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チサと大奥  作者: 五木カフィ
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春日局の登場

「それではなおさらの事 この上は早くご懐妊の知らせが

 聞きとうございます」

「ハハハハ あのチサが子をなぁ ハッハッハッ無理じゃ」


家光はチサが赤ん坊を抱いている姿を想像して大笑い

その姿は まるでサマにならないのだ。

「ええっ では」

又もや産まず女かと落胆するが

「あれは 大人か子供かまったく分からないような女な子じゃ

 赤子を抱いている姿など わしには及びもつかぬ」と

言われてホッとひと安心する。



「そこで春日に頼みがある」

「何なりと」

「あのチサを そちの手元で側女として恥ずかしくないよう育ててほしい。

 聞けばあれは大奥に参ってから まだ半年にもならぬとか

 言葉使いも行儀作法も今一つじゃ 梅山の部屋におるそうじゃが

 手に負えぬらしい。

 そこでそちに頼むのじゃが 聞いてくれるか」


気の強い女には同じように 剛直な局をと家光は考えるのか

いや それだけではない。 彼は局が自分を独占したがっているのに

うすうす気づいていた。 世に言う姑根性である。

息子を嫁に取られたくないと ひそかに思うのは

ときを越え洋の東西を問わず というところか、、、



それゆえ 局とお万の方とは折り合いが上手くいかなかったのでは

ないかと今 思うのである。

その上に 局は権勢欲も強く 局にとって身分も高く教養も深く

心根も優しいと万人に好かれるお万の方が

家光の愛を一人占めにしていることに 耐えられなかった。

生まれ落ちた時から 我が乳を含ませ 小さな咳一つにも

気に病んで育ててきた 生き甲斐の上様である。

それを今さら他の女にうつつを抜かされては、、、、


と思い込んでいるとは 言いすぎだろうか、、

とにかく大奥においても家光においても常に第一人者で

有りたい彼女にとって お万の方は煙たい存在だった。

お万の方の一件は家光を警戒させた。


それゆえにチサを局の懐に 飛び込ませておくべしと

部屋預かりを命じたのである。

しかし 局は困ってしまう。

なぜなら今 彼女の部屋にはすでにお手付き中臈 お蘭がいる。

同じ部屋にお手付き中臈が二人では 考えざるを得ない。

上様はそのことをお忘れなのか?

局が返事を渋っていると


「不承知か」と イライラしたように問う。

「いいえ 上様のおっしゃる事 この婆を頼みにして下さる事

 まことに 有り難きことなれど春日の部屋にはお蘭がおりまする」

「そうであったか」と

家光はまるで忘れていたような口振り



「しかしチサは気にすまい。 何しろこのわしに自分ばかり

 召さずに他の女も閨に呼べ と言うくらいあっさりした女じゃ

 そうせねば わしの勝手で手をかけられた女達が

 かわいそうだと言うのじゃ」と 言って笑う。

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