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チサと大奥  作者: 五木カフィ
124/150

竹千代君 毒殺未遂事件

「はい 決して他言は致しません。 それで犯人は分かったのですか?」

「犯人? 毒を盛った者の事か?」

「はい すみません。私の在所では犯人というものですから」

「さようか それはまだ分からぬ。 伊豆守様に知らせたによって上様も

 ご存知であろう。さればすぐに分かる事と思う」



事実 伊豆守はじめ医師 庭の者 等の手配により毒は金玉糖のすべてに

入っていた訳でなく 上段の3個のみに入っていた。

それによりお舂屋の者達の疑いは晴れた。 菓子を盛るのは別の者である。

竹千代が一番先に 手にするのだから上段に有らねばならないからだった。

二の丸の女中部屋で 一人のね女が懐刀で咽を突き自害しているのが

見つかったが 人知れず運び出された。



女は1年前に雇われたが 品が良く教養もあるのでお楽や佐和 

侍女仲間の信頼も厚く 側近くに勤めていたのだった。

それだけにお楽達の受けた打撃は大きかった。

その女の背後に何があったのかそれは おいおい明らかになるだろうが

お楽は気落ちして いつも怯えたような顔をして食欲も落ちていた。



お松は心配して

「お方様 庭の睡蓮がほど好く咲き揃いました。

 おチサ様にお目にかけてはいかがでしょうか」

お松の言葉にフッと胸を突かれたお楽は

「そうじゃ そうじゃ おチサ様に会いたい。

 そうか 睡蓮が咲いたか」と それにも気づかなかった様子。



あの事件があってからというもの 気の休まる時は無く気弱な

所が全面に出ていた。

二の丸御殿には長局の庭のような小さな池 泉水のような物ではなく

広い池があった。睡蓮は大きな池でなければ見応えがない。

二の丸は竹千代が住む為 改装して広くなったので おのずと庭や

池も大きかった。



夏の暑い日 水辺の花は心を和ませる。

お楽はすぐにチサに睡蓮見物に来てくれるよう使いを出した。

それだけで心が軽くなるから不思議であった。

もちろん 家光が来てくれた時も嬉しかったし 犯人が分かって

安心した時も嬉しかったのだが チサはお楽にとって別格だった。



二の丸からの呼び出しを今か今かと 待ちわびていたチサは

飛び立つような思いでお楽の元へ急いだ。

(かわいそうに、、 どんなに驚いた事だろう)

チサには小心者のお楽が 心に受けたショックが気がかりだった。



御殿の入口にはお松が迎えに来ていて チサ達の姿を見ると涙ぐみそうな表情

「お待ち致しておりました。 早うお部屋に、、 お方様が待ち兼ねて

 おられます」

「お松 こたびの事はそなたの手柄と うちのお方様から聞きました」

「いえ さような事は」と 謙遜してそれよりひと時も早くお部屋にとばかり

急ぎ足に、、 本当に忠実な心優しい侍女だった。

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