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第85話 最強魔法と異変の始まり


「・・・やけに魔物の数が多くねぇか?」


バロンが呟く。

周囲にはゴブリンの死骸が転がっている。


「そうね」


その言葉に答えたのはククルだ。

洞窟を出て、数時間。

既に5回以上魔物の群れに襲われている。


そのせいか行程は進まず、

ボルド王とバロン、ククルには焦りが出てきていた。


「スタンピードの影響だろう。各地で発生した魔物が流れてきてるんだ。こりゃ事態を終息させたとしても、しばらくはお前ら騎士団の力が必要になりそうだな。」


そう言って剣に付いた血を払い、剣を納めるボルド王。

その動作はとても自然で、

それだけでボルド王が戦い慣れていることが分かる。


「実際によ、あんたなんでそんなに戦えんだよ」


バロンがボルド王に尋ねる。

そこにもはや不自然な敬語はなく、

ククルもそれを咎めようとはしなかった。


「まぁ、王族だからな。たしなみってやつだ。若い時から一流の騎士達に訓練をつけてもらって戦場に出てりゃこれくらいは出来るさ」


謙遜をしているが、

王の実力はそこらの騎士を軽く凌駕するだろう。

バロンはそう思っていた。


「このままでは到着に時間がかかってしまいそうね。せめて馬でもあれば・・・」


ククルが言う。


「そうだなぁ。そこらの商人の馬でも借りるか?流石に王様相手なら喜んで貸してくれるだろ?」


バロンが答える。

だがボルド王は首を横に振る。


「こんな魔物が多いところで馬を借りてしまえば、無事ではすまないだろう。この辺りには野盗も多い。せめて村でもあればな」


「それもそうだな。地道に行くしかないか」


バロンは腰を上げる。

その時、どこかから人の叫び声が聞こえた。

遠くから僅かに聞こえただ


「・・・今のは」


「噂をすれば、だな。恐らく街道を行くものが襲われているのだろう、魔物か、野盗か」


「助けに行くか?」


「当たり前だ。無視なんか出来るか」


バロンの質問に、ボルド王が答える。

三人は声が聞こえたの方向に走る。







僅かな距離を走ると、

そこは木立の中の少し開けた空間であった。


既に戦闘は始まっているようで、

3人の旅人を野盗が取り囲んでいる。

だがバロンとボルド王は、すぐに異変に気が付く。


「様子がおかしいぜ」


「あぁ。どうやら助力は必要なかったようだな」


見ると旅人の回りにはすでに何人もの野盗が倒れており、

襲った相手から返り討ちにあった事がうかがえた。


今、かろうじて対峙している野盗の表情にも恐怖が見える。


と、旅人のうちの一人が動いた。

小柄な身体に似合わぬ剣が煌めいたかと思うと、

残りの野盗達が一瞬で切られていた。


目にも止まらぬ剣速。


「・・・カカ。見事なもんだな、おい。また強くなってねえか?」


バロンは感嘆の声を上げる。

後ろから声をかけたバロンに驚き振り向く旅人。


そこにいたのは、

ルーク、ヒナタ、モルドレッドの3人であった。



・・・

・・



組合から戻ってきたシャルルは、自らの副官であるカリュアドを呼び出し状況を尋ねる。

カリュアドはすぐに来てくれた。


「カリュアド、状況はどうだ?」


「はい、王の捜索と情報収集、それから騎士団長への知らせ。王都に残るラフィット騎士団を総動員し、対応に当たらせております」


「・・・そうか。市民への影響は?」


「今のところ何も。我々が動いていると悟らせぬように最新の注意を払っております」


ラフィットの動きに気が付けば何かあったと感づく者も出てくるだろう。

シャルルはカリュアドに感謝する。

ひとまずはこれで大丈夫だろう。


「王は、生きていると思うか?」


シャルルはカリュアドに尋ねる。

街に異変がない今、目下の心配は王の安否だ。


「・・・無論でございます。我らの王は強い。それはシャルル様もご存じでしょう?」


「確かにな」


王は剣士としても一流だ。

よくラフィット騎士団の訓練に混ざり剣を振っているが、

天才騎士と呼ばれたシャルルですら油断出来ない実力だ。

幼い頃から騎士達に剣を指導されていたとはいえ、

それだけでは到底たどり着けぬほど王の剣の技は洗練されていた。

仮に王族でなく一介の騎士であったとしても、

剣一本で相応の地位にまでは昇り詰めていただろう。

それほどの才気があった。


「・・・シャルル様もお疲れの様子。あとは私に任せて少しお休みになってください。病の発作も出ているのでしょう?」


カリュアドが優しい声で言う。


カリュアドに指摘され、シャルルは無意識に胸を押さえる。

確かに遠征先で無理に戦闘を重ねたからか、

断続的に発作が起きるようになっていた。

誰にも悟らせぬようにしていたが、やはりカリュアドにはバレていたか。

つくづくカリュアドの慧眼には驚かされる。


「ありがとう。ではそうさせて貰おう。何かあれば知らせて貰えるか」


「承知いたしました。では私はこれで・・・」


カリュアドが一礼し、部屋から立ち去ろうとする。

本当に優秀な副官だ。彼が居てくれて本当に良かった。


だがカリュアドが立ち去ろうとしたその背中を見て、

シャルルはある事に気が付く。

シャルルは慌ててカリュアドを引き留めた。


「・・・ま、待て。カリュアド」


カリュアドの足がピタリと止まる。


「そなた先程ラフィットを総動員してと言ったな。それは良い。だが、そうなると我らの本来の任務はどうなっている?今、王都内の防衛は誰が担っている?」



カリュアドは振り向かない。



「それに・・・カリュアド。そもそも、そなたは動けぬほどの重傷を負っていたのでは無いか?なぜそんなに動ける?」



室内に重い空気が流れる。

カリュアドは背を向けたまま、振り向こうとしない。



「・・・なぁんだ。もう気が付いちゃいましたか」


カリュアドの声が変わる。

シャルルは全身に悪寒を感じた。


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