第87話 最強魔法と予期せぬ告白
「・・・」
俺の説明のあとに残ったのは、
圧倒的な沈黙であった。
ぐ、空気が重い。
バロンとククルは理解が出来ないと言った様子で、
モルドレッドはキョトンとした様な顔、
ボルド王は何かを深く考えているような表情で、
それぞれ沈黙していた。
「と、言うわけだ。今まで黙っていて悪かった」
「ち、ちょっと待てルーク。」
バロンが言う。
「・・・確かにお前が勇者だってなら、ガキの癖に異常に強いことも納得がいく。そしてテレシアが女神って事ならあの完璧な探知能力も話が通る。けどよ」
バロンが下を向く。
「・・・そんなおとぎ話みたいな話、急に言われてよ。はいそうですかって理解できるほど簡単でもねぇよ」
こう言うときのバロンは弱気だ。
俺に気を遣っているようで、歯切れが悪い。
たしかにバロンの言うとおりだ。
こんな話急にされて信じられる人間の方が少ない。
俺はチラリとヒナタの方を見る。
こいつが異常だったのだ。
「その通りだ。・・・こんなタイミングですまん」
「ひとつ、答えて」
ククルが強い視線で俺を見る。
う、これは見覚えがあるぞ。
いつもバロンを怒るときのククルの目だ。
「テレシアは、無事・・・なのね?」
俺は一瞬考える。
その質問にはなんとも答え辛いな。
テレシアはつまり死んで天界に戻っているので、
死んでいると言えば死んでいる。
しかし本体は女神だから生きてると言えば生きている。
そこを無事と線引きするかどうかは、難しいところだ。
だが俺はククルの目を見ていった。
「無事だ」
その言葉に、ククルの表情が和らぐ。
ククルは小さな声でそうと言って、
それ以上追求してこなかった。
バロンとククルには色々と情報過多だったらしい、
反省せねば。
この戦いが終わったら、
二人とはゆっくり話す必要がありそうだ。
「うーむ。テレシアちゃんは天使かと思っておりましたが、女神だったのですな。いや、私としては納得です。あれだけの美貌ですから、人間と信じる方が難しかったですからな」
この状況を作り出した張本人は、
訳の分からないことを言っている。
俺はなぜかモルドレッドの尻を蹴っていた。
「あいた!痛いですぞ、ルーク殿」
モルドレッドがこちらを恨めしそうな目で見る。
よし決めた。
この戦いが終わったらこのおっさんともゆっくり話そう。
そんな状況を、
ヒナタはため息をついて見ていた。
「ここからだが・・・」
黙っていたボルド王が口を開く。
ここで空気を変えてくれるのはありがたい。
だが特に俺の話にはコメントが無かったな。
少し不気味だ。
「ルークの話では王都に異変はないとの事だが、取り敢えずは王都に戻ろう。アルバと、あの枯木の男の動向が気になる・・・」
「元からそのつもりでした。こちらとしても異存はありません」
俺は王に答える。
「ここから東に少し行ったところに宿場町があるはずだ。まずはそこで馬を借りよう」
ボルド王の言葉に全員が頷き、
俺たちは移動を開始した。
・・・
・・
・
「なんだ、こりゃ!」
ボルド王の言う宿場街につくと、
そこは商人の馬車や、騎士団、旅人でごった返していた。
明らかに異常と分かる人の量だ。
「たしかにおかしいな、これは・・・」
俺たちが状況を把握する前に、
後ろから声を掛けられた。
「・・・ボルド王!?もしやそこにおられるのはボルド王ですか?」
見ると騎士の格好をした男が一人、
こちらに向かってきた。
見慣れた鎧だ。
「良かった!本当に良かった!生きておられたのですね!」
今にも泣き出しそうなほど、
ボルド王との再会を喜んでいる。
「あぁ。お前はラフィットの騎士だな・・・?」
ボルド王が尋ねる。
その言葉に、騎士が姿勢を正す。
「ハ!失礼いたしました。ラフィット騎士団ロベルトです!カリュアド様に王の探索を命じられこちらに参りました!」
カリュアドさん。
知った名前に俺たちは安堵する。
「そうか、ありがたい。心配をかけたな。」
「いえ、王がご無事が確認でき、我らの心は休まりました」
「そうか。・・・ところでこの状
況はなんだ?またスタンピードか?」
ボルド王はロベルトという騎士に尋ねる。
ロベルトは困ったような顔でそれに答える。
「そ、それが我々も状況が把握出来ていないのです。本日から王都の大門が急に閉じられ街に入れず・・・。流通も滞り、王都周辺の宿場街に人が滞留している状況です」
「大門が・・・何かあったのか?」
「・・・分かりません。中からは一切の応答が無く」
俺たちの脳裏に嫌な予感がよぎる。
王都でなにかが起きている。
「ロベルト。すまないが、至急馬を手配してくれるか?俺たちも王都に向かってみる」
ボルド王がロベルトに言う。
「ハ!それでしたら我々の馬をお使いください!若く体力のある駿馬です!」
ロベルトはそう言って最敬礼する。
「良いのか?」
「無論です!我らは王の騎士団!騎士団のものはすべて王の物でもあります」
馬を手にいれた俺たちはそのまま宿場町を通過し、
街道を急いだ。
「カカ!こりゃ最高の馬だぜ。」
馬上でバロンがはしゃいでいる。
たしかに速く強い良い馬だ。
俺たちはいくつもの村を通りすぎ、街道を駆ける。
たしかにロベルトの言うとおり、
村には王都に入れなかった人々で溢れていた。
そしてその人数は王都に近づくごとに多くなる。
「見えましたぞ!大門です」
モルドレッドが叫ぶ。
遥か遠くからでも黙視できるほどの大門。
そしてその門の向こうからは、
空が染まるほどの赤い魔力が漏れだしていた。




