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プロローグ



『世界竜の伝説』


かつてこの世界には白く美しい竜がいた。


竜は人々を守り魔力を与え超人へと進化させた。


人もまた竜から与えられた魔法を駆使して信仰し崇めた。


ある日竜は死んだ、人が殺したのか、魔物が殺したのかそれは分からない。


だが竜は死ぬ時に己の屍を肥料として一本の樹を生み出した。

 

やがて樹は大樹となり高純度の魔力を含んだ『世界樹』と呼ばれるようになった。


 この世界の人なら誰もが知っている物語









 ドガーン!!



 美しい緑に満ちた森の中で大きな爆発が起こる。


 

 「・・・・・・・・・」



 そんな爆発の中を一人の少年が駆ける。


 少年と言うには180センチの背丈と太く逞しい大人顔負けの体格であり、学制服らしき服装を袖をまくり、シャツを出し、ネクタイをつけない乱暴な着こなしであった。


 服装と同じく厳つく鋭い目をしている、しかも左目には大きな傷があり琥珀色に染まっていた



 「おらぁ!!」


 『グギァ!!』



 豪快な掛け声と共に厳つい少年が爆発を起こしている巨大なトカゲのような生物を殴り付ける。


 その巨大な身体と強固な鱗はあらゆる攻撃を弾いてしまいそうだったが、少年の拳は意図もたやすくトカゲの脳天を粉砕する。



 『ガキャ!!』 『グルル!』



 トカゲの仲間らしき怪物達が怒りを露わにし、少年に向かって火球を放つ、小規模の爆発だが人間一人を殺すには高すぎる威力だ。


 その火球を二発三発と繰り出していきドンドン数を増やす、例えどれだけ鍛えていてもこんな爆発に巻き込まれたのではひとたまりもない



 普通の人間ならば・・・・



少年「ぬるいぞ・・・」

 

 『グゥ!?』『ゲギャ!?』

 


 爆発の炎の中をゆっくりと歩く、足、顔、胴体、どこに受けても怯まず怪物達の方へと向かって行く


 その威圧感に怪物達の方がビビってしまう



少年「炎ってのはこうやんだよ!!」


少年「"燃えろ魂"!!」

 


 右腕を振り上げ大きく叫ぶ、すると少年の右拳に赤い魔法陣が浮き出てきて黒い右眼が赤く染まる。



少年「符呪エンチャント!!」



 符呪の詠唱と共に右腕が炎に包まれる。



少年「おらぁ!!!」



 助走をつけ高く飛び上がり怪物達に右腕を叩きつける、だがあまりにも直線的過ぎる動きゆえ怪物達も動きを先読みし避け、地面へと直撃する。


 ・・・・が



 『ゲギャ?!』 『グギァ!?』



 ドゴーーン!!!



 少年が殴った地面が爆発を起こし辺り一帯を吹き飛ばす、爆発に巻き込まれた怪物達は跡形もなく消滅する。


 爆発の後に残っていたのは拳を割れた地面へとめり込ませている、少年一人だけ



少年「フン!」



 拳に付いた土を手首をスナップさせ払う



 『ガウッ!!』


少年「!」



 トカゲの怪物を撃破し、ひと段落したところを巨大なオオカミがの群れが背後から迫る。


 迎撃しようと振り向いた時・・・



 バチバチバチッ!! ドゴーーン!!!



