながら、後頭部をかく。
「……想像以上だ。疑って悪かった。この魔装に加えて上級騎士としての素の力量、なるほどモードレッドが納得するはずだ。あんたも強いが、バルベリトという悪魔も相当強かったんだろうな……」
やや語気を弱めながら、ボルクスは地面に視線と声を落とす。とてつもなく嫌な予感が頭によぎる。かつての仲間が悪魔になったうえで討伐され、その上さらに身体をまるごと武具として使われる。という最悪の事態を想定した。ベオウルフももしかしたらアルゴナウタイの内の誰かかもしれない。興奮から冷めて、そう思うとマシューは戦力として心強いが、素直に喜べなくなった。
「……どうかしましたか?」
いつの間にかその複雑な想いが顔に出てしまったようだ。ボルクスは早急に心の内を悟られないように誤魔化した。
「いや、魔装に悪魔の意識はあるのかなって思って……だってあったら大変じゃん? 闘いの最中、ここぞというときに持ち主に牙を剥いたりしてきたら、大変なことになるかしれない」
「変なことを気にしますね……しかし、わからないことじゃありません。魔装は身に付ける者に絶大な力をもたらしますが、やはり悪魔の力を使うことに忌避感のある方も天導騎士団や聖職者の中には少なくありません」
「こんなに素晴らしい力だというのに……」とマシューが握りしめた拳を見つめながら、恍惚とした表情で呟く。サングラスで完全に見えないが、目に妖しい光が宿ったような気がして、ボルクスの身の毛がよだつ。
「確証はありませんが、魔装に悪魔の意識とか邪悪な魂が宿るとかは、恐らくありません。ボルクスの危惧していることも起こらないでしょう。なぜなら悪魔を一度殺したうえで、その死体を魔法を使って魔装に加工しますからね、魂なんかはもう神の下に召されたのでしょう。 私も何度か魔装を実戦で使いましたが、魔装が何らかの意思を持って私に危害を加えようとしたことなど一度もありませんでしたよ」
バルベリトが再び黒い霧に包まれ、マシューの両手両足から消える。
「ちなみに悪魔バルベリトは結構強かったですが、私が直に討伐し、魔装にしました。こうして今、私がボルクスにバルベリトを魔装として見せていることがその証です」
これといった表情も顔に出さずに、あっけらかんと言い放ったマシューに、ボルクスは閉口した。自慢げに言うこともなく、苦々しく言ってもいない。バルベリトを装備した時もそうだったが、この黒づくめの男は強さの底が測れない。
しばらくして、馬車に乗ったモードレッドが来た。ボルクスが乗り込もうとするより先に、シルヴィが寂しそうに、降りてきた。その後に使用人も一人、困った顔をして降りてきた。モードレッドも部下と協力者の手前、厳格な態度を崩さないが、心なしか眉が下がっている気がする。降りてきた使用人がボルクスを見つつ、父親との別れで沈んでいるシルヴィをなだめる。
「お嬢様、我々が旦那様をお見送りできるのはここまでです。心配なのはわかりますが、旦那様ならきっと無事に帰ってきますよ。ガスパーさんは残念ながら、この前の任務で力を失い、闘えなくなってしまいましたが、何よりボルクスさんがいるではありませんか」
「うん……」
降りてきた使用人は、助けを求めるようにボルクスを見ていたが、シルヴィの顔は下を向いたままだ。なんとなく、子供ながらに今回の任務が危険だと感じ取ったのだろう、泣きそうな顔で、か細い声で呟く。ボルクスとて不安要素が多い。
ボルクスは返事をすることはなかった。シルヴィのそばに近づいてしゃがみ込み、視線を合わせる。ようやっとシルヴィが顔を上げ、ボルクスの方を見た。
「……ボルクス、パパ大丈夫かな? この前みたいなことならない?」
「お嬢様、大丈夫です。この私がいる限り、モードレッド卿は少なくとも半年前のようなことはならないでしょう。この私がいる限り、必ずや無事に、私とモードレッド卿が共に、お嬢様の待つ家に帰ることを、この身に、私の父の名誉にかけて誓います」
