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チサと大奥  作者: 五木カフィ
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チサは過去の世界へ

あいにく自分は風邪を引いて参加できないが

すでに昨夜 局の息のかかった年寄 和島をひそかに私邸へ呼び付け

「明日の宴にて 少しでも上様のお眼に止まりし女あれば

 この春日に知らせてくりゃれ」と

くれぐれも念を押して頼んであるのだ。


裏にそんな事が巧まれているとも知らず お花見の当日は

カラリと良い天気だった。

その日は広い庭のあちこちに敷物を引いて酒や料理をたくさん並べ

また 茶屋風庭仕立てた小屋においては餅や田楽なども並べる。

その中で今日 1日は上はお年寄から下はお目見え以下の者も

堅苦しい勤めをしばし忘れて 多いに飲み食いしゃべり

歌い踊るのだ。


その騒ぎにはまるで花も驚き 散り急ぐかと思われる。

十分に酒や料理が回って、みんなが陽気になり

歌の一つでも出だした頃に将軍やお年寄が近づいて来ても

今日だけは無礼講 みなは踊る手を止めようとしない。


家光達もそんな様子を満足そうに見回っているが

その中で一人 和島だけは上様の眼がどの女に注がれるか

足が止まりはせぬかと 花もそっちのけで真剣そのもの、、

しかしお庭を半分以上回ったのに それらしき様子はチラリとも無い。

笑顔でまんべんなく笑いさざめく数多の女に達を見て回っている。


その時 行く手の小高い丘の上で 一段と賑やかな女達に出会った。

何やら 14.5人の一団がグルリと輪を作ってその中に

目隠しをした二人が入り 手探りで足もとも覚束なく

蹴つまずいたり転んだりしながら相手を捕まえようと必死だった。

輪の中の二人が面白い仕草をするたびに女達がドッと笑い崩れる。


いつしか家光は足を止めて その面白そうな遊びを見物していた。

それはチサがみなに教えた今で言う{お爺さん お婆さん}の

遊びだった。

チサ達は家光一行が見ているとはつゆ知らず

今しもおよのとチサが輪の中で目隠しをしたところ。

およのがお爺さん役でチサがお婆さん役である。


「皆さん まだまだ下手よ。こういう遊びはお上品ぶっては駄目

 私が見せてあげるわ」と

チサは大張り切り 二人とも目隠しをして腰を曲げ

「お婆さんや」と およのが呼ぶと

「はい はい」と チサが返事をして手を叩く。

およのはその音を頼りにチサを捕まえるはずが

チサは考えていて手を叩く時

自分の体から遠く離して叩くし、返事をするや否や

サッと身をひるがえすのでなかなか捕まら無い。


およのは10回呼んでも相手を捕まえられない時は

罰を受けるので必死である。

その罰は裾をめくってみなの前にお尻を突き出し

勝った相手に思いっきり叩かれるというものである。

そうされては大変と一生懸命に追いかけた。


「お婆さんや」

「はい はい」 周りの女達は

「ほれ もっと右」

「あっ 今度は下よ。しゃがんだわ」

「ほら 左に行った」

等と面白がっていろいろな事を言う。


しかしとうとうおよのは負けてしまった。

さぁ大変 チサは腕をまくって

「さぁ~行くわよ およのさん。私は皆さんみたいに

 手加減しませんからねぇ」と張り切る。

「キヤ~ 止して 勘弁して~」と

輪の中を逃げ回る。

「待て~」と

チサも追いかける。 その格好が面白いとまた皆が笑いこける。


「さぁ 捕まえた。ほら 裾をめくって」と

チサは逃げるおよのの帯をしっかと握り離さない。

こうなったらおよのも観念して嫌々ながら裾をちよっとめくる。

「 ほれ お尻を出して~」とチサ

およのがちよっとだけ突き出すと女達は許さない。

「もっと出して」

「もっと もっと」と

囃し立てた。およのはとうとう足を開いてお尻を突き出すと

いうあられもない格好をさせられてしまった。


「さぁ 行くわよ~それ~」と

チサはそう丸いお尻を思い切り良くピシャ~と叩くといい音がして

「キヤ~ 痛い」と

およのが前につんのめる。 そこでまたドッと笑う。

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