 『ギャァ!!』『グギァ!!』『ガアァ!!』『ギャァ!!』



 オオカミの群れを青い閃光が貫く



少年「ちっ!余計な事すんな《エマ》!!」


エマ「なによ〜せっかく助けてあげたのに」


少年「んなもん無くてもなんとか出来たっつうんだよ!」


エマ「まったく、素直にありがとうの一つぐらい、いいなって《龍也たつや》!」



 龍也と同じ制服ではあるが女子の制服のスカートではなく短パンを履いた紫色の短い髪の小柄な少女が現れる。


 エマと呼ばれた少女が龍也に近づこうといた時、森の中からオオカミ達が先ほどよりも数を増やして現れる



龍也「鬱陶しい奴らだ!」


エマ「アタシがやるわ!いいでしょ♪」


龍也「あ?、なに勝手なこと…」


エマ「約束でしょ!忘れたの?」


龍也「ちっ!早くしろよ!」


エマ「はいは〜い♪」



 距離をとって様子を見ているオオカミ達に向き直り膝を上げて戦闘態勢をとる。



エマ「"迸れ蒼電"」


エマ「符呪!、武装アームド!!」



 エマの左太股に青色の魔法陣が現れ、両眼が青色に染まる。


 彼女の両脚を青色の電撃が纏う



エマ「《ライトニング・ブーツ》!!」



 纏われた電撃は形を変え青色のブーツの形をした武器を作り出す。



エマ「いっくよ〜!」ダッ!


 『ガ!?』



 武装を生成し駆け出したエマに怪物達は驚く、無理もないだろう、先程まで龍也の側にいた少女が一瞬にして自分達の群れの中心へと移動していたのだから



エマ「そら!、そらそら!!」


 『ガウッ!』『ガオッ!』『ガオオォ!』


エマ「遅い、遅い♪」



 素早く三体を蹴り倒し、反応して襲ってきた怪物達の攻撃もその素早い動きで躱しカウンターで蹴り倒す。


 あっという間にオオカミ達を倒してしまうと他のオオカミ達よりも十倍はありそうな大型の怪物が現れる。



 『グアァッ!!』


エマ「おっと!コイツがボスね!・・・そら!そらそら!!」



 不意打ち気味に向かって来た攻撃を軽く躱して横に回りこみ、蹴りを繰り出すがあまり手応えを感じない


 ダメージが少ないのかすぐさま反撃してくるがバク転して難なく回避する。



エマ「よっと!」


龍也「なんだ!、随分と手こずってるじゃねぇか!」



 エマが少し手こずっているのを、はっはっはと笑っている、そんな龍也にイラっとした表情を返す。



エマ「あのねぇ、初めての敵は少し様子見んのは基本でしょうが!」


龍也「はん!ならさっさと終わらせろ!なんなら手伝ってやろうか?」


エマ「お構いなく!っと!」



 悪態つきながらも怪物の攻撃を軽く躱して高くジャンプする。


 高く飛び怪物の頭上を越えると右脚を上に伸ばしそのまま体を丸め回転をしながら丸鋸のように落ちてくる。


 ギュルルルル!

 バチバチバチッ!!


エマ「《ジェノサイド・ギア》!!!」


 ドガッ!!


 『ガッ!・・・』



 高速回転しながら落ちて来る雷を纏ったカカト落としが怪物の脳天を直撃し断末魔すらあげず死亡する。


 

エマ「ほいっと!おっしま〜い♪」



 掃除でも終わらせたかのように手をはたきながら龍也の元へとやって来る。



龍也「ったく、まどろっこしい戦いしやがって!、あんな雑魚一撃で倒せばいいのによ」


エマ「そんな事だからいつも先生に怒られるんじゃん、龍也はいっつも飛ばし過ぎなの!この前だって」


龍也「あ〜うっせうっせ!んな事よりこれで全部か?」


エマ「うん、確かこれで・・・」



 ズズーーン!!