背中にモードレッドの刺すような視線を感じる。だが嘘はついていない。
「……」
「ええ、それにあのマシューという男も中々強いです。モードレッド卿もお認めになったほどですから。私も先ほどその力の一端を見せてもらいました。彼になら安心して背中を預けることが出来ます」
シルヴィがマシューをちらりと見た。マシューは馬車がこれから進むであろう街道の先を凝視しており、こちらを一瞥もしない。
「あの人……ちょっと怖いから……」
小声で呟いたシルヴィが再び俯いて服の端をぎゅっと掴む。確かに、全身黒にサングラスの大人というのは子供にとっては少し近寄りがたい存在かもしれない。
「……お嬢様、私はお土産を持って帰りましょう。私が今回の任務における目的地、ガリア島にてお嬢様のために何か買って帰ります。ですから私を信じて、我々の帰りを待ってはいただけませんか?」
「ほんとう? お土産買ってきてくれるの?」
シルヴィの顔と声音が僅かに明るくなった。ボルクスは薄く笑みを浮かべて頷く。
「はい、何かご希望はありますでしょうか? 美味しいものがいいでしょうか? 綺麗なものがいいでしょうか?」
「んー、ガリア島のことよくわからないし、ボルクスが買ってきてくれるなら、なんでもいい。だから絶対帰ってくるって約束して。お土産も楽しみにしてるから」
「約束します。任せてくださいお嬢様」
「わかった。絶対だからね」
「それでは行って参ります」
「行ってらっしゃい! お土産絶対忘れないでね!」
シルヴィが元気よく言い放った言葉には、弱弱しい様子などなかった。ボルクスがゆっくりと立ち上がり、馬車の方へと足を向ける。
「アッ!!!! 何あれ!!!!」
馬車に乗ろうとしていたボルクスが、急にクソデカい声を出して、遠くの景色を指差す。その場にボルクス以外の全ての人間の意識がボルクスの指先の景色に向けられる。その間、わずか数秒。
数秒あれば十分だった。ボルクスは数秒にも満たない一瞬で、シルヴィに駆け寄り、頭をわしゃわしゃ撫でる。そばにいる使用人は気づかない。ボルクスの指し示した先を目を細めながら見ている。
シルヴィには気づかれた。ボルクスの意図を察したようで、二人ともいたずらっぽく、声をださずに笑う。そして気づかれる前に馬車に爆速で戻った。
「いやあ~すみません、何もなかったです、見間違えでした」
照れ笑いを偽造したボルクスが馬車に乗る。
「早く行きましょうモードレッド卿、ばーっと行って、ばーっと闘って、さっさとお嬢様のためにお土産を買って帰りましょう」
モードレッドが少し呆れながら、御者に馬車を出す様に促した。窓の外で元気よく手を振るシルヴィに見送られながら、聖都を後にした。
「感謝するぞ。お前のおかげでシルヴィはなんとか落ち着いたように見えた。こういうのは本来俺が言って聞かせなけれなならんのだが、どうにもそういうのは苦手でな……」
聖都から離れた後、モードレッドが自嘲するように苦々しく笑う。
「気にすんなって、子供ってさあ、ほら、未来だとか希望だとか夢とかが可能性とか、たっくさん持ってる、宝じゃん? 俺はモードレッドも子供だから優しくしてるってことはないからな。子供ってのは俺にとっちゃとにかく大事にしなきゃならない存在なんだよ」
モードレッドは少し目を見開いてボルクスの顔を見た後、窓の外の景色に視線をやった。
「マシューもそう思うよな!」
馬車に乗ってからずっと窓の外を見ていたマシューに、雑に話を振る。
「わかりませんね、私には子供の頃の記憶なんてほとんどありませんから。恐らく、ボルクスが子供に優しくするのは自分が子供の頃に優しく、大切に、それこそ未来の宝のように扱われたからでしょう」
景色を見ながら答えるマシューにボルクスは「まあな……」と曖昧な返事をする。マシューの言葉が想定していたものではなかったからだ。
「私にはそれがない……」
マシューの小さく虚ろな声が馬車の中に、静寂をもたらす。それっきり目的地に到着するまで三人とも口を開くことはなかった。




