第3話 蒼雷の女
ワイワイ ガヤガヤ
ガラララ
龍也「・・・・・・・・」スタスタスタ
シーン
登校時間、担任がやって来るまでの時間を皆が楽しく談話していたが龍也が入って来た瞬間皆の声は止まった。
龍也は昨日の戦いの圧倒的な強さとその威圧感に皆に避けられていた。
龍也「・・・・・」ドサッ
ヒソヒソ ヒソヒソ
龍也が席に座ると同時に龍也の方をチラチラと見ながら小声で話しているのが見える。
逆に龍也が見返すとすぐさま目を晒し関係ないふりをする。
龍也(ちっ!、やっぱこの間やり過ぎたのは失敗だっか・・・)
前回の決闘で厳つい見た目に乱暴な戦い方そして圧倒的な実力が知れ渡りクラスこ全員からは恐怖の対象となっている。
そのせいかあれから数日経っても誰も挑んで来なく、自分から挑もうとすれば逃げられる始末
龍也(くそ、どうする?、ボルスに挑むにはまだ早い・・だが腕を上げるにも)イライラ
今後の計画を考えてみるが良い案が浮かばず険しい表情になり、その表情に更に怖がられるのであった。
「ねえ、ちょっと良い?」
龍也(こうなったら手当たり次第に殴り飛ばして無理矢理・・・)ブツブツ
龍也「あん?」
あまりにも頭が回らず危険な思考になりかけた所で自分を呼ぶ声が聞こえて思考が止まる。
自分を呼んだのは紫色の短い髪の小柄な女子だった。
「やっほー!、初めましてアタシの名前はエマ、《エマ・ウィンストン》だよ」
龍也「・・・あっそ」
エマ「がく!・・ちょっと〜名乗られたら名乗り返すのが礼儀でしょ!」
龍也「知らねえよ、お前が勝手に名乗ったんだろ・・・」
エマ「まったく・・・まぁいいや、ねぇ良い話が有るんだけど聞かない?」
龍也「聞かない」キッパリ
手前の椅子に龍也の方に向き直るように座りながら何か提案をしてくるが即答で拒否される。
エマ「いや、早いって!少しは話を聞いてよ」
龍也「嫌だね、んないかにも怪しい話誰が聞くかよ!」
話は終わりとでも言うようにエマを無視して窓の方を見る。
エマ「好きなだけ暴れられる方法があるわよ!」
龍也「なに!?」
エマ「気になるなら今日の放課後に職員室に集合ね?」
龍也「・・・・・、わかった」
エマ「んじゃ後でね♪」
ウィンクをして席へと戻って行くエマ、そんな彼女を不思議そうに見つめるのであった。
そして放課後エマの言葉が気になり授業に身が入らず(普段からやる気無い)ホームルーム終了と共に約束の場所へと向かう
龍也「ここだな・・アイツは・・・まだ来てないのか?」
周りを見渡すがエマの姿は見えない、以外と生徒の数が多いのが気になる。
龍也(なんで職員室にこんなに生徒が居るんだ?そんなに勉強がしたいのか?)
ボルス「ん?なんじゃ、此処には似つかわしくない男がいるな」
龍也「げっ!、ボルス・・・」
龍也にとって一番会いたくない人物が小馬鹿にしながら現れる。
ボルス「なんじゃ小僧、迷子にでもなったのか?此処は教師の仕事場じゃぞ!」
龍也「知ってるわ!、クラスの奴と約束があるんだよ!!」
ボルス「ん?お主のような不良に友人が出来たのか?一体どんな物好きなんじゃ」
龍也「てめぇ・・!好き勝手に!」
エマ「おーい、龍也!」
いちいち小馬鹿する態度を見せるボルスを今にも殴り飛ばしてやろうかと拳を握り締めた時、待ち人がやって来た。
ボルス「ん?おお!エマか、もしかしてお主がこいつの友人か?」
エマ「そだよ〜!、さっき仲良くなってね、クエストの事教えてあげようと思ってさ!」
龍也「おいコラ、誰が友人だ!」
エマ「照れない照れない!」
ボルス「照れるな照れるな!」
エマ、ボルス「「あっはっはっは!!」」
龍也(こいつら、ぶん殴ったら駄目なのか?)
