表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
チサと大奥  作者: 五木カフィ
134/150

おこうの宿下がりと縁談

こうして実家での気楽でいながら煩わしい1週間も過ぎてくると

大奥に戻る日も近づいてくる。

あの三人からは承知の返事があったらしく 母などは

「誰か気になった人はいなかったのか」と しつこく聞いて来る。

おこうは苦笑いして 自分には過ぎるほどいいお方ばかりだが

どこにも嫁ぎたくないの一点張りでふた親を悩ませた。



いかに大奥勤めであっても生涯 女一人で生きてゆくのは

容易ではないと説き伏せるのだが 聞く耳を持たず12日間の

実家暮らしに別れを告げ おこうはチサ達の元へ帰って来た。

「お帰り おこうさん」 「お帰り」みなから歓迎されてホッとひと息

肩の荷がおりたような体が軽くなったように おこうは感じた。



やはり私は この場所が一番落ち着ける。

「ねぇ ねぇ どうだった。どこへ行って来たの」

「どんなお芝居を見たの 美味しいものは食べた?」等々

口々に尋ねる女達に土産を渡し終えると お万の方に挨拶して

すぐに北の御部屋にいるチサの元へ、、、、



およのやかな江のいる部屋に向かった。

ちょうどチサは部屋付きの庭からの散歩から帰って来た所だった。

「あっ おこう 帰って来たのね」

「はい おチサ様 本日よりまたよろしくお願い致します」

「楽しかった? ご両親も喜ばれたでしょう」

「はい とても楽しい毎日でしたが おこうはやはりここが

 落ち着きます」



「まあ~本当にこの大奥がいいの?」と 聞いたのはかな江

彼女も来年 宿下がりするはずである。

「それは 親に会うのは嬉しいし 友達にも会えるのも楽しいけれど、、、、

 母がね。見合いとは言わずに偶然を装って顔合わせをするように

 仕組んでいたのよ三人も、、、、 煩わしくて」

「おこうの眼にかなった人はいなかったの」

興味津々と言った仕草で 聞くチサとおよの達



「かなうも何も 私は再三 母にはどこにも嫁ぐ気は無いと

 文で知らせてあるのに、、、、

 諦めが悪いというのか困ってしまいます」と 肩を落とすおこう

「でも 親御様の心配も分かるわ。 私には親がいないからいいけど

 おこうさんやかな江さんは年頃だもの」と とりなすように言うとかな江も



「お母様を悪く言うのはいけないわ。

 おこうさんは一人娘だから心づもりしていらしたのよ。

 それで三人共 気に入らなかったの?」

「そう思って見て無いし、、、気になる人は」 しばし考え

「いなかったわ」と あっさり



だが それから半月ほど過ぎた頃 おこうに一通の文が届いた。

母からの手紙として同封されていたのは

野口又四郎という最後に会った兄の友人の弟だった。

つまり母からの手紙は表書きだけであったのでおこうはビックリした。



内容は一度 お断りを受けたが自分としてはもう一度 お会いしたい

会って詳しく語り合いたい。 もし 少しでも気にかけてくれるなら

返事が欲しいと言うような事が 簡潔にしかし十分心を込めた言葉で

綴られてあった。

おこうは側に誰もいない時 それを読んだのだが正直 

初めはビックリしたもののそれほど悪い気はしなかった。男の人から初めて

もらったラブレターだからドキドキするのは今も昔も同じ事。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