疑惑
調査で明らかになったこの共通点から、答えを探すこととした。
着目すべきは、VR世界の中で発信した言葉や投稿であることと、匿名での誹謗中傷であることの2点である。
このVR世界が発展した今、ここで発信した言葉や投稿は、発信者の登録名を明示するのが一般的である。一昔前は個人情報保護の観点から隠される事が多かったが、その反面、無責任な発言やデマ、炎上、嫌がらせ等の横行する無法地帯になりやすいというデメリットがあった。しかし、アカウントを行政が管理する様になって以降、現実での個人情報を晒さずに活動できるため、発信する内容へ責任を持つという観点から、発信者の登録名を明示することが求められる事がふえた。そして発信者名の明示が、言論の自由を保護することにも繋がり、次第に一般へ普及した。
そんな中で、匿名かつ誹謗中傷の発信が多数となると、なかなかに異質である。
ネット上での誹謗中傷が原因となって、死者が出ることも過去には往々にして起きていた。そういった背景もあって、今回の問題は意デリケートな部分に本質があると見込まれ、慎重さを求められるような調査方針に変更された。
そこから一気に調査は進み、最初の一件から4ヶ月が経った今日、ある事が判明した。
誹謗中傷による死者が出た過去の事件で、中傷する側として投稿していた人達のアカウントが、今回の被害に遭っているのだ。
全てを確認できているわけではないが、現時点で調査している被害アカウントのほとんどが、過去に事件化している投稿に関連がある者だった。