龍也「んで、俺を呼んだ理由は?クエストとか言ってたが」
エマ「そうそう!龍也って強い人と戦う為にこの学校に来たんでしょ?」
龍也「まあな・・・って!なんで知ってんだよ!!」
エマ「ボルス先生が言ってたよ?」
ボルス「いえ〜い♪」
龍也「ぶっ飛ばすぞ!クソジジイ!!」
エマ「まあまあ、落ち着いて!でも何でなの?」
龍也「ちっ!、正しくは強くなる為に来たんだよ・・それには強い奴と戦うのが一番手っ取り早いってだけだよ!」
ボルス「初日に暴れたせいで皆から避けられて、決闘を受けてもらえ無いのでは本末転倒じゃがの」
龍也「うっせぇ!!」
エマ「でも強くなるのが目的なら生徒相手じゃ無くても良いよね?」
龍也「まぁ・・そうだな・・・」
エマ「ならこれ行こうよ!」
そう言いながら職員室の前にある掲示板を叩く、そこにはたくさんの紙が貼られていた
エマはその中から一枚を取り出し龍也へと渡す。
エマ「ここの掲示板にはいろんな依頼があって成功したら成績も良くなるし報酬の半分も貰えるんだ」
龍也「モンスター退治か・・なるほどな、少なくとも何もしないよりはマシか」
エマ「明日は休みだし、アタシも一緒に行ってあげるよ!」
龍也「まてよ!、なんでお前と一緒に行かなきゃ行かないんだよ」
エマ「クエストを受けるにはパーティを組んで先生に申請する必要があるの、一人だけじゃ許可して貰えないよ?」
ボルス「そうじゃな、クエストは訓練とは違う、何が起きるか分からない実戦じゃ、例えお主でも最低一人は一緒に行かねば許可は出来んよ」
先程の小馬鹿にした言い方では無く真剣な言い方で話すボルス、なんだかんだこの男も教師なんだと言うことが分かる。
龍也「だったら、お前以外と・・」
エマ「誰か一緒に行ってくれるの?」
龍也「・・・・・」
エマ「・・・・・」
ボルス「・・・・」
龍也「・・・じゃ、邪魔すんなよ・・」
エマ「はーい♪」
ボルス「ほっほっほ!」
次の日の休日、龍也とエマは依頼の内容に書かれていた所へとやって来た。
龍也「意外に近いな・・」
エマ「まぁね、アタシたち一年生だから遠出のクエストは受けれないからね」
龍也達は学園からすぐ近くの森へと到着する。
龍也「ここで良いのか?」
エマ「うん、ここに居るモンスターの素材が欲しいんだってさ、ほらいたよ!」
そう言いながら指差した方には一本の大木へと群がる、無数のクモのような魔物である。
龍也「おいエマ、危険な魔物って言わなかったか?」
エマ「う〜ん、危険度はクエストによって違うからな〜紙にはある程度の事しか書いてないから、どんな物かは受けてみないと分からないし」
内容の紙には危険と書いてあるが、実際にいたのは数は多いがあまり大きくない小型の魔物だ。
ゴーレムクラスの魔物を予想していた龍也はガッカリしている。
龍也「はぁ・・まぁいいか、こういった敵との戦いも覚えておかないとな・・邪魔すんなよ」
エマ「はいはい、アタシはここで待ってるね、素材が目的だから焼きすぎないようにね!」
龍也「わかってるよ!」
エマが少し離れたところで待機し木へと向かって行く
龍也が木に近づくと同時に魔物達も龍也の存在に気づき襲いかかって来る。
『ゲギァ!』『ゲギァ!』『ゲギァ!』
龍也「おらぁ!どらぁ!でりゃあ!!」
裏拳、手刀、回し蹴り
鋭い爪を突き立てに来るた魔物達の頑丈そうな装甲ごと粉砕する。
『ゲギァ!!』
更に上空から無数の魔物達が落りて来る。
龍也「爆・裂・太・鼓!!!」
ドッドッドッドッドッドッドッド!!!!
