調査中
日ごとに増え続ける通報に、現実とVR世界と両方で捜査が続けられた。各国で同様の事象が起きており、それぞれ独自の調査と他国の関連機関との情報共有が迅速に行われていたが、手がかりがなく、膠着状態であった。
捜査は主に2つに分かれており、現実では警察等による本人の安否確認と聴取がなされ、VR世界では専門家による調査チームを主体とした原因と対処法の模索が進められていた。
1件目の事象発生から1ヶ月が経ち、捜査は難航していた。VR世界およびインターネットを取り巻く環境の専門家によって編成された調査チームは、現在の客観情報での捜査が限界であると発表し、本人に通知した上で個人情報やこれまでのVR世界内での履歴を調べると告知した。行政が管理している情報については、制限付での開示になるが、この調査対象拡大により、原因の追及は一気に加速した。
調査対象拡大から早2ヶ月、原因として断定はできないが、認識されなくなったアバターのアカウントにある共通点が見つかった。
調査チームとしては、「そういった傾向がある」程度のことではないかと疑っていたため、別の可能性がないか調べ続けてきたが、その間に増え続けた被害アカウントも、同様の共通点を持ち合わせていた。むしろ、それ以外の条件や状況は異なり過ぎていて、この共通点が要因になっていると認めざるを得ない状況になっていた。また、現実でもVR世界でも捜査は続けられているが、期間の割に公表できる調査結果が少なく、行政や捜査機関が焦っていた事もあって、これを一因であると位置付けて、調査段階であるが公表する事にした。
調査で明らかになった共通点は、VR世界の中で発信した言葉や投稿が匿名での誹謗中傷である比率が格段に高いアカウントであることだ。