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第65話 最強魔法とシャルル・シュヴァリエ


魔獣アルバ。


かつてボルドの厄災と呼ばれたこの魔物の正体は、

地中を異動しながら人里を襲う巨大な蛇竜だと言う。

アルバが恐れられた理由は自身の巨体もさることながら、

アルバが現れる所、または現れた場所には魔物が大量に

発生し、大きな被害を出すことが多々あったらしい。

ボルドの民は長らくこのアルバの恐怖に晒されてきたが、

ボルド史の中でも「戦王」と呼ばれた先々代のボルド王と、

その近衛騎士団であるラフィット騎士団に討伐されたと言う。



「おいおい、受付の姉ちゃん。そんなんがまた現れたって言うのか?」


語り終えたステラにバロンが尋ねる。


「・・・もちろんそんな可能性は低いけど。あまりにも状況が似ているから」


「魔物の大量発生、地中・・・確かに共通項は多いですね。赤い魔力って言うのは?」


ククルが尋ねる。


「この話はボルド王に関する書物にもたくさん出てくるんだけど、そこに描かれるアルバは必ず赤い身体であることが多いの」


スリーカードが揃った。

これはほぼ確定かな。

あとでテレシアに確認させよう、俺はそう思った。


「とにかく調査と現場対応を分けましょう。原因の正体がどうであれ、確信が持てるまではボルド王に報告は出来ない。けど悠長に調査をしている状況でもない」


俺の提案に一同が同意するように頷く。


「情報収集はバロン、ククル、テレシア頼む。スタンピードの方には俺とヒナタ、モルドレッドで向かう」


珍しいチーム分けになったが、

情報収集組にはテレシアを配置した方が良いだろう。

ククルなら上手くテレシアを使ってくれそうだ。

反対にスタンピード現場対応組には戦闘力を集めた。

その後はククルと細かい連絡方法の確認などをして、

散会となった。


ボルド王からの勅命依頼を達成すべく、

俺たちムートン騎士団は動き出した。



・・・

・・




「それでどこから手を付けるんですかな?」


馬車の荷台でモルドレッドが口を開く。

俺たち現場対応組は早々にボルド国を出立した。


「手当たり次第ってワケにもいかないからな。これをテレシアに作って貰った」


そう言って俺はモルドレッドに一枚の紙片を渡す。

それは先の会議でも使用したようなボルド国の地図であった。

ところどころに手書きで丸印が描かれており、地点を示している事がわかる。


「ふむ・・・・これはスタンピードの発生予測地点ですかな」


モルドレッドの言葉に俺は頷く。

これなら依頼書をいちいち確認しなくてもスタンピードの気配がある場所に直行できる。


「まずはどちらから?」


「それもテレシアに聞いてある。この中で最も魔力濃度が高くて、スタンピード発生に近いのはここだ」


俺は地図の中にある一つの丸印を指し示した。


「北東、ですな。では、急いで向かうとしましょう」


俺たち討伐組は早々にボルドを旅立った。



・・・

・・



「ボルド王!昨夜はどちらに行かれていたのですか!従者から聞いてますよ、また抜け出したらしいですね!」


「すまんすまん、そう怒るなシャルル。必要な用事だったんだ」


ボルド王は自室でシャルルと呼ばれる若い騎士に怒られていた。


ラフィット騎士団副団長シャルル・シュヴァリエ。

ルーク達との謁見に現れた、利発そうな青年の正体である。



「スタンピードの件ですか?わざわざ王が出向かなくとも、用がある相手を呼び出せばよろしいでしょう?あなたはこの国の王なのですよ?」


「なるべく早く話を聞きたかったからな。俺が行った方が早かったんだ。だがお陰で貴重な話を聞けたぜ」


シャルルはため息をついた。

この人はいつもこうなのだ。

体裁や建前をよしとせず、

利や実があると思えば迷うことなく行動する。

王と言う立場になにもこだわりはなく、

本当に国のためになると思えば迷わず王位を捨てるだろう。


実力とカリスマ性を兼ね備えた王。

民から賢王と慕われるのも道理だ。


「・・・それで、何が分かりましたか?」


「ああ。予想通りこのスタンピードは自然発生するものとは違うな。規模と発生スピードが異常だ。やばい臭いがするぜ」


「・・・そろそろ我々も動く必要があるかと思います」


「そうだな。テステフの方はどうだ?お前らを動かすとそっちが心配だ」


「そちらは団長が前線で指揮しておりますので、不測の事態も含めて対応は問題ないかと。今はスタンピードの多発による国内の混乱の方が懸念事項です。至急対応にあたりましょう」


「一応、手は打ってきたんだがな・・・」


「手、ですか?」


「あぁ。とある騎士団にスタンピードに関する勅命依頼を出してきた」


「勅命依頼ですか?依頼を出すにしても4大騎士団のうち、マルゴもオブリオンも国外に出ているはずですが。ラトールの連中が手を貸すとは思えません。それともAクラス騎士団のどこかでしょうか」


「・・・違うぜ。頼んだのはムートン騎士団だ」


ボルド王の言葉に、シャルルの眉がピクリと動く。


「・・・ムートンですって?」


「あぁ。昨晩話を聞きに言ったのも連中のところだ。中規模のスタンピードを即日鎮圧して帰ってきやがった」


「ボルド王、この国難とも言える事態にCクラスの騎士団を動かされるおつもりですか。たかだか一回だけ、ランキングの末尾に名前が書かれたけの」


「そうだ」


「我らを動かすよりもそちらが最適だと?」


「そうだ。何度も言わせるなシャルル。お前たちの最大の使命は国防だ。お前たちを動かしてテステフ相手に後手に回るわけにはいかねぇんだよ」


「・・・それでも我らならば、テステフもスタンピードもどちらも確実に抑えて見せます。我らを信じてください」


シャルルの目には強い意思がみえる。


「・・・わかってる。お前たちにその実力があることも、そして俺が命じれば必ず達成してくれるってこともな」


「ならば!」


「だがな、俺には何故かムートンに可能性を感じるものがあるんだ。特にあのルークって騎士団長にな」


今度はボルド王が強い視線でシャルルを見る。

その意思の強さにシャルルは一瞬怯みそうになる。


「・・・あんな子供になにが出来ると言うのですか?」


「確かにあいつは子供だ。だが子供の成長は早いぞ。あっというまに大きくなりやがる。お前も子供を育てたらわかるぜ」


「・・・あのルークという少年が大きく育つと?」


「分からねぇ、俺の勘だ。」


そう言ってボルド王はふっと笑った。

この国は何度もボルド王の野性的な勘に救われてきている。

その王が言うのだ、臣下ならば信じるべきであろう。

しかし。


「理解はいたしました。しかし納得は出来ません。」


「ならば、どうする?」


「テステフへの対応に支障を来さぬよう、我々も動かせていただきます。よろしいですね?」


「・・・分かった」


「それでは、早速」


そう言ってシャルルは一礼すると、

王の部屋を出ていった。

その姿をボルド王は見送った。

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