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第7話 紅蓮の剣士



 

 朝の登校時間、龍也は頭を押さえながら学園までの道を歩いていた。




龍也「いっててて・・・あのクソジジイ本気でぶん殴りやがって・・・」



エマ「おっはよう!龍也」



エマ「ん?どうしたの?」




 元気な挨拶と共に首へと抱きついて来たエマは龍也の頭にタンコブが出来ているのに気づく




龍也「ああ、今朝寮の前でボルスに会ってな、昨日の飯持って行くの忘れててよ、怒りのゲンコツ喰らった」



エマ「へ〜、石頭の龍也にタンコブ作るなんてやっぱ凄いねボルス先生」



龍也「あのジジイ生身でもかなり強いな・・・」



エマ「そりゃ学園最強の魔導士だもん当然だよ、それだけじゃなくて王宮でも一目置かれてるしね」



龍也「あいつに勝つにはもっと強くならねぇとな」



エマ「龍也はボルス先生に勝つつもりなの?」



龍也「当たり前だろ、この学園で一番強いならそいつを倒せば俺が一番だ」



エマ「変わってるよね〜、腕試しに教師と戦いたがる生徒は多いけど、ボルス先生としかも勝とうとしてるのなんて龍也ぐらいだよ」



翔吾「おっはようさん!、何の話ししてたんだ?」



龍也「ああ・・ボルスに挑むためにももっと色んな強い奴と戦いたいと思ってな」



翔吾「ボルス先生と!?、へー物好きだな」



エマ「ね〜、変わってるよね」



龍也「うるせぇな!誰かいい奴居ないのかよ!」



エマ「そうは言ってもな〜」



翔吾「どうしてもって言うなら監督生や風紀委員に入るってのはどうだ?」



龍也「冗談だろ?、あんな堅苦しい奴らの仲間なんか死んでもごめんだね!」



エマ「だよね〜、あたしもそんな龍也想像出来ないし・・」



龍也「ああ!それに昨日だって・・・」



龍也「あん?」クルッ




 不意に視線を感じ後ろへと振り返る




エマ「ん〜?どうしたの?」



龍也「いや・・・変な気配を感じてよ・・・」



翔吾「変な気配?」




 だが振り返っても誰も居なくエマと翔吾に手伝って貰ったが気配の正体は見つからない




龍也「気のせいか?・・・」



翔吾「まぁいいや、それよりも二人とも面白い話が・・・」








 三時限め龍也達一年A組は翔吾のクラスのB組と共に体育館での合同授業を行なっていた。




ボルス「えーではこれより魔法実技の授業を始める、今日のテーマは『符呪』と『武装』じゃ」



エマ「お!あたしが得意な奴だ」



ボルス「皆の知っての通り『符呪』は我々にとって基本中の基本の初級の魔法じゃ」




 簡単な説明とともに右腕に炎を符呪する。




ボルス「そして『武装』は『符呪』を応用した中級の魔法じゃな」




 右腕の炎を変化させて籠手の形へと変える。




ボルス「中級とは言っても符呪が出来ればそこまで難しい魔法では無い符呪は皆できるようじゃし武装の魔法も一緒にしてしまおうか」

 


