何故 私は過去の世界へ
「次にはポケットモンキーを送った。
これも成功した。 だが次に送ったチンパンジーは
どうしても向こうに着かなかった」
「キャー」
思わず悲鳴を上げるチサ 次第に老人の言う事が真実味を
おびて感じられ 恐ろしさに身がすくむ。
「どこに行ったかどうなったか今でも良く分からない。
きっとタイムマシーンにでもなって未来の国にでも
行っているのだろう」
「やめて やめてよ」
「だが失敗したのはその1回切りなんじゃよ。
それからまた改良を重ねて次にチンパンジーを送った時には
無事に着いたし、大型犬のコリーを送った時も成功した。
そうして10日前 ついにゴリラを送った。
人間より大きなゴリラだ。 いいか 人間より大きなゴリラだ。
それをこの家まで一目に付かずに運ぶのにどれだけ苦労した事か。
でも そんな事はどうでもいい
ゴリラも無事成功したんだ。北海道に着いたゴリラは
キョトンとして頭をかいとったそうだワハハ ハハ~
人よりも大きなゴリラでも上手く行った。
残るのは そうさ 人間だ。
いよいよ人間で試す時が来た」
「いや~ きちがい やめて 出してよ~」
「出す訳にはいかん やっと上手くワナにかかった貴重な人間じゃ
なぁに 心配する事はない。3分足らずで北海道に着くよ。
そうしてまた ここに帰って来れるんだ」
言うなり 老人は作動スイッチらしき物に歩み寄った。
「やめて お願い 出して ああ お母さ~ん」
チサは周りを叩いたり蹴ったりして見たが、もとよりドームは
ヒビさえ入らなかった。
「では 成功を祈って」
ついに老人がスイッチに触れた。
そうして哀願するチサを尻目に無表情で力いっぱい押した。
同時に微かなうなり声のような音で回りだすドーム
「ああっ やめて お母さ~ん お父さ~ん」
叫ぶチサの姿は次第に薄く消えてゆき やがて見え無くなってしまう
恐ろしい事が起こった。 春 三月 ある日の午後だった、、、、、