雨のように降って来る魔物達を両手に炎を纏った連打で撃ち落とす。
シュルルルルルルルルルッ!
龍也「ぬ!」
全ての魔物を撃ち落とした龍也に何重もの糸を絡みつかせ動きを制限しようとする。
龍也「ハァァァー!!」
だが龍也は全身を炎で包む、その炎が絡み付いている糸に引火し糸を吐いている魔物ごと焼き尽くす。
エマ「これならすぐに終わりそうね・・時間余りそうだし町にでも・・」
クエストを終えた後に遊びに行く事を考えていると
龍也「ん?・・!、おいエマ後ろだ!!」
突然龍也がこちらに向かって来るのが見える。
何かと思い後ろを振り向いてみると・・
『ゲギァ!!!』
巨大なジュモン・スパイダーが木の上からこちらに向かって巨大な爪を突き刺そうとしているのが見える。
そうジュモン・スパイダーは小さい自分の分身を囮にして獲物の不意をつく魔物なのだ
エマ「あ・・・」
ドスッ!
気づいた時にはもう遅かった、鋭い巨大な爪がエマの胴体へと突き刺さる。
『ゲギァ!ゲギァ!ゲギァ!』
龍也「エマ!!、てめぇ!!!」
エマを突き刺したまま次はお前だとでも言うように笑っている魔物に、拳に怒りを込めて殴りかかろうとした時
バチバチバチッ・・・
『ゲギァ?』
ズゴーーン!!!
龍也「うおっ!!」
『ゲギァァァァァァァ!!!!』
爪に刺さったままのエマの体が消えて雷が魔物の体を感電させる。
エマ「あっぶないわね!!、死んだらどうすんのよ!」
散らばった雷が一箇所に集まりエマの体を作り出す。
龍也「お、おい!大丈夫なのか?何なんだ今のは?」
エマ「ああ、あれ?、あれはアタシの得意な生体変化の魔法よ」
この世界の人間の体は魔力によって作られている、生体変化の魔法は自分の体の実体を無くし、自分の属性の魔力へと変化させる魔法だ。
火属性の龍也なら炎へ、雷属性のエマなら電気へ体の物質を変えて物理攻撃を無効化してしまう高度な魔法だ。
龍也(生体変化はタイミングもコントロールも難しい高度な魔法だ・・それをあんな咄嗟に使えるとは・・・)
エマ「痛くは無かったけどすっごいムカついたわ!、龍也!コイツはアタシがやるわ!」
龍也「・・・、いいぜ!やってみろよ」
先程の一連の動きでエマの実力が気になった龍也は大物を譲る事にした。
龍也から了承を得たエマはようやく痺れが取れて立ち上がろうとしている魔物へと向き直る。
エマ「"迸れ蒼電"!!」
エマの左脚に青い魔法陣が出現し両眼が青く染まる。
エマ「符呪!!」
エマの両脚に蒼い雷が纏われる。
エマ「武装!」
脚を覆う蒼い雷が形となりブーツの形をした武器を作り出す。
エマ「ライトニングブーツ!!」
龍也(武装の魔法まで使えるのか)
武装とは符呪の魔法をより強化し魔法で出来た武器を作り出す魔法である、ちなみに龍也は使えない
エマ「いっくわよ!」
『ゲギァ!!』
ブーツを装着し魔物へと突っ込むエマに口から針を飛ばし牽制する。
エマ「はっ!」
『ゲギァ!?』
だがエマが足に力を入れた瞬間彼女の巣が消える。
エマ「どこ見てんのよ!」
消えたと思われていたエマは既に魔物の頭上にいた
龍也(速い、俺もスピードには自信があるが、アイツはそれ以上だ)
龍也には彼女動きが目で追う事はできたが恐らくついて行く事はできないだろう。
エマ「ジェノサイド・ギア!!」
高速回転の雷撃を纏ったかかと落としが魔物を地面へと叩き落とす。
『ゲギァ!?』
魔物がエマに気づく頃には既に地面に倒れ伏していたためなにが起きたか分からず混乱しているようだ。
『ゲギァァァァァァァ!!!』
『ゲギァ!』『ゲギァ!』『ゲギァ!』
叫びと共に大量の分身を作り出してくる、エマのスピードに焦ったのか数で倒そうと考えたようだ。
エマ「上等!かかって来なっての!」
何十体もいるジュモン・スパイダー達が一斉に襲いかかって来る、エマも構えて迎え撃とうとするが
龍也「爆龍砲!!」
ドッドッドッドゴーーン!!
