第64話 最強魔法と勅命依頼スタート
「こうなる気がしてたわ」
そう言って俺たちと同じテーブルについているのは、
受付嬢のステラさんだ。
昨晩、ボルド王からの依頼を受けたため
今日は朝から騎士組合に来ていた。
「こうなるって、俺たちがボルド王から勅命依頼を受けるってことをですか?」
俺はステラさんに尋ねる。
「うーん、そこまで具体的なことじゃなくて、君たちとはなにか縁がある、それくらいの感じかしらね。でも適当な事言ってるわけじゃないわよ。私の勘は当たるんだから」
そう言うとステラさんは俺にパチリとウインクをして見せた。
その色っぽさに俺は少し気恥ずかしくなってしまう。
「あー、ルーク君なんで赤くなってるんですか!浮気ですよ、浮気」
テレシアが俺に突っ込んでくる。
「う、うるさいな。だいたい誰が浮気だ」
俺はテレシアに言い返すことで紅潮した頬を誤魔化すが、
ステラさんはそんな俺たちをニコニコと見ていた。
「そんで、どうすんだ?手当たり次第調査って訳にもいかねぇぞ」
バロンが言う。
今回の依頼はスタンピードの多発の原因究明。
ただスタンピードを鎮圧するだけでなく、その根本的な原因も調査しなくてはならない。
「・・・それについては大丈夫。テレシア、頼めるか?」
俺はテレシアに指示を出す。
さっきまでとは変わって真剣な表情になったテレシアが、
力強く頷く。
「大丈夫です!私に任せてください」
そう、我が騎士団には超絶チートの女神様がいるのだ。
魔力の問題で戦闘こそ期待できないものの、
こう言った探知、索敵案件はテレシアの出番だ。
「現在出ているスタンピードの発生状況、依頼書を見せていただけますか?」
そう言ってテレシアはステラからそれらの情報を受けとると、
一つ一つを丁寧に読み始めた。
テレシアは本来、万物を統べる女神らしい。
普段の姿からはとても信じられないが。
つまりこの世界の森羅万象を把握出来るような立場なのだ。
女神の力が100%使えるのであれば、
スタンピードの原因はおろかそもそもその原因すら一瞬で消し去ること
すら容易に出来てしまうだろう。
だが今は仮初めの人間の肉体を使用している関係で、
魔力も能力も大きく制限されているとのことだ。
本人曰く、全力の1000分の1以下。
さすがにそこまでいくと眉唾だが、
そんなことを言えばテレシアは真っ赤になって怒るため
そういうことにしている。
そのテレシアが現世でも探査、探知、索敵能力を十分に
使うために編み出したのがこの方法だ。
事前に情報を頭にインプットし、さらに自信の能力と掛け合わせることで
実際の状況をより正確に、具体的にイメージできるようになった。
ただの情報収集と言われればその通りだが、
この方法により、俺たちは聖都で効率良く依頼を片付けることが出来たのだ。
我がムートン騎士団ランキング入りの影の立役者である。
テレシアは必要な情報を頭にいれると、
ふっと息を吐き目をつむり魔力を集束させ始めた。
やがてなにか呪文唱え始める。
「これは・・・」
ステラさんが隣で声をあげて驚いている。
決して多くはないが、濃密な魔力がテレシアを取り巻いていた。
やがてテレシアは目を開けて深呼吸をし、
ステラの方を見て言った。
「・・・ボルド周辺の地図を用意していただけますか」
・・・
・・
・
「なんだこりゃあ」
バロンが声を上げる。
気持ちは分かる、俺も同じ気持ちだ。
地図を用意されたテレシアが、
地図に記入してたのは、ボルド全体を覆うように走る
ミミズが這いずったような法則性の無い曲線だった。
「分かりません」
テレシアが答える。
隣ではステラが戸惑ったような表情で俺を見ていた。
「テレシア、もう少し説明してくれる」
ククルがテレシアを促す。
「はい。探知の結果、見えたのはボルド全土に蠢く魔力の流れでした。」
「魔力の流れ?」
ククルが質問する。
「はい、あの村のスタンピードの時にも感じた禍々しい赤い魔力。それが凄まじい早さで移動しているのです」
「それがスタンピードを引き起こしてるってのか?」
バロンが言う。
「はい、蠢く魔力は各地の魔力溜まりを刺激してその動きを活性化させています。それにより強制的にスタンピードが引き起こされていると推測されます」
「大地に宿る魔力を強制的に動かして、氾濫させているってことね」
ククルが納得したような表情をする。
「だがよ、そんなことすりゃ嫌でも人目に付くだろ?今んとこそんな情報は入ってねぇぞ!なぁ、受付の姉ちゃん?」
バロンがステラに尋ねる。
「え、ええ・・・」
ステラは心配そうに答えた。
それに対しテレシアは再び力強く頷く。
「・・・情報が無いのは当たり前です。蠢く魔力が移動しているのは地中。深い地層の中を猛スピードで移動する、おそらく魔物です」
「地中だぁ!?」
バロンが声を上げる。
「そ、それは一体どんなやつなの?」
ククルがテレシアに尋ねる。
「ごめんなさい。そこまでは・・・」
テレシアの情報はそこまでであった。
だが代わりに、俺の隣でステラが険しい表情をしていた。
「赤い魔力・・・地中・・・蛇が這ったような動き・・・」
「ステラさん、なにか分かるんですか?」
俺の声にハッとするステラ。
その額には汗がにじんでいる。
「あ、ううん。違うの。そんなはずはないんだけど・・・ボルドに伝わる伝承に、そんな魔物が出てくるものだから・・・」
「伝承?」
俺はステラに更に尋ねる。
「私も、お婆ちゃんに聞いた話なんだけど・・・。かつてボルドに存在し、当時のボルド王とその騎士団に倒された魔獣がいたの」
ステラはゆっくりと語り始めた。