ボルス「よいか大事なのはイメージと集中じゃ、しつかりとしたイメージであればある程強い物になる」






 龍也はエマと翔吾の三人でグループを組み魔法の練習を開始する。




エマ「符呪!、武装!!」




 得意と言うだけあってエマはいとも簡単に足に纏った電撃をブーツの形へと変化させる。




ボルス「おお!よく出来ておるのエマ!・・それに比べて・・・」



翔吾「符呪!・・武そ・・ああ!!」




 翔吾は腕に纏われた風が籠手の形へと変わろうとするが途中で風が乱れ形が崩れてしまう。




龍也「符呪!・・・・・、っち!!」




 しかし龍也は翔吾とは違い作り出した炎に動きがなく変化すらしない




ボルス「お主達は全然じゃの・・翔吾の方は惜しいが龍也は全く出来ておらんな」



龍也「うるせぇな!、つかこんな魔法いらねぇだろ!、符呪してぶん殴れば終わりだろうが!」



ボルス「甘い、符呪よりも武装の方が威力も高く魔力の消費量も少ない、さらに色んな状況に役立つ、使いこなせれば実戦でこれ以上に頼りになる魔法は無いわい」




 そう言いながら炎で作り出した籠手を剣、槍、斧、弓、鎖、などと様々な形へと変化させる。




ボルス「こんな風に様々な形へと変わる」



エマ「じゃあ、色んな武器を使えれば凄い強くなれるよね」



ボルス「そうじゃな・・昔はこう言った魔法は邪道とされてきたがのぉ」



龍也「邪道?何でだよ」



ボルス「昔は魔導士が仲間から守って貰い遠くから援護するというのが基本じゃった、だからこそ魔導士が前面に出る戦法は邪道とされたのじゃ」



翔吾「ふ〜ん」



ボルス「まぁ魔法には向き不向きがあるがそれにしてもお主はかなり素質が低いの〜」



龍也「うっせ!」




 周りを見渡すとほとんどの生徒が次々と武装の魔法を成功させていく、ボルスのいう通り符呪が出来る生徒ならば結構簡単なようだ。




ボルス「お主はただ力任せに魔法を放っておるだけじゃ、もっと細かいイメージを持ってじゃな」



龍也「あーもう!細かくとかイメージとか俺の趣味じゃねぇんだよ!」




 二人が言い合いを始めようとしていると




龍也「!!」




 突然龍也の方へと紅い刃が飛んで来る。




龍也「おらぁ!!」


 ガキンッ!



 龍也は自分へと向かって来る刃を片腕で弾き落とす。




龍也「誰だコラァ!」




 弾き落とすと共に刃が飛んで来た方に向かって怒鳴る、龍也の怒声に周りの生徒達は竦んでいる。


 その中を一人と女子生徒が龍也の方へと向かって来る。




紫苑「わたしだ、すまなかったな、手が滑った」



龍也「ああ?てめぇか・・・」




 悪びれた様子のない紫苑の態度に睨みつけながら距離を詰めて行く




龍也「てめぇ・・何の真似だ?」



紫苑「言っただろ?手が滑ったのだ」



龍也「ざけんな!偶然であんな的確に急所に飛んで来るかよ!」



紫苑「それは運が悪かったな」



龍也「てめぇ・・!」


 ガシッ

 


 どこか人を馬鹿にした態度に苛立ち胸ぐらを掴む


 ザワザワ ザワザワ


 前日の決闘で紫苑が監督生の一員であると知っている生徒達はその光景にざわつく




エマ「た、龍也!不味いよ監督生相手に!」



翔吾「離れろって!、龍也!!」




 このままでは監督生を敵に回す事になるのを恐れた二人が無理矢理に引き剥がす。




ボルス「紫苑・・これは決闘の申し込みという事で良いのか?」



紫苑「まさか、先程も言いましたよ、ただ《《手が滑った》》だけだと」



ボルス「・・・・・」



紫苑「・・・・・」



ボルス「・・・・・わかった、皆授業再開じゃ!ただの事故じゃよ」




 ことを荒立てないようにすぐさま皆を授業へと戻す、紫苑も踵を返し自分のグループの元に戻ろうとする。




龍也「おい」



紫苑「・・・なんだ?」



 龍也の声に足を止める。



龍也「喧嘩売りたいなら堂々とこいや、逃げも隠れもしねぇよ」



紫苑「・・・・・ああ、次はそうしよう」ニヤリ




 ニヤリとほくそ笑みグループの方へと戻って行くのを龍也は無言で見つめている。




エマ「あーびっくりした!、神上ってB組だったんだね」



翔吾「ああ、おかげで俺もやりづらいぜ」



龍也「あいつ・・・ん?」




 右ポケットに違和感を感じて手を突っ込んでみる、するとそこには細く結ばれた一枚の紙切れ



 









 放課後、学園の中に存在する道場の真ん中で紫苑は座禅を組んでいた。



紫苑「・・・・・」



 彼女以外に誰も居なくただでさえ広い道場がより広く、より寂しく感じる。


 ドゴンッ!


