第7話 最強魔法と新たな魔法
魔獣バルガスは怒りに震えていた。
念願叶って封印から解放されたものの、
右腕に深手を負ってしまっていた。
ジクジクと痛む傷が、バルガスをイラつかせていた。
それもこれも昨晩の隕石が原因だ。
あれは恐らく魔法によるものだろう、
だが隕石を降らせる魔法など聞いたこともない。
そんな事が出来るものなど存在するものか。
だがならば一体誰が。
答えの見えない状況が、
バルガスの怒りをさらに強めるのであった。
だが、とバルガスは思う。
そんなことより早くここから出て、人間どもに復讐をせねば。
自分を長いことこんな暗闇に封印してくれた御礼をしてやろう。
かつて自らが滅ぼし、壊滅させた村や街の事を考え、
思わず胸が高鳴る。
今度こそ人間どもを根絶やしにしてくれよう。
そう思い、遺跡の出口に向かい歩を進めた時、
通路の奥に異質な気配を感じた。
なにか居る、そう思うと同時に
バルガスの毛が逆立ち、
身体が勝手に臨戦態勢に入る。
通路の奥からゆっくりと人影が近付いてくる。
そこには「鬼」がいた。
・・・
・・
・
「おい、テレシア」
『はい、どうしました。ルーク君』
「ヤバイ雰囲気しかしないんだが」
『確かに周辺の魔力は考えられないほどの高濃度の値になってますね』
「ここから隕石を撃ち込んでみるか。座標指定は出来るんだろ」
『精度としてはほぼ必中のレベルで設定が出来ますが、今回はオススメしません』
「どうしてだ?」
『昨日の隕石の影響で、この遺跡の基盤は限界を迎えています。
今、隕石を撃つとルーク君ごと崩落すると思われます』
「良かった、ようやくまともな意見をくれた」
『ちょっと!それはどういう事ですか。私だって一応女神なんですよ。』
「一応って所が謙虚だな。他になにか手はないか?」
『もちろん別の最強魔法もありますよ。試してみますか?』
「どんな魔法がある?」
『発動条件が整っていないものもあるので、、今だと変化魔法などいかがですか』
「変化魔法?それはどういう魔法なんだ?」
「はい、竜化、獣化、魔人化など人体を変化させるタイプの高位魔法です。魔力を取り込むことにより、直接肉体が強化されます」
「身体強化か。最強にしては地味だな。それであの魔獣と戦えるか?」
『はい。まったく問題ないと、推測します』
あまりにきっぱりした返事。
逆に返事に心配になるな。
俺は少しだけ考え、覚悟を決めてテレシアに返事をする。
「分かった、それでいこう。」
『了解しました。それでは変化魔法の発動準備に入りますね。少々お待ちください~』
そういうとテレシアは何かをブツブツと言いながら、
静かになった。
しかし、うーん。変化魔法か。
一体どんな変化なんだろう。
翼とか生えるのかな。
いやそもそもちゃんと元に戻れるんだろうな。
ドキドキワクワクしながらまっていると、
また胸の痣が赤く光始めた。
どうやらこれが魔法発動の合図らしい。
突然テレシアが叫ぶ。
『準備完了しました!』
「わ、びっくりした」
『ご、ごめんなさい。テンションが上がってしまって。コホン、ではルーク君。改めて魔法名を詠唱してください』
だから魔法名なんて知らないって、と考えると
頭の中になぜか浮かんでくる単語があった。
無意識に、これが新しい魔法名だと理解する。
うーん、どういう原理なんだこれは。
「えーっと、なになに。<鬼神化>」
そう唱えた瞬間、俺の意識はブツリと途絶えた。