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第89話 最強魔法と始まる悪夢


<炎弾>


俺の放った魔法が、

大門の壁に着弾し爆発する。

だが、煙が晴れたその後には一切の変化が無かった。

それなりの魔力を込めたつもりだったが。


「・・・ボルドを数百年守ってきた壁。やはり破壊は難しいか」


その光景を見て、ボルド王が呟く。

異変を察知し、大門前に集結しつつある騎士達。

先ほどから何度も大門の破壊を試みているが、

まったくと言っていいほど効果が見られなかった。

ボルド王によると、

大門の壁は特殊な魔法構造となっており、

その強度を最大限に増していると言う。


ボルドの大門は、

これまで幾度も外敵の侵入を拒んできた。

その強度はまさに歴史が証明しているわけだ。



「・・・時間がねぇな。早くしねぇとスタンピードが起きちまうぞ」



バロンが悔しそうに言った。

だがバロンの感じる焦りは、徐々にこの場を支配しつつある。

ボルド王ですら、この閉塞感に口数が少なくなっていた。


中にはロゼ達もいる。

ミリアルドさんやガルド将軍がいれば当面は無事だと思うが、

猶予がないことは確かだ。


どうすればいい。

俺は目の前に聳え立つ、

巨大な城壁を見上げた。


その時。


『・・・ルーク君!聞こえますか!』


テレシアから交信が入る。

いつも絶好のタイミングだな。


「テレシア、丁度良い。こっちも連絡しようと思っていた。どうした?」


テレシアならこの大門をどうにかする術を思い付くかもしれない。

俺はそう考えていた。


だがテレシアからの交信は非情にも、事態の悪化を伝える。


『・・・大変です。王都のなかでスタンピードが発生しました』


「なんだと?」


俺は立ち上がる。

その様子に他のメンバーの注目が集まる。


「あん?どうしたよ?」


バロンが尋ねる。


「・・・テレシア」


ヒナタがバロンに教える。


「交信・・・?」


ククルがヒナタに尋ねる。


「そう。今はルークに話しかけない方がいい。どうやら交信には集中力を要する」


俺はヒナタに感謝しながら、

テレシアとの会話を続けた。


「王都内にスタンピードが発生、で間違いないんだな。テレシア」


俺は皆にも聞こえるように再確認する。

その言葉に、全員の緊張感が高まる。


『はい、急激な魔力の高まりを感じます。・・・これまでで一番、悪意に満ちた魔力です。そちらはどんな状況ですか

?』


「俺たちはまだ門の前だ。大門が閉まっていて、王都の中に入れないんだ。」


『そんな・・・早くしないと、中の人達が・・・』


「どうにかこの大門を突破する方法はないか?」


『・・・調べてみます。お待ちいただけますか?』


「頼む」


俺は一度、テレシアとの交信を切った。


顔をあげると全員がこちらを見ている。

情報を期待している目だ。


既にテレシアとの交信を聴いていたようだが、

俺は彼らに対して最悪の知らせを送らなくてはいけない。

その躊躇いから俺は言葉に詰まった。


だが次の瞬間、大門の向こうから轟音が聞こえる。

耳を裂くような轟音であった。




・・・

・・



プリュレ騎士団新米騎士のレシーヌは王都の通りを走っていた。

街の至る所から立ち上る赤い魔力は、

スタンピードの前兆だと先輩騎士に教えてもらった。


レシーヌ自身は魔法を使う才能がないが、

その赤い魔力の禍々しさは感じることができた。


王都には異変が起きている。

今、手元にある情報はそれだけだ。


今朝からラフィット騎士団により大門が閉じられ、

王都から出ることが出来なくなった。

街の中は不穏な空気が満ちているが、

一部を除いて住民は落ち着いている。


これはボルド王とラフィット騎士団の存在が大きい。

結局のところ、彼らがいる限りはこの王都で何かが起きるわけがない。

みんなどこかでそう安心しているのだ。


レシーヌは騎士組合を目指していた。

プリュレ騎士団の他のメンバーと合流するためだ。

今は情報収集のため王都中を走り回っていたが、

めぼしい情報はなく一度戻ることにしたのだ。


気になるのは、運良く話を聞くことが出来たラフィットの騎士も

状況をよく把握しているとは言い難かったこと。

ラフィットが状況を知らないと言うことは、

それはとても不味い状況なのではないだろうか。

レシーヌは一抹の不安を抱えていた。

早くこの不安を仲間と共有したかった。


その時。

ふと目についた赤い魔力が、瞬いた気がした。


「ん?」


レシーヌは駆ける足を止めて、その光を見る。

赤い魔力は瞬きから徐々に点滅し、その光を強めていった。

そしてその魔力がドプリと揺れたかと思うと、

そこから一匹のゴブリンが現れた。


「え?ゴブリン・・・?」


レシーヌは自らの目を疑い、フラフラとそのゴブリンに近づく。

魔力から生まれたばかりのゴブリンは、

弱々しい鳴き声をあげながらゆっくりと立ち上がった。


「・・・うそ」


そう言いながらレシーヌは腰の短剣を抜く。

だが次の瞬間、ゴブリンが現れた魔力からさらに大量のゴブリンが

飛び出して来る。


声を失うレシーヌ。

こんな街中で魔物を見ることなどありえない。

目の前のことがまだ理解できていなかった。


仲間を呼ばなくては。

そう思い、辛うじて足を動かしたレシーヌ。


だがそれよりも早く、

ゴブリン達はレシーヌを捕捉した。

そして。

ゴブリン達はレシーヌに襲いかかる。


「いやあぁああ!」


必死に短剣を振るも、

小さな身体でまとわりつかれ、うまく身体が動かない。


そして乱闘の中、ゴブリンの拳が頭にあたり

レシーヌは地面に倒れる。


「グギャグキャグギャギャギャ!!!」


それを見てゴブリン達は嬉々としてレシーヌに襲いかかる。

薄れ行く意識の中、レシーヌが最後に見たのは

赤い魔力から次々と現れる魔物達の姿であった。



・・・

・・



「グォオオオオォン!!」

「グギャグキャグギャギャギャ!!!」

「うわぁぁぁぁあ!!! 」

「いやぁぁぁ!!」

「ギュオオオオオオン!」


扉の向こうから聞こえる、

大量の魔物の鳴き声と、人の悲鳴。


それだけでその場にいた人間には状況が伝わった。

現場に緊張感が走る。

だが外にいる俺たちにはどうすることも出来ない。

王都の人口は数万人。

唯一の出口は閉鎖されている。

地獄が、始まった。



「クソオォォォ!!!!!!」


ボルド王が大門に向かい、叫ぶ。

拳を叩きつけながら何度も何度も叫び続けた。

それは王が露にした慟哭であった。


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