『ゲギァァァァァ!!!!』
龍也の放った砲撃が小型の魔物達をなぎ払い撃破していく
エマ「ちょっと龍也!任せてくれるんじゃないの?」
龍也「悪いな!お前の戦いぶりを見てたら熱くなっちまってな!《《チーム》》プレイでいこうぜ!」
エマ「!・・・だね!、一緒にやるよ!!」
エマの実力を認め一緒に戦う事を提案する龍也
エマも龍也が自分をチームとして認めてくれたのが嬉しく魔物への怒りは無くなり共に戦う事に賛同する。
『ゲギァ!!』
前方に居た魔物は倒したがまだまだ数は多い、残りの魔物達が二人に向かって大量の針を撃ち出して来る。
龍也「任せな!」
体が頑丈な龍也がエマの前に出て盾となる
無数の針が体へと直撃するが龍也は全く痛そうにしない、それどころか直撃した針は龍也の頑丈な皮膚と筋肉に弾かれ地面へと落ちる。
エマ「ちょっとごめんね!」
龍也「ふげっ!」
龍也が盾となっている間に魔力を溜めたエマは龍也を踏み台にして大きくジャンプする
魔物達の真上に飛んだエマは両脚に魔力を込めて真ん中に居る魔物へと落ちて行く
エマ「サンダー・パイル!!!」
ドゴォーーーーン!!!
蒼い雷撃を纏ったエマが魔物を踏み潰し、エマを中心に雷が広がり小型の魔物達を飲み込んでいく
飲み込まれた魔物達は全身を焦がし絶滅する。
『ゲギァァァァ!!!』
自分の分身を全て倒されて聞き怒りを表してエマへと糸を吐き出す。
龍也「符呪!!」
炎を纏った右腕で糸を受け止める、龍也の炎が引火し魔物ならダメージを与える。
龍也「今だ!やれ!!」
エマ「了解!」
龍也が魔物を逃さないように糸を握り締める、その隙を見逃さず両手からの電撃を空へと放つ
放たれた雷撃は雲へと当たり雷雲へと変化させる。
エマ「レイジング・ストーム!!!」
ズゴーーーーーン!!!!
『ギャァァァァァァァァァァ!!!!』
雷撃を増幅された雷雲から降り注いだ落雷が魔物を貫く
蒼雷の槍が全身を焦がし悲痛な断末魔をあげ絶命させる。
エマ「くぅ〜!痺れるねぇ!」
龍也「こっちの台詞だっての・・」
エマ「あれ?龍也どうしたの?」
エマが初連携に歓喜の声を上げていると全身から煙を出している龍也がいた。
龍也「お前の電気が当たったんだよ!!、コントロールしろよ!」
エマ「あ、そうなんだゴメンね!アタシもコンビネーションって初めてだから」
龍也「ったく!・・まぁ俺ももっと早く退くべきだったな」
エマ「そうだね、もっと練習しないとね」
次は誤爆し無いようにこれからの連携の話をするのであった。
龍也「そう言えば素材はどうなった?」
エマ「あ・・・」
魔物達を見てみると張り切りすぎたエマの魔法で跡形も無く消し飛んでいた。
エマ「・・・・・てへ♪」
龍也「てへ♪・・・じゃあねぇ!!」
こうして龍也とエマの初チームクエストは大失敗に終わったのだった。