チサの提案が、、、、
梅山は困ったように みなを手真似で押さえ
「もう良い これは部屋子の単なるいたずらであろう。
あまり根に持つような事はせずに 同じ縁続きの部屋じゃ
みな仲良くするように」と 諭す。
だが およの達は承知しない
「単なるいたずらとは思えません。最近 特にあのお部屋の方々
私達をあしざまに言われます。いくら おチサ様がご寵愛深いからと
言って焼餅を焼かれても、、、、 元々あちらのお玉様の気位いが」と
とんでもない事を言い出しそうなので 梅山は慌ててその部屋子を
叱り付けた。
「これ 邪推でものを言っては成らぬ」
しかし 原因が自分にあるらしいと聞いて チサはびっくり
「私が 原因なのですか?」と 梅山に尋ねる。
「いや 別に そなたが悪いというのではありませぬ。
ただ 奥では良くこういう事があるものじゃ
いちいち気にしていては大変、、、、」と
しどろもどろになって言い聞かせるが チサは今 ようやく他の側室達が
自分に対して心良く 思わないのに気づいた。
鈍感というのか気づかなかったのだ。
そう言えば分かる気がする。
話しによれば家光はあまり大奥泊まりが多い人ではなかったらしい。
それがこのひと月 御国忌日とかその他 都合が悪い日以外は
全て大奥泊まり しかも相手はいつもチサ となれば他の
側室がヤキモキするのも分かろうと言うもの、、
これは家光に責任があるとチサは思った。
一度手を付けた女 嫌になったからとて 新しい女ができたからとて
放ったらかしにするのは かわいそうだと思う。
しかも その女達は他の男に嫁ぐ事も出来ず
一生 この大奥で暮らさなければ成らず 将軍が死ねば尼となって
菩提を弔う。
(これではあまりに不公平だ。ようし)と チサは
「他のお方達の思われる事 別に不思議と思えません。
これは上様に責任のあること 私からお願いしてみましょう」と
言うと梅山は眉を吊り上げ
「妙なことを言うものではありませぬ
上様にはお考えが合っての事じゃ。女な子が賢しゅう口を
挟むものではありませぬ。
また そのような事を言われた方の身になっても見よ」等
くどくど細かく言い聞かせる。
「でも」と
言いかけてチサは口をつぐむと また掃除に戻った。
梅山とこれ以上 議論しても無駄だと悟ったからだ。
将軍が次から次へと女を変える事
これはこの時代では 無理からぬ事で周囲からも次々と
新しい女を差し出して来るのであった。