第81話 最強魔法と後味の悪い勝利
更新の順番、間違えました。。
呆然と立ちすくむ俺とシャルル。
あまりの出来事に動くことが出来ないで居ると、
不意に他方から歓声が上がった。
視線を向けると、
そちらでは残りのシルバーウルフを討伐したラフィット騎士団が、
勝利の雄叫びをあげていた。
それと同時に広場の中心にある噴水が光に包まれたかと思うと、
それまで垂れ流していた血のように赤い水から、
徐々に透明な水へと変わっていった。
スタンピードの魔力は霧散したようだ。
俺たちの勝利、のはずだが。
後味の悪い感情を俺とシャルルだけが持っていた。
「・・・とりあえず。今は目の前のことを」
そんな心中をお互いに察してか、シャルルが歩き出す。
そうだ、まだ街中には魔物がいるのだ。
少なくとも街の安全が確保できるまでは戦わねばならない。
俺も無言でシャルルのあとに続いた。
・・・
・・
・
発生した魔物の掃討が片付いたのは、
それから半日が経った後であった。
街の被害は大きく、建物は到るところで崩壊。
美しかったであろう景観は見る影を失っていた。
だが人的な被害は少なく、
この規模のスタンピードが起きたわりには
死傷者はごく僅かであったと言える。
その要因は間違いなく、
王都よりいち早く駆けつけたラフィット騎士団と、
それから街の要所を守り魔物を殲滅し続けた、
我がムートン騎士団のヒナタとモルドレッドの活躍による。
「300は倒した」
再開した時、ヒナタはそう言うと俺の胸に顔を埋めてきた。
「さすがに疲れた」
珍しいヒナタからのスキンシップに俺はドキドキしてします。
く、戦闘の後だと言うのになんて良い匂いなんだこいつ。
「イチャイチャしているところ申し訳ありませんが、私も頑張りましたぞ。私の活躍を早くテレシアちゃんにお伝えしたいものです!」
モルドレッドに声をかけられ、
ヒナタが離れる。
「邪魔者」
完全に同意だ。
「何かあった?」
せっかくの勝利にも関わらず、
浮かない顔をしている俺にヒナタが気が付いた。
さすがヒナタ。
「ああ、実はな・・・」
俺が二人に枯木の男との出会いを話そうとすると、
後ろから声がかかった。
「待て、そこからは私も一緒に聞きたい」
振り返るとそこに居たのは、ラフィット騎士団副団長のシャルル・シュヴァリエであった。
・・・
・・
・
俺たちは王から勅命を受けた後の事をシャルルに説明した。
そして俺とシャルルからはヒナタとモルドレッドに、
枯木の男が話していた事を説明する。
お互いの情報をあらかた共有し終えた後、
シャルルが口を開く。
「魔獣アルバ・・・そんなおとぎ話のような事が、本当にありえるのか?」
「俺たちの仲間が証拠を探しに行っている。だが状況証拠からはアルバの線が濃厚だ。加えてあの枯木の男の言葉・・・」
枯木の男は確かにアルバと口にした。
「あの男を信じるのか?やつは我が王が討たれたなどと世迷い事を・・・」
シャルルが悔しそうに顔を歪める。
「当然すべてを信じる訳ではない。王都にいる王に手を出すなんて、不可能だ」
俺の言葉にシャルルが何かに気が付いたような表情をする。
その顔にはわずかな焦りが見えた。
「どうした?」
俺はシャルルに尋ねる。
「お、王は王都には居ない・・・。数日前から行方不明だ」
「なんだって!?」
俺はシャルルに詰め寄る。
「・・・王は普段からフラリと居なくなってしまうのだ。君たちに会いに行った時のように、一人で」
「どうやら最悪の事態の可能性も高まってきたな。どこに行ったのかは分かるか?」
俺の言葉にシャルルは答えず、
代わりに首を横に振った。
俺たちの間に気まずい雰囲気が漂う。
枯木の男がどこまで本当の事を言っているかは分からないが、
俺たちはすぐにでも王都に戻るべきだろう。
だが、ボルド王の消息も確認ずべきだ。
王を失うことはボルド王国にとって致命傷と言える。
俺たちとラフィット騎士団がどのような行動をするか、
それにより大きく未来が変わるような予感がする。
そしてここからの判断は、
ひとつも間違えることが出来ないと言う確信があった。
クソ、判断するには情報が足りな過ぎるぞ。
行動を決める判断にはイマイチ決め手がなく、
それはシャルルも同様のようであった。
1分、2分と無言の時間が続く。
だが、そんな俺の耳に突如聞き覚えのある音が響いた。
ザーザーと砂嵐のような音、
続いてその雑音の中によく知る声が聞こえてきた。
『・・・ク君、ルーク君!聞こえますか?ルーク君!!』
それは懐かしきテレシアからの交信であった。




