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チサと大奥  作者: 五木カフィ
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月見の宴にて、、、、

「上様は大そうなお怒りで  そ奴が憎い 八つ裂きにしても

 あきたらぬと 凄まじい剣幕で有られたそうな」等と

話に尾ひれが付きだんだんオーバーになって行く。

それを聞いた花岡は さすがに身の縮む思いをしたがお玉は



「これは私達に対する 当てつけでありましょう」と

まなじりを吊り上げて 悔しげに言う。

「なれどおチサは 我等の名を最後まで言わなかったと

 言うではないか。現に何のお咎めもない。

 それはまことであろう」

助かったと 言いたげな花岡に



「そうして私に恩をきせるつもりなのです。

 これから先 何も言わせぬたくらみだと思われませんか

 自分だけがいい子になって 言外に私達を牽制しているのです。

 上様がおっしゃったと言われる事も もとを探ればおチサ達が

 噂を振り撒いているのではありませんか。

 いいえ きっとそうです」と

形相凄まじく 春日局の部屋辺りを睨みつける。



このままには置くものか いつか無念を晴らして見せるという

強い気持ちが ありありと感じられるお玉の態度に

頼もしさと 少しばかり恐ろしさも感じる花岡であった。


こうしてこの事件は終わったが  大奥に吹き荒れる女達の闘いは

日に日に激しさを加えて行く。

それはまだ六人もいる側女の内  誰一人受胎していないと

いう事が ますます争いを醜くしてゆき 人を恨み 呪い

ジメジメとした果てしない泥沼に 広がって行く。



その中でやはり 一番風当たりが強いのがチサである。

チサはあの事件以来 そんな争いからは努めて身を引いて

いつも陽気に明るくを 心がけていたが その態度がまた

お玉達にすれば不遜な ふてぶてしいものと映るらしい。

それはお玉に限らず お夏 お里沙の両女にとっても同じ事


この三人のチサに対する嫉妬の念は凄まじく

顔を合わせるたび 身体に錐でも揉み込むような

鋭い視線に出会うのだった。



それはやはり家光の愛ゆえに 自分達が寝所に召されても

前とは違うと肌で感じるからである。

いつかこの踏みにじられた無念さを、、、、

という三人の思いを晴らす絶好のチャンスがある時

巡って来た。



それは毎年 大奥の庭で行われるお月見の会の事だった。

その日はお舂屋で特に作らせた団子に 枝豆 栗 柿 芋等を

添えて白木の台に乗せ 御膳所と将軍が座る御座の間に飾る。

この御座の間というのは 御仏間の西側にあって本来は

御台所と将軍が式日などに ここで種々の式を取り行なう場所だった。



また 月見の会も本来は御座の間より 庭をはさんで北側にある

休息の間という所で行なうものであったが 御台所は別居として

春日局と家光が代行していた。

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