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チサと大奥  作者: 五木カフィ
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庭での障害事件

藤波は一歩下がって

「それはまことにお腹立ちはごもっともでございます。

 何分にもこのおチサ様は お中臈になられて日も浅く

 諸事振る舞いに至らぬところが多々 ございますれば我が主人も

 人一倍 気を使って今 教育の最中でございます。

 そこのところをお考え頂いて  このたびの失礼お許し下さる訳には

 いかぬものでございましょうか、、」と

あくまで下手 下手に出る。



そう言われては花岡としても 言うべき言葉がない。

「そうであったな。今 教育中と言う事をついぞ忘れておりました。

 いわばまだ半人前の者をわらわも大人げのない事をしました。

 許して下され」と

せいぜい権を取り繕って お玉達を促して立ち去って行く。

その背に向かい

「改めて主人よりお詫び申し上げます」と

声をかけると 花岡は振り向きもせず

「その心配は無用に」と言いおいて 足早に去って行った。



後に残ったチサ達 見事に花岡達に話をつけた

藤波の手腕に呆然としていたが 収まらないのは胸の内

「なぜ こちらが一方的に詫びねばならないのです。

 藤波様は事の起こりをご存知ないから」と

まだ言いかけるかな江に 藤波は優しく笑って

「これでいいのです。事の次第はある者より詳しく聞いております。

 これはお局様のお考えなのですよ。

 だからおチサ様も そんなにふくれ顔をしないで部屋にお戻り下さい」と

言って聞かす。



言われて三人はしぶしぶ局の待つ部屋に戻る道すがら

チサは池に落ちた時 カスッた傷がズキズキと痛み出したのに気づいた。

先程までは お玉や花岡達の厭味に猛烈に怒っていたから

気がつかなかったらしい。

痛みは次第に増して来て 部屋に帰り付く頃には

少しビッコを引かなくてはならなかった。



部屋では局が厳しく注意せねばと険しい顔で 待っていたが

チサのビッコに一早く気づき 泥だらけの裾をめくると

傷は思ったより深かった。

「まぁ これは酷い」

およのとかな江達は青くなる。なぜ 今まで気づかなかったのかと

自分達の手落ちを責めた。



どうやら池に足を突っ込んだ時 角の尖った石ででも切ったらしく

深さ1cm 長さ10cm位の傷口から ジワジワッと血がにじみ出していた。

局も顔色を変えて

「早う 手当を」と声が高くなる。

局の声にお蘭も飛びだして来て

「おチサ様 大丈夫ですか?」と

心配顔で覗き込む。



「大丈夫です。ちょっとカスッただけですもの

 ついさっきまで 忘れていたくらいだからたいした事ではありません」

「でも 血が」

「生きてる証拠」と

チサは元気にコロコロと笑って見せたが 傷口を拭かれる時

には顔をしかめた。


「お匙を呼んだ方がいいのでは」 藤波が局に問いかけた。

「そうよのう お匙を呼ぶとなれば事が大きくなってしまう。

 どうしたものかの」

「でも この傷では、、、、 元々あちら側の嫌がらせによって

 起こったものですから、、 触ってもいない者を突き倒されたような

 振りをするとは こじつけもはなはだしゅうございます」



「私共は はっきり見ておりました。

 おチサ様が危うく身をよじらせて池に落ちた時

 あ~れ~とお玉様がぎょうさんな悲鳴を上げて倒れたのです

 そうして顔を打つところだったと まぁヌケヌケと」

かな江は唇を震わせて悔しがる。


「池に落ちるのを見てから倒れたのですよ。

 私が顔を打つような石も木も側に無いと言いましても

 花岡様は石や木ばかりで怪我をするとは限らぬと、、、、

 ドオッと地面に倒れたのならともかく ヘタヘタと座り込んだ

 お玉様がどうして顔を打ちましょう」

かな江の怒りは収まらない

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