 そんな静かな道場の扉が大きな音と共に蹴破られる。


 蹴破られた扉がもの後ろからすごいスピードで紫苑へと向かって飛んで来る。



紫苑「はっ!」


 ズバッ!



 紫苑へとぶつかると思われた扉が真っ二つとなり床へと落ちる。



紫苑「やれやれ、静かに入れんのか?」



龍也「やられた分は倍返さねぇと気が済まなねぇんだよ」ポキポキ



 壊れた入り口から指を鳴らしながら龍也が入ってくる、紫苑も立ち上がり向かい合う



紫苑「ほう、ちゃんと一人できたのだな」



龍也「たりめぇだ、てめぇなんか俺一人で十分なんだよ」



 ポケットから先程の紙を取り出す。


 紙にはこう書かれていた。



 『果たし状、今日の放課後学園内の道場にて決闘を申し込む、ただしこの勝負は非公認である為一人で来るように、怖いのであれば破るべし』



 紫苑はこの紙を龍也が胸ぐらを掴んだときにポケットへと忍びこませたのだ。



龍也「随分しょうもねえ小細工してくれるじゃねぇか」



紫苑「すまなかったな、しかしわたしにも事情があってな全力を出す為だ許してくれ」



龍也「全力?、なら今日はあのしょうもないお遊戯を見なくて済むんだな」



紫苑「ほう・・気付いていたのか、なら話は早いすぐにでも始めようか!」




 紫苑は懐からキューブを取り出す、しかしその色は龍也の持つものとは違い赤色であった。




龍也「ん?なんだそれ」



紫苑「お前もわたしも炎の魔導士だ、ならばそれにふさわしい戦場に招待しようと思ってな」




 キューブのスイッチを入れて床へと放る、するとキューブが光を放ち龍也と紫苑を包む。


 いつもならば周りの道場が紫色へと染まっていただろう、だが今回は違った。




龍也「どこだ此処?」




 光が収まると同時に目に入ったのはゴツゴツとした岩だらけの空間、先程まで室内に居たのにも関わらず青い空が広がっている。


 何よりも一番特徴的なのは巨大に聳え立つ山である。


 その山と周りの岩から伝わってくる熱気に火山だということが予想できる。




龍也「火山?なんで・・」



紫苑「わたしが今使ったのは《バーンキューブ》と言ってな火属性の魔導士に有利な空間を作りだす特殊なキューブだ」


紫苑「火山から伝わって来る熱気、それがわたし達の魔法をより強くする」


紫苑「逆に水属性の魔導士などは弱体化するがな」




 紫苑の言う通りこの場所にいるだけで身体中の魔力が強くなるのを感じる。




龍也「面白れぇ!始めようじゃねぇか!」




龍也「"燃えろ魂"!!」


紫苑「"斬り裂け紅蓮"!!」




 掛け声と共に紫苑の首の後ろに龍也と同じ赤い魔法陣が展開され両眼を赤く染める。




紫苑「符呪!、武装!!」




 両手に炎を宿し一つへと纏める、すると二つの炎は長く伸び刀剣の形へと変化する。




紫苑「《炎刀・紅鷹》!!」




 炎のように紅い刀身に赤い柄、そして黒い鍔の刀を作り出した。





紫苑「《鳳化凜月流》の力とかと味わえ!」



龍也「御託はいいからとっととかかってきな!!」



紫苑「はぁ!!」


龍也「おらぁ!!」





 紫苑が刀を構えて向かって来るのと同時に龍也も右腕に炎を纏い突っ込んでいく


 ガキンッ!


