プロローグ【1】
ばたばたばたばたと慌ただしい音が城の中を駆け巡る。
「姫様、お待ちください!」
「待つって言って待ついい子ちゃんなら今頃走ってないよーだ!」
サファイアのような双眸と金髪のボブカット、真っ赤なリボンを付けた少女は舌を出して廊下を走り抜ける。 無論、初老を迎えてる執事はその速さに追いつくはずもなく距離が離れていくだけであった。
そして少女は巨大な門…つまり城で言う玄関に辿り着く。
「姫様、お戻りください」
屈強な騎士。姫と呼ばれる少女からすると横にも縦にも大きな男達が槍を交差させて行く手を阻む。
「はぁ…はぁ、追いつきましたぞ。さぁ、部屋にお戻りください」
後から追ってきていた執事が追いつき、まさに四面楚歌。
少女はこの状況に落胆したのか、俯き、顔は見えない。
騎士が彼女の肩を持ち、執事に引き渡そうとした瞬間のことだった。
「ざーんねん!」
あたりに轟音が響く。
少女はその華奢な体からは考えられないような、膨大な力を、騎士の来ていた甲冑に加える。
その力は屈強な騎士が吹き飛び、それに連ねてそこにいた騎士達諸共吹き飛ばした。
騎士達はそれぞれが三者三様の叫び声やうめき声をあげて空の彼方へ消えていく。
その様子を見届けた少女はふぅ…とあたかもちょっとした一仕事を終えたように額の汗を腕で拭い、ガラ空きとなった門をまた超加速で走り抜ける。
唖然とそれを見つめてしまい、執事は少女を見失ってしまったのだった。
*
「うふふ、今日の魔法も大成功ね!」
追っ手を巻いて、森の奥に逃げ込んだ少女はにっこりと笑いそう呟いたのだった。
詳しい魔法の設定等は後々記載するので、今は感覚でお楽しみください!