第94話 最強魔法とラフィットの団長
王城までの道を走る、ボルド王とムートン騎士団の一向。
だがその歩みは遅々として進まなかった。
その理由は、
「うおらぁ!死ねコラ!」
先ほどから何度も魔物の群れに遭遇しているためである。
バロンの大盾を振るい、ゴブリンの頭を叩き潰す。
だが次の瞬間には倒れるゴブリンを踏み潰し、
次から次へとゴブリンがバロンに飛び掛かっていた。
「皆さん、落ち着いて!落ち着いて避難してください!大門の方に逃げてください!」
戦うバロンの横ではククルが声を張り上げて住民を避難させてる。
だが混乱した民衆には指示は届かず、逃げ惑う人々が更に場を混乱させていた。
生まれる魔物の量とペースは加速度的に増えており、
すでにスタンピードは本格化しているとも言える状態であった。
「これは、不味いな」
ボルド王が呟く。
王自身も既に抜刀しており、自ら魔物と相対している状態だ。
「先ほどから全く進めていない。それにここから魔物の量は更に増える」
ヒナタが答える。
「こんな入口で手間取っている場合じゃないってのに」
ボルド王が悔しそうに表情を歪めた。
その時、会話する二人の間にバロンが飛び込んでくる。
「おい、このままじゃ埒があかねぇぞ!」
バロンも同意見の様だ。
「分かっている、だがここを捨てるわけにもいかない・・・」
ボルド王の目の前には泣き叫びながら非難する住民の姿があった。
ボルド王の沈痛な面持ちを見て、バロンは何かを決意する。
「チッ!仕方ねぇな。ここは任せて、先に行け。ヒナタ、お前は城まで王を護衛しろ!」
そう言ってバロンは親指を上げて笑う。
「・・・バロン」
「早く行け!俺たちはここを落ち着かせてから後を追う。モルドレッド!!」
バロンは魔物と戦い続けているモルドレッドに声を掛けた。
「了解ですぞ!ぬうぅうん!」
モルドレッドは魔力を収束させ、集中を高めた。
<風爆>
モルドレッドが魔法を放つと、
城への道を塞ぐように群れていた魔物の一群が爆発し、宙に舞いあがった。
「走れ!」
バロンが叫ぶと同時に、
ボルド王とヒナタは走りだした。
「お前らの相手はこっちだ!」
二人を追撃しようとする魔物達の注意を引くため、
バロンは大盾を叩き鳴らした。
魔物達は追撃を止め、
バロンに一斉に襲い掛かる。
・・・
・・
・
老紳士の馬に相乗りをさせて貰い、
俺は王都への進入を急いでいた。
老紳士の馬は非常に性能が良く、
進路がブレることもなく一直線に進む。
「挨拶が遅れました」
馬上で揺られながら、老紳士は俺に言う。
「私の名前はカロ・セギュールです。王の騎士団の騎士団長を務めております」
その名を聞いて俺は驚いた。
「カロ・・・貴方が?」
カロ・セギュール。
ラフィット騎士団騎士団長。
騎士の中の騎士とも呼ばれる、超一流の人物だ。
騎士であれば知らぬ者は居ないほどの有名人。
あのシャルルの上司でもある。
「おや?ご存知ですか?貴方のような将来有望そうな若者に名を知られているとは・・・非常に光栄です」
カロさんは丁寧に礼を述べる。
「申し遅れました、俺はルークです。ムートン騎士団の騎士団長を務めています。拾っていただき助かりました」
俺の自己紹介にカロさんは目を丸くしている。
「ムートンの・・・では君が陛下から勅命を受けたと言う?」
カロさんは俺に尋ねる。
俺はそれを無言で肯定した。
「なるほど、これは行幸と言えるな。まさか情報を求めていたら渦中の人物を拾うとは」
「俺もあなたに会えて助かりました」
俺はカロさんに事の顛末と、王都の状況を端的に説明した。
俺の説明を聞いて、カロさんは悔しそうに言う。
「・・・むぅ。そんなことになっていたとは。王都の防衛を担うラフィットとしては大失態ですな」
後ろからは見えないが、カロさんの表情には悔しさが滲んでいるのだろう。
「いえ、アルバなんて代物、誰にもどうにも出来なかった。ボルド王とシャルルは正しい行動と判断をしていると思います」
俺はカロさんに言葉をかける。
「ありがとう。そうですな、まずは目の前の問題を片づけることが先決。我が弟子シャルルの安否も気になるとことです。剣士としては一流だが、指揮官としては迷いも多い。それに・・・」
カロさんが何に詰まったのかは俺には理解できた。
「・・・・さて、着きますぞ。ルーク君。準備は良いかね?」
馬の速度は増し、大門の目前まで来た。
そこには多くの魔物が生まれ王都の中から逃げてきた人々に襲い掛かっていた。
俺は勢いのついた馬上から飛び降り、
魔物の一体に切りつけた。




