第79話 最強魔法と緑の剣士
「左方!来るぞ!」
密集陣形を取っていたラフィット騎士団が、
左方から迫るシルバーウルフを迎え撃つ。
シルバーウルフの不規則な突進に対し、
大盾を装備した騎士達がしっかりとその勢いを受け止めた。
交通事故のような鈍い音が響く。
「放て!」
勢いの止まった狼に、
後衛の部隊がが矢を放つ。
鋭く放たれた矢は、
シルバーウルフの急所に当たり、
シルバーウルフはたまらず雄叫びをあげる。
「今だ!」
シルバーウルフがたたらを踏んで後退すると同時に、
前衛の騎士達が剣を抜いた。
そして集団とは思えぬほどのスピードでシルバーウルフとの距離を詰めると、その喉元と四肢を切り裂いた。
シルバーウルフは甲高い声を上げ、力なく倒れた。
流れるような連携。
ルークはその戦いに見とれていた。
「どうだ、これがラフィットの力だ。君の騎士団とは違うだろう」
シャルルが話しかけてくる。
おい、戦闘中にどや顔をするな。
だがシャルルの言うとおり、
俺たちムートンとラフィットでは戦い方がまるで異なると言える。
通常騎士団は、集団戦法を主として戦う。
それは上位の騎士団ほど戦地での戦いなど戦術的な動きが要求されるためだ。
ラフィットはその動きがとてつもなく洗練されているのだ。
これに比べたらムートンの連携なんて、連携とは言えないようなレベルだ。
それは戦術の素人である俺にも理解できた。
「次、3頭来るぞ!散隊して戦え!」
シャルルが声をかけると、
それまで密集していた陣形が3つに分かれた。
そして、それぞれが迫るシルバーウルフを迎撃する。
その時、
後方からさらに残りのシルバーウルフが迫るのが見えた、
俺は腰に差した剣を抜刀し、
シルバーウルフを討つべく地面を蹴った。
走りながら剣に炎を纏う。
と、隣を見るとシャルルが俺と同時に飛び出しているのが見えた。
「グギャアアオン!!!!」
俺とシャルルを見て雄叫びをあげるシルバーウルフ。
その口先に魔力が集束するのを感じる。
「避けろ!」
シャルルが俺に叫ぶ。
もちろんそのつもりだ。
「グギャアアン!!!」
雄叫びと同時にシルバーウルフが魔力を解き放つ。
俺とシャルルが左右に飛び退くのと同時に、
俺たちが走っていた場所を暴風が襲った。
風の勢いにより、地面がえぐれる。
凄まじい威力だ。
「遅いぞ!」
俺がシルバーウルフの魔法の威力に足を止めていると、
すでにシャルルがシルバーウルフに向け駆けていた。
俺も慌ててその後を追う。
「ハアッ!!」
俺の目前でシャルルが宙を舞う、
右手に光るレイピアにはなにか魔力が通っているようで、
緑色に光っている。
ヒナタと同じ魔剣というやつだろうか。
シルバーウルフは中空に飛び出したシャルルに
牙を向ける。
その巨大な大顎がシャルルをとらえる瞬間、
シャルルは空中で方向転換した。
ガチン、とシルバーウルフの牙が音をたてる。
俺はシルバーウルフの注意がシャルルに向いているうちに、
魔法を放った。
<炎弾>
勢い良く飛び出す火炎の弾がシルバーウルフの顔面に
着弾し、同時に爆発を引き起こす。
「キャウン!!」
シルバーウルフは子犬のように甲高い悲鳴を上げた。
「ハアアァ!!」
その隙を突いて、シャルルがシルバーウルフに追撃を放つ。
鋭いレイピアがシルバーウルフの眼球を貫いた。
シルバーウルフはその攻撃を引き離すべく、
激しく暴れた。
そしてそのままシャルルの突き刺さった剣からは、
集束した魔力が放たれる。
シャルルが魔法を詠唱した。
<雷葬>
シルバーウルフの身体にバチバチと雷が走る。
やがてシルバーウルフはそのまま大地に倒れた。
「強い・・・」
俺はシャルルの強さに感嘆の声をあげる。
魔法で援護をしたとは言え、
恐らくシャルルは一人でもシルバーウルフを倒しただろう。
剣の腕も、
魔法の威力も
俺とヒナタよりも遥かに高レベルだ。
「見、たか・・・これがラフィットの力だ・・・」
シャルルが言う。
だがその呼吸はひどく乱れており、
額には脂汗がにじんでいる。
とても苦しそうだ。
それは今の戦闘を見る限りでは、
明らかに異常とも言える状態だった。
「あんた・・・どこか悪いのか?」
俺はシャルルに尋ねる。
シャルルはその質問に答えず、
今なお戦闘中のラフィット騎士団の方を向いた。
「・・・まだ戦闘中だ。いこう。残りは2匹だ」
俺とシャルルはラフィット騎士団に加勢すべく、動き出した。
その時、どこかからか声が聞こえた?
「おや?ククク、これは面白い状況だ」




