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チサと大奥  作者: 五木カフィ
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お万の方 大奥総取り締まりに、、

やがて「このたびの事は こなたにとって思いもかけなかった事ゆえ

 何としてもお断りするべきであるが 他ならぬお局様のご遺言とは、、、」と

ためらいがちに一同を見渡す。

「何を仰せられます。 無用のお気遣いはなさいますな。

 我等にとってお方様のように若くて ご人望ご教養もあるお方に

 取り締まり役になっていただく事はありがたい事でございます。



 本日よりお方様のお指図に従って

 諸事とり行うことに誰が不満を申しましょうや」と

奥女中を代表してお年寄の筆頭格 和島が言うとみな同感して深く頷く。

「でも 本来ならばこれはお楽の方が、、」

なされる役目と 言うより早くお楽はひと膝進み出て

「それは申して下さいますな。 竹千代君をお産み参らせたと言え

 私にはその任に向き兼ねると思います。 私にしましてもこのたびの事は

 道理にかなったお心使いと亡きお局様に感謝している次第でございます」と

思ったまま胸の内を打ち明ける。



そんな彼女にお万の方はじめみなが 好感をもって微笑んだ。

こうしてお万の方の大奥取り締まり就任は 滞りなく定められ彼女は

春日局同様 中奥までの出入りを許されたが

ただ一つ 違っていたのは今までは中奥に入る時 侍女は付いていかなかったが

このたびからは 付き添いの侍女一人 大奥に近い小座敷に控えさせて

おく事になったことである。



大奥に急用ができた時とか 中奥にてお万の方の雑用にとか

あまりはっきりしない名目がつけられていた。

実は これは伊豆守の考えであった。

彼はチサと大奥以外で会うには こうするより他はないと考えて

家光に進言したのだった。



春日局の遺言と言うのも実は嘘で 局が家光に言い残して置いた事では無く

かつて伊豆守が局と歓談していた時 何気なく

「こなたの後に大奥を引き継ぐのは あのお楽では

 ちと 無理であろうのう」と もらしていた言葉を

思い出し お楽の方でなければお万の方より他に人は無しとふんで家光に

「お局様より前もって 伺っておりました」と

大嘘を言上したのだ。



そうしてそのついでに

「お局様のように中奥を隈なく ご存じのお方と違い まだ若いお万の方様には

 お一人にて中奥に参られるのは 心もとなく思われるのではないでしょうか。

 それにお局様は我等 老中も家臣達も兼ねてより顔見知りが多うございます。

 お万の方におかれてはそれも無く 何かご用が生じました時

 男ばかりの中奥ではお気兼ねも ありましょうから」等と

言葉巧みに 付き添いの侍女の事も言って置いたのだ。



伊豆守の進言を聞いた家光は 胸の内ではお万の方に決めていた事とて

これ幸いと同調し 局の遺言も信じて疑わなかった。

伊豆守にとっても 亡き局の遺志に反するかも知れないが 死の数日前

チサの事をくれぐれもと 頼まれたことだし大奥より外で会うには

お万の方の侍女として 中奥に連れて来るより他にないと考えたのだ。



お万の方の侍女として、、、、 これが伊豆守の狙いだった。

しかし その為にだけお方様を推薦したのではない。

若くして人徳も教養も知識も持ち合わせているお方様を

彼は人の上に立つ統率力ありと 高く評価していたのだった。

それに彼女とは兼ねてより面識もあった。



それはお万の方の弟 戸田氏典が江戸城に召し出されて初めてのお役

御小姓に任ぜられた時 その世話役をしたのが伊豆守だった。

彼もまた 9歳の時 家光の小姓として召し出されたのが現在の出世に

繋がっている。そういう訳でお万の方とも2・3度 顔を合わせたことがあり

お方様より氏豊の勤めぶり等 聞かれることもあった。

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