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第82話 最強魔法と女神からの交信



『ルーク君!応答してください!』


「テレシアか?お前、どうして・・・」


俺はテレシアの声に答える。

突然の俺が話し出したため、

ヒナタ、モルドレッド、シャルルが怪訝な顔でこちらを見る。


『ルーク君!良かった、大変な事が起きました!私、私・・』


「落ち着け、まずは状況を教えてくれ。そもそもなんで通話が出来る?」


俺とテレシアの交信は実は莫大な魔力が必要となる魔法で、

人間として過ごす間は一切の使用が出来なかった。

少しでも使用すれば以前のように魔力不足で倒れる筈だ。


『は、はい!実は私、今は天界に居るんです!・・・その、死にました!』


テレシアがとんでもない事をサラリと言う。

理解が追い付かない。


「待て。死んだ・・・ってどう言うことだ?」


俺はテレシアに質問する。


『・・・バロンさん、ククルさんとアルバに関する調査をしていたのですが、ある村で本物のアルバに出会いまして・・・。強力な魔法に抵抗する間もなく一瞬で焼き尽くされました。』


「アルバに・・・。それで、なんで天界に・・・?大丈夫なのか?」


理解は追い付いていないが、

テレシアの言葉を一つずつ整理する。


『どうやら私の人間の身体には安全装置が付いていたようで、死んでも天界に強制的に戻されるだけで済んだようです。魂の復活までに少しだけ時間が掛かってしまい、それから安全義務違反で色々なところに怒られてました。でも、こんな風に天界に戻れるならパスポートとか面倒な手続きをせず、初めから死んでおけば良かったですね!』



恐ろしいことを明るい口調で言うテレシア。

いや、そういう問題じゃないだろと心のなかでつっこむが、

話しているのは超絶チートの女神様だと言うことを思いだし、

言葉を飲み込んだ。

住む世界と常識が違うのだ。




「と、とにかく、テレシアが無事なら良かった。一緒にいたバロンとククルは?」


『・・・それが、分からないんです。お二人が部屋から出ていって間もなくとてつもない魔力の爆発を感じて、そこまでで・・・』


「・・・そうか。わかった、ありがとう。」


二人は無事だろうか。

テレシアが為す術もなくやられてしまったと言うことは、

二人もまた・・・。


『それから、ボルド王さんも一緒だったんですけど。同じく消息が分かりません』


「ボルド王も、一緒だったのか・・・?」


俺の言葉にシャルルが反応する。


「おい、さっきから何をブツブツ言っている!ふざけている場合か!」


シャルルが邪魔をするため、テレシアとの通話が乱れる。

うるさいな、こいつ。


そんな姿を見て、ヒナタがシャルルを制してくれる。


「少し黙って、恐らく仲間と会話中」


ありがたい。


「仲間、だと・・・一体どういうことだ」


ヒナタは答えず、俺の方をじっと見た。


「テレシア、そちらの状況も詳しく教えてくれるか?」


『もちろんです!』


テレシアは俺たちを分かれてからの状況を細かく説明してくれた。



・・・

・・



「そんな・・・王が・・・・」


俺はテレシアから聞いた話をヒナタ、モルドレッド、シャルルにも伝える。

こちらの状況、テレシアの話、枯木の男の話が一致した。

かなり危機的な状況と言える。


「やつの目的も正体もなにも分からない。だが今のところやつの話している事は、真実が多い。となると次の標的は・・・」


「王都」


ヒナタが言う。


「すぐに出発しよう、時間が惜しい」


俺はヒナタとモルドレッドに声をかける。

ふたりもそれに頷いた。


「・・・ま、待て。王が討たれたなど信じられるか。これはやつの策かも知れない、俺たちを混乱させるための・・・。一度落ち着いて、それから王を探そう。」


シャルルがそんな事を言って俺たちを引き留めようとする。


「落ち着くのはあんたの方だ」


俺はシャルルに言う。

その言葉にシャルルは目を見開く。


「状況から判断することを怖がれば、多くの被害が出るぞ。」


「だ、だが・・・王が・・・我が主が・・・」


シャルルはまだ迷っているようだ。


「時間の無駄。早く行こう」


ヒナタが言う。

俺もモルドレッドもそれに同意する。


「待て、私は・・・」


「シャルル様、彼らの言うとおりです。正しいご決断をしてください。」


不意に入り口から声をかけてきたのは、

聞き覚えのある声であった。


「あなたは・・・無事だったんですね」


俺は声の主に話しかける。

そこに居たのは俺たちが救ったラフィットの騎士カリュアドであった。

腹部に包帯を巻いているが自分の足で歩いている。


カリュアドは俺を見て、笑顔で答えた。


「ルーク殿、この度は私の願いを聞き入れて我が騎士団をお救いいただきありがとうございました。」


動かない身体を曲げて俺に頭を垂れる。


「カリュアド・・・」


シャルルがカリュアドを見つめる。

そしてカリュアドは厳しい視線で

シャルルを捉えた。


「・・・シャルル。貴方は騎士としては優秀だが、リーダーとしては未熟です。判断に迷われることもあるでしょう。だが、恐怖から歩みを止めては行けません。リーダーがそれでは配下に迷いが生まれます」


自らの副官から厳しい指摘を受けるシャルル。

思いがけぬ言葉にショックを受けているようだ。


「この先、貴方はさらに厳しい道を歩かれる。そこは準備不足の連続です。判断の根拠となる十分な情報が手元にある事も少ない。だがリーダーはそこから常に最善の判断をする必要がある、厳しい立場です」


「私は・・・」


「リーダーとしてはこのルーク殿の方が優秀なようです。でもそれは大きな問題ではない、成長すればいいのです。今、この瞬間に。ボルド王ならこんな時どのような指示を我々に出すか、あなたが最も理解しているはずです」


カリュアドは優しい声でシャルルに言う。

それだけでカリュアドがどれだけシャルルを慈しんでいるかがわかる。

これは騎士団の信頼を越えた親子愛のようなものだ。


その言葉に、しばらく黙っていたシャルルが口を開く。


「・・・ラフィット騎士団は、ムートンと共に王都へ帰還。情報収集のうえ民の安全を最優先に行動する。王の安否はその後だ」



こうしてムートン騎士団とラフィット騎士団は

王都に向け、夜を明かして馬を走らせた。



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