龍也、エマ「「?」」



 後ろの方から謎の地響きを感じて振り向くとそこには・・・



エマ「うっわ!でっか!30メートルぐらいあるんじゃない?」


龍也「へぇ〜おもしれぇ!」



 岩の身体を持った巨人ゴーレムであった。


 もともと体の大きい魔物ではあるがそれでもかなりのサイズであった。



エマ「強そうな魔物、でももう時間ないし今日のところはやめとこっか」



 突然の敵だが此方には気づいていない焦らず腰のウェストポーチから端末を取り出す。



エマ「お、あったあった!そろそろ戻るよ・・・・・あれ龍也?」






龍也「うおぉぉぉぉぉぉ!!!!」ダダダッ



 時間を気にして戦闘終了し帰投しようとするが当の龍也は話を聞かず、ゴーレムへと向かって走り出していた。



エマ「ちょ!、ちょっと龍也何してんの!そろそろ戻らないと!」


龍也「はっ!ざっけんな!せっかく面白そうな獲物がいんのに逃げるかっての」


龍也「手ぇ出すなよ!!」



 エマの指示を無視して向かって来る龍也に気づいたのか拳を握り締めハンマーのように振り下ろして来る。


 大柄な龍也の体格でも簡単に覆い尽くす程大きな拳が迫って来る・・・



龍也「邪魔だぁ!!」


 ガキンッ!!



 ・・・が龍也はいとも簡単にその拳を左腕で弾き軌道を逸らす。


 龍也へと当たらず地面へとめり込み動きを止めた岩の腕へと飛び乗り駆け上がって行く。



龍也「どりゃあ!!」


 バゴンッ!!!

 

 『・・・?!』


 

 頭部まで駆け上った龍也は先程と同じように右腕を炎で包みゴーレムの顔面を殴り飛ばす。


 殴られた部分を大きく凹ませその衝撃にゴーレムも驚いて巨大をよろめかせ転倒する。



エマ「うっわ〜、相変わらず、すっごい馬鹿力だね〜」



 自分の何十倍もある岩の塊を殴り付け腕を痛めるどころか後方へ吹き飛ばす姿を見て驚くと言うより寧ろ清々しさすら感じる。




龍也「オラオラ!とっとと立てよ!!」



 エマのそんな気を知らず横になって倒れているゴーレムに向かって自分の拳を叩いて挑発する。


 立ち上がったゴーレムは自分を殴り飛ばした龍也を睨みつけ今度は拳ではなく掌で押しつぶそうとしてくる。



龍也「面白れぇ、こいや!!!」



 しかし龍也は逃げず両手を広げ受け止める。


 ズンッ!!


 ゴーレムが叩きつけた先の地面はその衝撃と重量によって大きくひび割れ受け止めた龍也の脚が半分ほど埋まってしまうぐらいだ。



龍也「ふんっ!!」



 しかし受け止めた龍也はそのまま一本背負で後方へと投げ飛ばす。



エマ「わわわ!あっぶないでしょうが!」


龍也「うっせぇ!どいてな!!」



 突然飛んで来たゴーレムに驚きながらも素早く逃げて悪態をつく


 だが龍也は戦いに集中しているせいかあまり聞こえてないみたいで投げ飛ばしたゴーレムへと突っ込んで行く。



 『・・・・・!!』



 ゴーレムも自分へと向かって来る龍也へ拳を突き出す。



龍也「これで終わりだ!!」



 龍也も炎を纏い拳を突き出し正面から迎え撃つ


 ドォンッ!!!


 二つの拳がぶつかり合った事で凄まじい衝撃が辺りに響き渡りお互いの動きが止まる。


 バキッ!!


 だがそれは一瞬だけ、龍也の拳はゴーレムの右腕を砕きながら突き進む



龍也「おおおおおお!!!!」


 『?!?!・・・』


龍也「《爆・烈・突・破ばくれつとっぱ》!!!」



 体全体に炎を槍のように纏い腕を完全に粉砕してその勢いのままゴーレムの胸の中心を貫く。



 『・・・・・・・』



 胸に大穴を開けたゴーレムは動きを止め全身がひび割れていき崩壊していく。







龍也「へ!、楽勝楽勝!」


エマ「ほら、満足したでしょ、戻すわよ!」



 ゴーレムが倒されたと同時にエマが端末のとあるボタンをおすと空や森が真っ白い光に包まれた。


数秒間その光が続くと・・・・




 《訓練お疲れ様でした、お体に気をつけてごゆっくりお休みください》



 アナウンスと共に真っ白な四角い空間へと移動していた。



エマ「いや〜凄かった!あんなデカイ魔物倒しちゃうなんて、さっすがだね〜!」


龍也「当然だっての!、ハッハッハ!!」


エマ「訓練無理矢理延長してみた甲斐があったよ!」



 そう彼等がいた空間はリアルバーチャル映像によって作られた完全実戦型の訓練空間であった。


 完全実戦型であるため危険性も高く本来なら一年生である二人が使えるものではないのだが・・・

 


