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第75話 最強魔法とピラの街


「ルーク殿!本気で行くのですか!?」


馬上でモルドレッドが叫ぶ。


「当たり前だ!カリュアドさんに頼まれただろう。ここまで来て、見捨てる気か?」


俺はモルドレッド言う。


「人でなし」


俺の言葉に続けてヒナタが辛辣な言葉を言う。


「ぐ、しかし我らが向かおうとしている先に居るのはラフィット騎士団ですぞ?ボルド王の懐刀、騎士団ランキング第1位のSクラス騎士団に我らが助力出来ることなど・・・」


確かにモルドレッドの言うとおりだ。

最強の中の最強、ボルドの守護神・・・・

ラフィットを形容する言葉は多い。

だがしかし。


「カリュアドさんは慌てぶりを見ると余裕がなさそうだった。何かあるんだ、彼が深手を押してまで行かなくてはならなかった訳が・・・」


「む・・・」


俺の言葉にモルドレッドが黙る。


「杞憂ならそれでいい。着いたときにはスタンピードが鎮圧されてても良い。だが行かないことは許さん。あのカリュアドさんの頼みを守れないのであれば、それはもはや騎士じゃないさ。だろ?モルドレッド」


「・・・」


モルドレッドはそれ以上なにも言わなかった。


「・・・カッコいい。さすが勇者」


「あん?」


背中越しにヒナタの声が聞こえたような気がした。

だが馬上ということもあり、その言葉が俺に届くことはなかった。



・・・

・・


カリュアドさんから聞いたラフィット騎士団の進軍先は、

ボルド国の中でも比較的大きな、ピラと言う街の近辺であった。


街の近くでスタンピードが発生すれば被害は大きくなる。

それが進軍を急いでいた理由か。


「ピラの街はあの丘をさらに越えたところにありますぞ。」


モルドレッドが言う。


「行ったことがあるのか?」


「はい、何度も。ボルドの中でもかなり豊かな土地ですぞ」


俺たちは最後の丘を駆け上がる。

丘の上から見下ろした光景にモルドレッドが言葉を詰まらせる。


「・・・こ、これは」


そこに見えたのは、魔物の群れに襲われ火の手をあげるピラの街であった。


「始まっていたか」


「あそこ、戦っている」


ヒナタが指指す方向を見ると時おり魔法が放たれるような光が見えた。


「まだかなりの市民が逃げ遅れているようですな・・・これは早く鎮圧せねばかなりの被害が出ますぞ」


「そうだな、そっちを優先にしよう。ヒナタ、モルドレッド。街の入り口から入って周辺の安全を確保しておいてくれ」


「了解」


「ルーク殿は?」


「俺は一番奥だ。住民の逃げ遅れを出来る限り助けてくる、恐らくラフィット騎士団もそこにいるだろう」


「お気を付けて。ヒナタ殿、参りましょう!」


ヒナタは俺の後ろから、飛び降りモルドレッドの馬へと移った。


「また後で」


「あぁ、そっちも気を付けろ」


俺たちは二手に別れ馬を走らせた。



丘の上から見たピラの街は周囲を外壁でぐるりと囲み、

その中に街があるような構造であった。


ピラの街の外壁に近付くと、

魔物達の鳴き声が聞こえ始めた。

目の前にはボルドの大門ほどでは無いにしろ、

それなりの高さの壁がある。


俺は馬を走らせながら、

鞍の上に立ち上がり飛び出す準備をする。

魔力を集約しタイミングを計った。



<風爆>



俺は魔法の起動と同時に、

鞍から飛び出した。


放たれた<風爆>は、

俺の身体を上空へと押し上げ、

外壁を飛び越える。


「あ、やばい」


思ったよりも飛びすぎた。

着地の勢いを殺すべく、

受け身と同時に地面を転がる。

壁に激突する僅かに手前で、止まることが出来た。

危なかった、次からはもう少し調整しよう。


顔を上げると、そこには大量の魔物がおり

空から降ってきた俺に警戒しつつもすでに回りを取り囲みつつあった。

確かに今までのスタンピードよりも魔物の数が多い。

ゴブリン、オーク、それに狼型の魔物であるブラッドウルフ。

雑多に混成された魔物達が、ギラギラとした牙でこちらを見ている。


俺は剣を抜き放ち、

<炎刀>を起動させる。


「来い、獣ども」


ピラの街防衛戦の戦いの火蓋が落とされた。



・・・

・・


とある村の一室。

ボルド王は眉間に深く皺を寄せ、考え込んでいた。


部屋の中にはバロン、ククル、テレシア。


三人から魔獣アルバに関する話を聞いた後、

ボルド王は一言も発することなく黙り込んでいた。

時間にして5分か、10分か。

だが柔和な雰囲気が消え黙ったボルド王の重圧に、

バロンとククルは飲まれていた。

わずかな時間なのにひどく長い時間に感じるのであった。


「これは・・・まずいことになったな」


ボルド王が、口を開く。


「まずいこと、ですか?」


ククルが尋ねる。


「あぁ、どうやら俺たちは既に相手の策略にハマりつつあるらしい。正直、ゲームが始まっていることすら気が付かなかった。こりゃ相当なビハインドだ」


「相手の策略・・・?」


「相手の狙いも、そして相手が誰なのかも分からねぇ。最初はテステフの連中かと思ったが、それにしても手が込みすぎてる」


「テステフでは、ないんですか?」


「恐らくな。まるでチェスの試合みたいだ。テステフを動かし、スタンピードを仕掛け、盤上を操っていやがる。気が付くのがもう少し遅ければこっちはなす術もなくやられる所だったぜ」


ボルド王が悔しそうに言う。


「ボルド王!分からねぇぜ!相手は誰なんだ?何が起きてる?」


バロンが叫ぶ。


「相手は分からねぇって言ったろ。それはこれから調査するしかない、かなり後手だがな。だがこれだけ大規模な策略だ、相手が何を狙ってるかは分かるぜ」


「狙い?」


「それこそ、チェスと一緒だ。チェスの最終目標はただ一つ、『王』(キング)さ」


王の言葉に部屋が凍りついたとき、

外から轟音が聞こえた。




「グキュルルアアアアアアアアアン!!!」




大地を響かせるようなその音は、

地面の底から響くような咆哮であった。


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