第92話 最強魔法と崩壊した大門
撤退は速やかに行われ、
大門の前に集まっていた騎士たちは、
大門全体が見渡せるほどの距離の丘に
退避を完了させていた。
指示を出したボルド王本人は、
緊張した面持ちで大門を見つめている。
そんな王に、バロンが叫ぶ。
「おい、ボルド王!どういう事だ!」
ボルド王はその言葉に反応し、
バロンを見たあと言葉を漏らした。
「・・・俺にも分からん。ただ指示に従ったまでだ」
「指示って・・・誰が」
「分かるだろ?お前らの団長さんだよ」
その言葉に今度はバロンが身を固くした。
ボルド王は、そこで初めて表情を崩す。
強ばった表情から一変、後悔と期待と、
感情の入り交じった複雑な表情になった。
ボルド王が初めて見せた弱気な姿であった。
「・・・お前らだけには言うが。俺の判断は王として間違っていたかも知れない。自分の直感に大勢の命を懸けちまった」
「・・・直感?」
バロンは尋ねる。
「・・・分からん。強いて言えばお前らの団長の不思議な気配にさ。本当に勇者だってなら、この状況も救えるかもしれない、そう思った」
そう言って頭を抱えるボルド王。
そんなボルド王に、ヒナタが声をかける。
「安心して」
ヒナタに顔を向けるボルド王。
「ルークは勇者。かならず貴方たちを助ける。信じていい」
そう言い切ったヒナタを見つめるボルド王。
やがて王は諦めたように表情を和らげた。
その表情には笑みが浮かんでいる。
「・・・そうだな。いつまでもグダグダ言っても仕方ない。もしダメだったらよ、俺は腹を切ってあの世で民に詫びることにするぜ」
ボルド王の言葉に、今度はヒナタが笑みを浮かべる。
その時、ヒナタは上空から迫る気配に気が付き顔を上げた。
「なんだ?」
その姿にバロンやボルド王も同時に空を見上げる。
一同が顔を上げたそこには、昼間にも関わらず星が七つ輝いていた。
「・・・星?」
「綺麗、でもなんでこんな時間に・・・・」
ククルがそんな言葉を漏らす。
星は青白く輝き、
どんどん大きくなっていく。
「お、おいあれヤバくないか?落ちてきてんぞ」
異変に気が付いたバロンが言う。
「あれは星じゃない!全員、伏せろ!!」
ボルド王が叫ぶと同時に、
遥か上空から降り注いだ七つの隕石が
ボルドの大門へと着弾した。
鳴り響く轟音。
地響き。
同時に地面が激しく揺れた。
とてつもない質量を持った隕石が、
常軌を逸した速度で大門に衝突した。
その衝撃で壁は破壊され、
周囲の城壁が崩れ落ちる。
それが同時に7ヶ所。
それぞれの地点での崩落は、
やがてひとつの大きな崩落へと変化し、
土煙と轟音と共に次々と壁が壊れていく。
ボルド王たちは、その光景を唖然として
見つめるしか出来なかった。
数百年ボルドを守る絶対硬固の城壁が、
一瞬のうちにその姿を瓦礫の山に変えたのであった。
・・・
・・
・
『ルーク君!気を確かに!』
テレシアの叫び声が耳元で聞こえて、
俺は意識を繋ぎ止める。
<七曜>を発動した瞬間、
全身から一気に魔力を失い、
気を失いそうになったのだ。
「ぐ、これはキツい・・・」
『崩落、始まっています!次の魔法を!』
テレシアの言葉に、大門の方を見る。
そこには次々と城壁が崩れ落ちる光景があった。
そうだ。
ここで止まれば、大門の崩落により被害が出てしまう。
俺は再び意識を集中する。
『探知は完了しています!城壁の崩落範囲上にいる人間は46名!残存魔力での救出が可能です!』
テレシアの言葉が響く。
周囲に漂っていた濃密な魔力が、
再び俺に集束する。
「よし、いけるぞ。・・・テレシア」
『今です!発動してください』
俺は脳裏に浮かぶ魔法名を唱えた。
<強制転移>
それと同時に、俺の意識はブツリと途絶えた。