龍也「しっかしやっぱ訓練は実戦形式に限るな、机にかじりついてたって強くなれるかっての」


エマ「つまんない授業サボって訓練施設に侵入して正解だね!」





 ヴァー! ヴァー! ヴァー!



龍也、エマ「「げっ!」」



 何処からともなく警報が聞こえて来る。



エマ「や、やばいよ!バレちゃったよ!!」


龍也「エマ!逃げるぞ!!」


エマ「りょ!了解!!」



 警報の音を聞いた瞬間二人の意見は一致し龍也は脚の力を全開にし、エマもライトニングブーツを装着し走り出す。



龍也「おいエマ!、バレないって言ったじゃねぇかよ!」


エマ「龍也が最後の最後で好き勝手したからだよ!長く居すぎたんだよ!」



 素早く訓練塔を抜け出し走り続ける二人の足元に魔法陣が現れる



龍也「!!」


エマ「うぎゃ!」

龍也「うおっ!」



 魔法で作られたネットが二人を吊り上げる



龍也「あー!くっそ!この!!」


エマ「あだだだだ!!動かないで!」



 力任せに引きちぎろうとするが龍也の怪力でもネットは切れず、下敷きになっているエマが苦しむだけであった。



 「まったく、お主らは・・授業をサボるわ訓練施設に侵入するわ」



 吊り上げられた二人へと一人の老人が近づいて来る。



龍也「ボルス!!てめぇ、下ろしやがれ!」


エマ「ボルス先生〜下ろしてくださいよ〜」


ボルス「この間は勝手にクエストを受けて森へと出かけて、その前は勝手に危険区域のダンジョンに侵入、今回は禁止されている訓練を勝手にする、まったく何故こうも危険な事をしたがるのか・・・」


龍也「うるせぇ!お前らがぬるいんだよ!俺は強くなる為にこの学校に入ったんだ!!、なのにショボい授業ばっかしやがって!」


ボルス「じゃから、そう言った授業は二年になってからと言っておるじゃろう・・・今のお主達では危険なだけじゃ」


龍也「なら試してみろやコラ!!下ろして勝負しろや!!」ジタバタ!


エマ「痛い痛い!暴れないで!!」


ボルス「ほっほっほ!その程度の拘束を解けない時点でやるだけ無駄じゃよ、どうせ反省文や停学にした所で好き勝手やるだけじゃろうし、今日一日そこで反省しておれ!」


龍也「あ、まちやがれ!逃げんな戦え!!」


エマ「先生〜下ろして〜」



 龍也の叫びも虚しくほっほっほと笑いながら校舎の方へと戻っていく





エマ「行っちゃったね・・・」


龍也「ああ・・・・・、なぁ」


エマ「ん?、何?」


龍也「まぁ、なんだ・・・・悪かったな・・もっと早く出て行くべきだったな」


エマ「良いよ別に、アタシも無理矢理止められたのに止めなかったし、そもそも今回誘ったのアタシだしさ」


龍也「そうか・・」


エマ「しっかし!こうなんのも何回目だろうね♪」


龍也「ここに来てからどれぐらいだ?」


エマ「一ヶ月ぐらいだよね、それで8回も捕まってるんだから笑ちゃうよね!」


龍也「一ヶ月か色々あったな・・・・」



 龍也が思い出すのはこの学園に初めてやって来てエマと出会うまでの事である。











エマ「ねぇ、回想入る前にせめて位置変わってくれない?」


龍也「無理、動けん」










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