第66話 最強魔法と魔剣アウスレーゼ
「こ、これは・・・」
目前に広がる光景にモルドレッドが声をあげる。
テレシアが示した地点に到着すると、
まさにスタンピードが発生する瞬間であった。
相変わらずチートの能力だな、あの女神。
赤く染まった小川から次から次へと魔物が生まれ、
岸へと上がってきている。
そしてその大量の魔物たちが向かっているのは、
小川から少し離れて広がる村であった。
すでに村からは火の手が上がっているようで、
黒煙が見えた。
「行こう。最優先は村人の救助だ」
俺は剣を抜いて村に向かい駆け出した。
魔力の集束を感じると<風天>を発動させ一気に速度をあげた。
「キャアアアア」
「く、来るなぁぁあ!!」
村の中は阿鼻叫喚の光景であった。
襲いかかる魔物たちになす術もなく逃げ惑う村人たち。
見ると一人の女性が、魔物に追われていた。
魔物の足は速く簡単に捕まってしまう。
「グギャグギャア」
剣を振り襲いかかっているのは、二足歩行のトカゲ。
リザードマンと呼ばれる魔物だ。
振り下ろされる剣と女性の間に身体を滑り込ませ、
リザードマンの剣撃をすんでのところで剣で受け止める。
「グギャア!」
リザードマンは急に現れた俺に怒りを露にしている。
だが、遅い。
俺はリザードマンが体勢を整えるその一瞬で距離を詰め、
<炎刀>を振るった。
固い。
俺の剣はリザードマンの皮膚に刺さったものの、
切り裂くには至らなかった。
だがリザードマンは刃に纏った炎に包まれて絶命する。
これは戦うには注意が必要だ。
「大丈夫ですか?」
俺は女性に声をかける。
「・・・あ、ありがとうございます」
「小川から離れるように逃げてください。丘を越えるまでは振り返らないで」
「は、はい!」
女性は俺にもう一度礼を言うと走っていった。
なるべく多くの人を助けねば。
俺は再び村の中心に向かい走り出す。
村の中心には教会と思われる建物があり、
その周辺を魔物の群れが取り囲んでいた。
パッと見ただけでもリザードマンが50体以上は余裕でいるか。
どうやら村人たちが教会に逃げ込んで籠城しているようだ。
さすがにこの数では俺一人では厳しいかも知れない。
そう思っていると、後ろから息遣いがした。
振り返ると、そこにいたのはヒナタであった。
「今度は間に合った・・・」
珍しく肩で息をしている。
どうやら俺の<風天>に追い付くために、
全力で駆けてきた様子だ。
こないだの件がよほど悔しかったんだな。
「大丈夫か?」
俺はヒナタに声をかける。
「なにが?」
「いや、何がって息が上がっているから。戦えるか?」
「なにが?」
そう言うとヒナタは無理やり呼吸を整え、
まるで息など上がっていないように振る舞った。
強情なやつだ。
「・・・無理するなよ」
俺の声掛けにヒナタがにこりと笑う。
「大丈夫、この子の初戦闘。とても楽しみ」
「この子?」
そう言うとヒナタの腰に、
これまでヒナタが使っていた剣とは違うものが差してあった。
青色の柄で長剣のように見える。
「それ、新しい剣か?」
「ふふ、内緒。先に行く」
そう言うとヒナタは、
俺より先に魔物の群れに突っ込んでいった。
「あ、おい。ヒナタ!」
ヒナタを支援すべく、
俺も走りながら魔力を集束した。
「・・・力を貸して、アウスレーゼ」
そう言うとヒナタは抜刀する。
鞘から抜いたその剣は刀身全体が青白く光っている。
これは魔力物質が含まれた金属にみられる特徴である。
アウスレーゼと呼ばれたその剣は、
ヒナタの呼び掛けに答えるように瞬いた。
「グギャア!!」
接近するヒナタにいち早く気が付いたリザードマンが、
ヒナタに槍を向ける。
ヒナタはその槍を避けると、剣を振るった。
リザードマンはヒナタの一撃を槍で受け止める。
「はっ!」
槍で受けられた刃をそのまま滑らせてリザードマンの懐に潜ったヒナタ。
その固い鱗に覆われた皮膚に構うことなく剣を振るった。
「グギャア!!」
ヒナタの一撃はリザードマンの喉元を切り裂く。
リザードマンは倒れた。
教会を取り囲むリザードマンたちはヒナタに気が付き、
鳴き声を上げながら戦闘体勢に入る。
「ヒナタ!」
先行したヒナタに追い付いた俺は、
ヒナタの隣で多数の敵に剣を向ける。
「待って」
ヒナタから声がかかる、
「この子の力を見せる」
「力?」
そう言うとヒナタは剣に何かを語りかけた。
「これは魔剣アウスレーゼ、宿すのは氷の力」
「魔剣?」
<氷牙>
ヒナタが地面に剣を突き刺すと、
そこから巨大な氷の塊が発生し、
地面を走るように氷が生まれていく。
生まれた氷は魔物の群れに到達すると、
そこから爆発するように巨大な氷が突きだした。
氷に弾かれたリザードマン達が宙を舞う。
突然放たれた大規模な魔法に、魔物の群れは大混乱だ。
見るとヒナタ自身の放った魔法に面喰らった様子であった。
「頼りになるやつだよ、お前は」
俺の言葉にヒナタは嬉しそうな顔をする。
「当たり前。勇者の仲間は強くなけばならない」
俺たちは再度魔物の群れに対峙した。