 炎の拳と炎の剣がぶつかり合う、武装と符呪、魔法の威力では紫苑の方が上だ、だが




龍也「おおおおおお!!!」



紫苑「なに!」




 紫苑の体が浮き後ろへと飛ぶ、素早く受け身をとり転倒を回避する。




紫苑「ははは!いいぞ天ヶ瀬!期待していた以上だ!、魔法のランクではわたしが上まっているのに対して単純な腕力でわたしの上をいくとはな」




 予想していたいた以上のパワーに喜んでいる紫苑へと距離を詰め殴りかかろうとする。




龍也「笑ってる余裕があんのか?」



紫苑「あるさ、炎斬(えんざん)!」




 近づいて来る龍也へと前回の美月との決闘で使用していた炎の斬撃を飛ばして来る。


 飛んで来た炎の斬撃を両腕をクロスさせてガードする。




龍也(くっ!、あの時とは全く違うな!!)




 しかしその威力は前の決闘よりも圧倒的に高くガードした龍也の体は後ろへと押されつつも受け止める。




紫苑「流石に防ぐか、ならこれならどうだ?」


紫苑「火炎連斬(かえんれんざん)!!」




 全力の一撃を受け止めた龍也へと今度は炎斬の連撃を放つ、一発を受け止めて動きを止めている龍也は回避が出来ず体を固めて防御態勢に入る。


 炎斬の連撃が龍也を呑み込み巨大な爆発を起こす


 爆発の中龍也がどうなったのか様子を見ていると




龍也「爆龍砲(ばくりゅうほう)!!」



紫苑「!!」




 立ち上った煙を突き破りながら熱線が紫苑へと直撃し紫苑の繰り出した魔法以上の爆発が彼女を巻きこむ。




龍也「はっ!、こんな温い炎が俺に効くかよ!」




 爆煙の中を殆ど無傷で歩く




紫苑「だろうな・・」



龍也「!!」




 しかしそれは紫苑も同じ龍也の砲撃を意に返さず、煙を切り裂き姿を表す。




龍也「てめぇ・・効いてねぇのか?」




 溜めの少ない威力よりも速さを目的とした砲撃だったが流石に無傷なのは想定外であった。




紫苑「?、何をおどろいているんだ?」


紫苑「火属性の魔導士に火属性の魔法が効きづらいのは当然だろう」



龍也「え?」



紫苑「普段から何千何万度といった炎を見に纏っているんだ、熱への耐性が出来ているのは当然だろう」


紫苑「魔導士が同じ属性の魔法が効きづらいなんて事は小学生で学ぶ事だぞ」



龍也「それぐらい知ってるわ!、ちょっと驚いただけだ!!」(知らなかった・・・)



龍也「ならどうすんだ?、勝負がつかねぇんじゃねぇのか?」



紫苑「おかしな事を言うな天ヶ瀬」



龍也「あん?」



紫苑「お互いに炎の魔法が通じないのだ・・・ならば・・・」




 刀の切っ先を龍也へと向ける。




紫苑「『武』(コレ)しかあるまい!」



龍也「くっ!」(速いっ!)




 構えると同時に踏み込み炎を纏った剣を上段から振り下ろす。


 ガキンッ!


 両腕を頭の上で組み剣を素手で受け止める。




紫苑「同じ属性の魔導士がぶつかり合った時、勝負を決めるのは極めた武だ!!」


紫苑「純粋な魔導士はそれを邪道と呼ぶが、強き者との戦いを楽しめるのなら邪道で結構!!」



龍也「ちっ!」




 そのまま上段、下段、胴、突き、といった剣撃を繰り出す


 スピードは翔吾よりも遅く見切り両腕を使って防ぎつつ龍也も反撃とばかり殴りかかるが後ろへと飛びながら回避する。




紫苑「わたしは待っていたのだ!、わたしと同じ属性であり、わたしと同じ様に鍛え上げた、お前のような男を!!」




 刀に纏う炎をより強くし、より強い力で地面を踏み込み上段から斬り掛かる。




紫苑「さぁ!、わたしを燃えさせろ!!」


龍也「爆裂突破ばくれつとっぱ!!」



 炎の剣と炎の拳がぶつかり合い火山のふもとで巨大な爆発が再び巻き起こる。






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