第83話 最強魔法と静寂の街
「・・・う」
バロンは右腕の痛みで目を覚ました。
辺りは暗く、蝋燭の灯りが目に入る。
周囲はゴツゴツした岩肌。
どうやらどこかの洞窟のようだ。
「・・・バロン、目を覚ましたのね」
傍らに座っていたのはククルであった。
心配そうな顔でバロンを見つめている。
「ククル・・・俺たちは・・・ここは一体」
身体を起こすと回復魔法特有の身体のダルさを感じた。
ククルが自分に回復魔法をかけてくれていたのだと気付く。
「・・・大丈夫か?」
今度はククルとは別の方向から低い声が聞こえた。
驚いて振り向くと、そこに居たのはボルド王であった。
「王さま>・・・俺たちは・・?どうしてここに・・・」
バロンが混乱する記憶を整理していると、
次第に記憶が蘇ってくる。
始めに思い出したの真っ赤に染まる自らの視界と、
とてつもない轟音であった。
思い出して少し頭痛がした。
「・・・国宝の剣を犠牲にしちまったが、生きてて良かったぜ」
そう言ってボルド王が手に握る剣を見つめる。
見れば刀身がボロボロになっており、
もはや剣として使うことは不可能だと言うことが分かった。
あの時、アルバが魔法を放とうとした瞬間、
剣をかざした王が何かの魔法を発動した。
莫大な魔力は障壁となり、王と、近くに居たバロン達を守った。
それによりバロン達は魔法の直撃を避けることが出来たのだ。
「その剣は・・・?すごい魔力を感じました」
「これは魔剣オーパス。極上の守護魔法が込められていた。それが一撃で・・・あの魔物とてつもない強さだ」
ボルド王は悔しそうに剣を鞘に戻した。
「俺たちはどうやって逃げたんだ?」
バロンがククルに尋ねる。
「アルバは魔法を撃った後、またすぐに地面に潜ったわ。村を燃やし尽くして満足したように、ね」
「・・・それには本当に助かった。もしアルバの追撃があれば俺たちは全員死んでいただろう」
「そして目を覚まさないバロンを、ボルド王がここまで運んでくれたのよ」
「・・・それはすまねぇ。恩に切り、ます・・・」
王に担がれたと聞いて、
途端に罪悪感が芽生えるバロン。
そして何かに気が付いたようにハッとする。
「お、おい。テレシアはどこだ?あいつも村のなかに居ただろ?ちゃんと無事か?」
バロンの言葉にボルド王とククルが重い表情になる。
「村は、私たち以外は何もかも・・・」
「・・・俺の魔法では全員を守ることは出来なかった。すまない」
ボルド王がバロンとククルに頭を下げる。
一国の王から深々と頭を下げられ、二人は困惑する。
ボルド王の責任でないことは当然理解していたからだ。
「・・・アルバ、あれはヤバイぜ。なんとかしねぇと被害が拡大するだけだ。」
バロンが呟く。
その言葉にボルド王が頷く。
「分かっている。あの枯木のような男が気になることを言っていた。俺は一刻も早く王都に戻らなければならない。ラフィットがいりゃ王都はだとは思うがな・・・」
王の言葉にバロンとククルは視線を合わせて頷く。
「俺たちも王都までいきます」
「・・・ありがたい」
ボルド王、バロン、ククルはダメージを負った身体を庇いながら、王とへの帰還を急いだ。
・・・
・・
・
街道を駆けていると巨大な門が見えてきた。
ボルドの王都である。
遠目から見ると異変は無いようだ。
俺は最悪の事態が起きていないことにひとまず安堵する。
横を駆けるシャルルも同じ様子で、
その安心は共に駆けるラフィット騎士団にも伝わった様子だった。
「ルーク」
シャルルが馬を寄せてきた。
「・・・ひとまずは大丈夫そうだな。どうする」
「まずは王城へ。情報を集めたい。それから遠征に出掛けている騎士団長にも連絡を。本当にアルバと戦うのであれば戦力を集めなくてはならない。君たちはどうする?」
「俺は一度仲間の安否を確かめる必要がある。テレシアの話にあった村の方へ向かう」
「分かった。ではここで一度、別れよう。・・・もし王を見つけたら、その時はよろしく頼む」
俺とシャルルはもう一度互いに強く頷いた。
「・・・その、色々とすまなかった。」
シャルルがそんな事を言った。
「何がだ?」
「ムートン騎士団。特に君には色々と失礼な事を言った。私は君がただ若いというそれだけで、君を見下していたと思う。そして君の実力を見ようとはしなかった。許して欲しい」
素直に謝るシャルルに戸惑ってしまう。
「・・・戦いが落ち着いたら、俺に剣を教えて欲しい」
俺の言葉に、シャルルが口角だけで笑う。
「・・・それが望みか?ラフィットの剣は、厳しいぞ?」
「望むところです」
そう言って、お互いに拳を合わせる俺とシャルル。
その様子をカリュアドが優しい目で見つめていた。
「では、また会おう!」
そのままシャルル達は王都へ。
俺たちは東へと方向を変えた。
少し馬を走らせて振り返ると、
シャルル達がボルドの大門を潜る姿が見えた。
「どうするの?」
ヒナタが俺に質問する。
モルドレッドも同じ気持ちのようだ。
「まずはバロンとククルを見つけよう。・・・テレシア、聞こえるか?」
俺は女神に交信を送った。




