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第57話 最強魔法と夢と挫折と



「なんか・・・色々疲れたわ」


謁見の間を出て宿に帰った俺たち。

ロゼがそう漏らした。


「ロゼ様・・・」


「少し、休んでいいかしら」


そう言うとロゼは自室へと戻った。

この一ヶ月、いや俺との出会う前から考えれば

もっと長い時間この日のために準備してきたのだ。


それが思わぬ形で肩透かしをくらってしまい、

ロゼたちにはなす術もなくなってしまった。

ポイヤック復興への道が崩れてしまったに等しいだろう。


俺はロゼに声をかけようと、席を立とうとした。

だがそれを制したのはミリアルドさんであった。


「お待ちください。どうされるおつもりで?」


「ロゼに声をかけようかと」


「今は不要です。ロゼ様には一人で立ち上がって貰わねばなりません」


意外とも言えるミリアルドさんの厳しい言葉に俺は驚く。


「彼女には夢がある。そして夢には障害が付き物です。この程度で心折れていればこの先何度も辛い思いをするでしょう。ここで諦めるならその方が良いのです・・・」


ミリアルドさんの言葉に俺は再び椅子に座る。

ミリアルドさんのロゼへの忠心、いやそれ以上の愛情は本物だ。

他のメンバーもミリアルドさんの言葉に賛同している様子であった。

俺はミリアルドさんの言葉に従い、

ロゼに声をかけるのを止めた。




・・・

・・




その晩、ムートン騎士団のメンバーを俺の部屋に集め、

謁見の顛末を説明した。

もちろんテステフとの戦争の件については十分な口止めをしたうえで、だ。


それぞれが異なるリアクションをしながら、

ポイヤック復興への道が厳しくなったことを予感していた。

なかでもククルはショックを受けたようで、顔色が悪い。

うーん、そりゃそうか。


「それで俺たちはどうすんだ?団長」


バロンが質問する。

うむ、結局はそこだな。


「ロゼもいつまでもあの状態ではないと思うが、今は時間が必要だろう。ミリアルドさんと相談して、俺たちはボルド滞在期間を伸ばすことにした」


当初はボルド王との謁見を成功させて、

戦争裁判の見通しがついたらすぐに聖都に帰還予定だったのだ。


「まぁ、そりゃ正しいかもな。ここからは政治の話だ、俺たちには力になれねぇ。ロゼ様にゃなんとか立ち上がって貰わないとだわな。おい、ククル!いつまでもそんな顔してんな!一番辛いのはロゼ様だぜ!」


バロンはそう言ってククルにも声をかける。

なんだかんだ言って元気付けているあたり、やはりバロンはいい男だ。


「う、うん・・・そうだよね。ロゼ様の前でこんなに落ち込んでたら悪いよね・・・ごめん」


ククルはそう言って顔をあげる。

少し顔色がよくなったようだ。


「ルークくん、ルークくん。その・・・ボルドにはどれくらい滞在する予定ですか?」


テレシアが小声で質問してくる。

たしかにテレシアはパスポートの再発行を待っていることもあり、

帰還については気になるとことだろう。

こんな時にもテレシアはマイペースだ。


「あぁ、そうだな。テステフとの戦争に関する情報収集に2週間。帰還の準備に一週間。3週間ほどをボルドで過ごすぞ」


それを聞いてテレシアの表情が明るくなる。

テレシアの手続き完了までは一週間ほどと言うことであるから、十分間に合うだろう。


「待って、それは困る」


そう言って手を挙げたのは意外にもヒナタであった。


「どうした、ヒナタ」


「私たちは騎士団。生きるにはお金がいる。3週間も収入がなくてはやっていけない」


確かにヒナタの言うとおりだ。

ムートン騎士団はランキング入りしたとは言えまだまだ零細騎士団だ。

物価の高いボルドに滞在するのはかなりの負担である。

ふむ、どうしたものか。

まさかポイヤック王家の面々に借金をするわけにもいくまい。



「カカ。それならよ、滞在してる間ボルドで仕事をしようぜ」


バロンが提案する。


「ボルドで、出来るのか?」


バロンがククルに目配せをした。

ククルは頷き口を開く。


「到着初日にボルドの組合に顔を出したついでに、ムートン騎士団の登録を済ませておいたわ。明日くらいには仕事の受注も可能だと思う」


そう言ってククルが言う。

ククルのこういった細かい事に気が回るところが本当にありがたい。さすがは年長組だ。


「よし、じゃあ明日から早速ムートン騎士団で仕事をしよう」


なんだかんだでバロン達が加入してから仕事を受けるのは初めてだ。

聖都とは勝手が異なるとは思うが、少し楽しみでもある。



「お、おぉ・・・ついにテレシアちゃんと一緒に仕事が出来るのですな・・・」


離れたところでモルドレッドが鼻息を荒くしている。

それを見てテレシアは少し怯えている様子だ。

おい、騎士団内ではハラスメントは許さんぞ、絶対に。


そのあと俺たちは三々五々散会し、

夜は更けていくのであった。


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