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チサと大奥  作者: 五木カフィ
144/150

家光と愛姫とチサ

やがて十分に乳を飲み満足して口を離した姫を 肩に持たれさせ

軽く背中をトントンすると やがて小さなゲップをした。

見ているお楽や佐和は 竹千代に同じ事をしたのにを思い出す。

竹千代は不思議そうに

「なぜ 背を叩くのじゃ」と 尋ねると



チサが答えるより早くお楽が

「お乳を吐かないようにする為ですよ。 若君も赤子の時は

 佐和が同じ事をしていたのです。 若君は良く乳を吐かれて

 困っていたところ おチサ様にこの方法を教えて頂き試したところ

 本当に回数が減り 丈夫にお育ちになりました」

「ふう~ん そうか」 まだ理解出来ぬらしい。

当たり前の事である。まだ五歳半ばなのだから、、、、



その後も愛姫は 順調な成長を見せ生後3ヶ月で薄めた野菜スープ

4ヶ月でとろとろに煮込んだお粥の中に すり潰した野菜を入れた

チサ手作りの離乳食を与えてゆくと 丸々とした元気な赤ん坊

それと季節が暖かくなって来たので 薄着にさせ足を隠すような

長い着物を足首ギリギリまで縫い縮めさせた。



本当は足を出すロンパースのような物に したかったが江戸時代のこと

当時 女の子が足を出すなど考えられない事だった。

生後6ヶ月になると寝返りを始め すぐにお座りが出来るようになった。

さすがに一人では無理だが 座らせておくとしばらくはそのままの姿で

おもちゃを振ったりして遊ぶ。



この早い成長ぶりに正子は驚いた。

明らかに他の子供よりする事が早い。良く笑い活発な姫を家光も眼を細めて見る。

彼は仏間拝礼の後の小座敷に 良く愛姫を連れて来るようチサに命じる。

その時は正子が抱き 御前に出るのだが愛姫は人怖じせず家光にも笑顔を振り撒く。



「いとは良く笑うのぅ その笑顔がいい」と 親バカ丸出しの家光

三人の息子にさえ見せた事のない顔に 年寄り達は驚きを禁じ得ない。

また こういう事はすぐにお玉の方の耳にはいり

彼女の心はまた憎しみに燃え上がる。

徳松の脅威にならない姫といえど 家光の関心が徳松ではなく愛姫に

向く事 チサに向く事が腹立たしい。



離れているとはいえ 時おり聞こえる愛姫の子供らしい笑い声や

あやす女達の声が耳ざわりだった。 我が子徳松は4ヶ月早く

生まれたのにやっと寝返りを始めたばかり、、、、

それに対して愛姫はもうしっかりとお座りができハイハイをするかの

ように見えると お末達の話しを女中達が聞き込んでいた。



それを聞いたお玉は心中 穏やかではいられない。

飲ませている乳母の乳が悪いのではないかと勘繰ったり勘違いも

はなはだしい。それから間もなく お玉の所に徳松を連れて来るように

お達っしがあり お玉は喜んでお小座敷に向かった



幸い徳松は今 風邪も引いておらずお腹も下してなかったので

健康と言っていい状態だった。

乳母に抱かれて部屋に入ってきた徳松を見て笑顔になった家光の顔を

一瞬 影がさした。愛姫とはあまりに違う徳松の姿

すぐに笑顔の戻ったが お玉の胸は痛んだ。



「徳松 よう来た。父に顔を良く見せてくれ おうおうそなたの

 この眼は父上に良く似ておる。お玉 心して育ててくれ」

「はい 上様 若君はもう言葉らしきものを発っせられまする。

 ご利発なことと言ったら、、」と お玉は堂々と嘘を付いた。


「そうか それは楽しみな事じゃ 今度わしにも聞かせてくれよ」と

機嫌良く言った家光に 徳松は見知らぬ者と怖じけづいたのかぐずり出した。

「もう眠いのか 良い良い 下がれ お玉良い子じゃ」と

お玉達を下がらせた後 すぐに家光は中奥に戻ったが心は晴れなかった。

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