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第90話 最強魔法と女神の提案


『なにか、なにか手段は・・・』


ルークとの交信を切ったテレシアは、

大門突破のための方法を必死に考えていた。


『迂回ルートは・・・ダメだ。これじゃ間に合わない』


こんなときに現場に居ないことがもどかしい。


『テレシアちゃん?お主、帰ってきて早々何をしておるのじゃ』


そう言ってテレシアに話しかけて来たのは、

自らの上司でもある老神であった。


『老神様・・・』


『・・・あの少年にのめり込み過ぎではないかの?初めての転生特典で思い入れがあるのは分かるが、人間の身体を得てまで人間界に行っていたそうじゃの。挙げ句、命を落として強制送還されて戻ってきたとか、皆心配しておるぞ』


老親の言葉に顔を上げ周囲を見ると、

他の神々がこちらを伺っているのが見えた。

優しく戒めてくれた老神の言葉に、

テレシアは少しだけ冷静になる。


初めての転生特典で思い入れがある、テレシアは老神が言った言葉を反芻する。

本当にそれだけだろうか。


たしかに女神としての仕事という面もある。


だがテレシアにとってルークは、

すでに魔法での繋がり以上の特別な存在であることは明らかだ。

彼の力になりたい。

今のテレシアを動かしているのは、

仕事以上の私的な想いであった。

テレシアは自身の想いに戸惑う。


悩むテレシアを見て老神がため息をついた。


『・・・テレシアちゃんは神族の女神じゃが、中身は年相応の人間の子と同じじゃからの。そう言う感情にかられるのも無理はないかも知れんな』


『老神様・・・』


『別に止めはせん。神が人間に恋するのはよくあることじゃからの。だが人間に恋した神の末路はどの逸話にしても悲劇じゃぞ』


老神の言葉にテレシアは息を飲む。

返事の代わりにゆっくりと頷いた。

老神は再び深いため息をつく。


『・・・実を言うとな。テレシアちゃんと彼の転生には皆が注目しておるのじゃ。その、刺激的じゃからの』


『みんなが・・・ですか?』


テレシアは再び周囲を見る。

すると周囲の神々が、ばつの悪そうな顔をした。


『・・・神々はいつでも暇じゃからの。彼が「神託」を達成出来るか皆楽しみにしてるのじゃ。本来、こちらが手を貸すのはご法度じゃが、今回はテレシアちゃんもほぼ当事者になっておるし例外じゃな』


『・・・はい』


老神の言葉にテレシアはうなずく。

老親は胸元から一通の書面を取り出し、テレシアに手渡した。


『・・・今の状況、これが役に立つじゃろう。君が留守の間に届いていたので預かっておいたぞ』



テレシアは受け取った書面を開封し、

内容に目を通す。


・・・

・・




「お、おい!こっちにまで魔力が溢れてきたぞ!」


門の前に集まっていた騎士の一人が叫ぶ。

見ると大門の中から赤い魔力が出てくるのが見えた。

そして次の瞬間には、その魔力から魔物が生まれる。

醜悪な顔をしているオーク達が大量に現れた。


「オークだ!」

「剣を抜け!戦うぞ」


大門の前もまた、一転して戦場へと早変わりする。

俺はその戦闘からは離れ、大門を見上げる。

国を守る巨大な城壁は、今や地獄の監獄を作り出していた。


周囲に現れる魔物の数が増え、

俺の回りにも魔物が生まれる気配がする。

いよいよか。

俺は腰の剣を抜刀し、戦闘に備える。


だが、その時耳元で声が響いた。


『ルーク君!』


テレシアから交信が入る。

俺は抜刀した剣を構えたまま、

その場から距離を取った。


「テレシア!待ってたぞ。門のこちら側にも魔物が生まれて、大混乱だ。早くしないと不味い」


『魔物が!?わかりました、ですが結論から言いますとその門を除き王都に入る術はありません。迂回ルートもいくつかはありますが、数時間は必要です。』


「やはりそうか・・・」


ボルド王都は大門以外のその他三方は断崖に囲まれている。

テレシアが探知してくれた上で抜け道がないという事は、

王の言うとおり本当に抜け道は存在していないのだろう。


俺はテレシアに尋ねる。


「・・・なにか手はあるか?」


『はい、あります!』


俺の質問にテレシアは自信満々に答える。








「ボルド王!」


俺は王に声をかけた。

見るとボルド王は戦闘中で、

生まれたばかりのオークを両断していた。

王族とは思えないような、見事な太刀筋。


「・・・ルークか」


こちらを見て呟く、ボルド王。

その目にはまだ力があった。



「この魔物の数、凄まじいな・・・。お前達はこんなのと戦ってくれていたことに改めて感謝する」


王は戦闘中にも関わらず、

俺に礼を言った。


「いえ、勿体ないお言葉です。・・・それより相談があります。ここを抜けられますか?」


「相談?ああ、幸いにして大門前には騎士たちが集まっている。なんとかなるだろう」


「良かった、ではこちらへ」


俺は王を先導するように歩きだした。






俺とボルド王は大門の前から離れ、

全体が見渡せるような場所まで来た。


「・・・相談とはなんだ。ルーク」


王が言う。


「大門を開く方法が見つかりました」


俺は答える。

その言葉に王の眼が見開かれた。


「・・・本当か?」


俺は頷く。


「・・・迂回ルートから街に入り、中から門を開けて貰うべく何人かの騎士はすでに送り出した。それでも後数時間はかかるだろう。お前の案はそれよりも早いのか?」


王は尋ねた。

すでに手は打っていたか。

さすがは優秀なボルド王だ。


「はい、間違いなく。ですがその、少々粗っぽい方法なので王の許可をいただこうかと思い、こうして呼び出しました」


ボルド王は少し黙って考える。


「粗っぽい・・・か。だがそれでも王都の民が助かるのであれば構わん。許可は出すからやれ。」


「ありがとうございます。ではすぐに」


「・・・一体どうするつもりだ?本当に出来るのか?」


王は俺に尋ねる。

俺はその目を見て言った。


「はい。・・・今からボルドの大門を、破壊します。」


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