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チサと大奥  作者: 五木カフィ
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春日局の登場

そんな様子を楽しげに見ながら酒を飲んでいた梅山は

ふと 座り直し膝を正して

「チサ お局様の部屋に参ったら ここのように気楽に参りませぬぞ。

 ここはそなたの 例えば生家のようなところ

 お局様の部屋は嫁ぎ先の婚家のようなものじゃ

 お局様は上様をお育て申し上げた御方 はばかりながら

 御母君のようなお方と心得て 何事にも気を配って振る舞わねばならぬ。

 言葉使いは特に気をつけて、、、、

 


 これはおよのにも心得て貰わなならぬ。

 およのもチサと同輩であったよしみもあり 馴れ馴れしい口の聞き方も

 許してきたがあちらの部屋に参れば そちは侍女 チサは中臈じゃ

 そこをわきまえて話さねばならぬ。

 この事はみなにも強く言っておきますぞ。

 この先 廊下などで出会っても今までのように軽々しいもの言いは

 控えねばならぬ。良いな」と 注意を与えた。



梅山の言う事はもっともであった。

「はいっ」

みな声を揃えて返事をした。 そうして楽しかった夜も明け

将軍が大奥にまだお成りになる前に チサとおよのは

春日局の部屋に引っ越しした。


チサは局に会うのは初めてである。

昔 何かの本で読んだかテレビで見たのか忘れたが

春日局という名は良く知っている。

いったい どんな人なのだろう。 戦国時代を生き抜き家光の乳母と

なってからは政治力を発揮して 奥女中の地位を確立し 

大奥の土台を築いた大奥にとっては第一人者


また 表向きにおいても ただ一人将軍の居住する中奥まで

入ることを許され 老中達にも顔が利く陰の実力者である事を考えれば

おのずと その厳しい輪郭が浮かんでくる。

3人は気を引き締めて局の前に手をついた。

梅山と局はすでに昨日 病気全快の挨拶は済んでいる

ので早速 チサを引き合わせた。


「お局様 新たに中臈に上がりましたチサにございます」

梅山が小柄な身体をいっそう小さくして平伏する。

それに連れてチサとおよのも畏まって深く頭を下げた。

局は3人が部屋に入って来る時から チサを細かく観察して

和島の言う通り人に優れて美しいところは少しも無いと思い

(上様はいったいどこに お心惹かれあそばしたのか?)



頭の隅で考えつつ

「チサ 顔を上げよ」と 命じた。

言われるままチサはゆっくり面をも上げ 臆する様子もなく

局をひたところ見つめる。 局は小さく頷くような素振りをして

「わらわの病中に お眼に止まりしと聞く。

 さてもめでたいことじゃ 昨日 中奥にお伺いした折りも

 しきりにそちの事を話しておられた。かかるほどにご寵愛深い身を

 大切にして上様のおん為 心してお仕えせねばなりませぬぞ」



「はい 畏まりました」

「また 今日からは春日を母代わりと思って何事も隠さずに

 心安らかに話すが良い。だが 母となれば甘いばかりではない。

 時には厳しく言う事もある。覚悟しておくが良い」と

家光の側女として鍛えてほしいと 頼まれている局は

つい チサを前に気負ってしまう。

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