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チサと大奥  作者: 五木カフィ
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春日局の病い

その朝 局は良く眠った後なので食欲も旺盛なのが侍女達を安心させる。

その食事が終わった後で 何気ない様子で

「ちと 塩味が強いような。 歳を取るとサッパリした物を好む

 ようになるのかも知れぬな。 これからは面倒でもこなたの食べる分は

 塩を控えてたもれ。 藤波 御膳所にはよしなに」

「かしこまりました」




チサは嬉しくて胸がキューンと音を立てて熱くなった。

(お局様は 私の言う事を聞き入れて下さった)


その時 昨日の医師が診察に訪れた。

「このご様子では ずいぶんお楽になられたようで」と

彼は局の脈をとりながら 顔色と膳の上を見て言う。


「久しぶりに良く眠ったせいか しごく心地好い」

「それはまことに良しゅうございます。

 なれどお脈の方は 今少し安定しておりませぬ。

 少なくとも2日はご静養あそばすように」

「それは無用じゃ 今朝は近来になく心地好いと言うのに

 出仕を控えるなど もっての他じゃ」

「2日間のご辛抱を  このままではまた昨日のような

 立ち眩みが起こりますぞ」

「良いと申すに、、」



局と医師が押し問答をしている時 和島が現れた。

「これは何となされました。 お局様にはもう床払いを

 なされましたか」と 和島は驚いている。

「もうこのように 元気になり食も進んでおるのにこのお匙は

 まだ 休養せよと言うのじゃ」と 不服そうな局に



「なれど お匙の申すのも一理 昨日の今日でございます。

 ここは2・3日お部屋にて静かになさらねば」

みなまで言わせず

「和島 そちまでがわらわを病人扱いするのか」と

局の剣幕は 激しくなって来る。



その時 チサが今までのことは聞いていなかったような口振りで

「昨夜は ことの他寒い夜でございましたな」と

突然 突拍子もない事を言い出したので みなビックリ

しかし 局だけはハッと気づきチサを見た。

チサは言外に昨夜二人が 交わした会話を思い出して欲しいと

言うのだった。



局は思い直して

「まぁ良い お匙がそこまで申すならおとなしく

 部屋で控えていよう」と

急転直下 和島も医師も呆れ返ってしばし 声もない。



そうこうしている内に 将軍お成りのか時刻が迫って来る。

みな慌ただしく 身仕度くなど整えている中で

チサは軽い頭痛を感じていた。


その朝 大奥入りした家光は そこに局の姿がないのに驚いて

「春日は どう致した」

和島が平伏して

「はい 春日局様におかれましては 昨日急な立ち眩み」

「何っ」

「なれど お匙の診るところ 心配するほどではなく

 少々 お疲れ気味の為とのことでございます。

 現に 今朝は顔色も良く お食事もお進みでございます」



「そうか それは良かった」

家光は安堵の胸を 撫でおろす。

「しかしながら ご用心の上にも2・3日のご静養を

 お勧めしております」

「そうせねばならぬ。 かりそめのめまいとて油断は出来ぬ

 くれぐれも体を厭うてくれるようにと伝えよ。

 部屋の者も心して看病するように」と 言いかけ

チサの方を見て驚いた。

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