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チサと大奥  作者: 五木カフィ
22/150

チサは過去の世界へ

見ている家光達も吹きだした。

お年寄の中には笑い声を上げるののもはばかられ

口を押さえて笑いをかみ殺している者もいた。

しかし 中にははしたないと心良く思わない者もいる。

和島が そうしてお玉 お夏 お里沙の三人がそうであった。

彼女達は気位いが高く お万の方は優しく微笑まれた。

もう一人の中臈 お蘭は出身が町方だけに朗らかに笑い

お玉達はそれを見て 眉をひそめた。


「あの 1番面白い奴 尻を叩いた女は誰じゃ」

その時 突然 家光がそう尋ねた。 みな一様にハッと息を呑む。

だが 誰じゃと尋ねられても まだ大奥に来て間もないチサを

知っているお年寄りはいなかった。

「さぁ」と

みな顔を見合わせていると


「お恥ずかしいところをお目にかけて あいすみません。

 あれは最近 私のもとに参りましたチサという新参者でございます」

お客会釈の梅山が顔をまっ赤にして、声も細々と恐る恐る告げた。

「何 チサとな」

家光はその名に聞き覚えがあった。

そうして思い出した。

(梅山 チサ ああ そうか)


過ぐる日  仏間近くの庭で家光を熊扱いしたあの女である。

(あの時の威勢のいい女か)

何か胸にひびくものがあった。

その場を離れたが 後は歩いていてもどの女も眼に入らない。

足早にも庭内を周り終えると さっさと茶屋に戻って酒にする。

(美しゅうはないが おもしろい女じゃな)


実際 美しい女ならチサの他に 掃いて捨てるほどいた。

チサは30人並みというところだ。

年寄 和島は春日局に言われた通り 今日1日の家光の

表情に注意していたが これという女に眼を止めず(美しい娘は

たくさんいた)   足を止めていたというのがあのはしたないと

思うチサ達の時だけだったのが不愉快だった。


局は 少しでもお眼が止まった女ならと言われたが

あの女はいくら何でも お側に上げるにははばかられると思う。

局は 直接言わなかったが 次のお側女探し出るある事は

長年 片腕として過ごしてきた和島には

容易に察っしのつくことであった。


(ご報告して お止めしなければ)

そう心には決めていると 間もなく上様は中奥に戻られる時刻になる。

だがその時  御門までお見送りの和島達を振り返って

「和島」と

和島一人を呼ばれた。

何事かとお側近く伺うと 家光は少し声を低めて


「先程のあのチサという女 今宵 閨に召そう」

「ええっ」

思わず のけ反る和島に家光はニヤリと意味有りげに笑い

「梅山に そう取り計らうよう申し伝えよ」と

言い残して さも楽しそうニヤリ中奥にお戻りになる。


(上様も なんともの好きな)

よりによってあんな女をと 和島は悔しくなる。

しかし 上意とあれば致し方なく花見の宴はもうすぐ終わり

陽は少し傾きかけていた。

みなが大奥に戻ってから ひそかに梅山を呼び出した

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