第50話 最強魔法と天界大使館
「い、行きましょう」
何故か緊張した面持ちのテレシアに影響され、
なぜか俺も息を飲んだ。
考えて見れば俺はここに入っても良いのだろうか。
大使館と言えば治外法権だ。
「だ、大丈夫だと思います。ルーク君も関係者ですし。不法侵入で急に聖なる炎で焼き払われる、なんてことはないと思いますよ。多分」
俺の表情から察知したのかテレシアが言う。
多分ってなんだろう、まるで安心出来ないけど。
「鬼が出るか蛇が出るか、だな」
「で、出てくるのは神様ですよっ!」
テレシアとそんなやりとりを交わしながら俺たちは
扉から民家の中に入る。
中に入ると、そこは長い通路であった。
真っ暗で何も見えないが遥か通路の先に光が見えた。
俺とテレシアはそこに向かって歩いていく。
明らかに家の全長を越える通路の長さだ。
光の先にたどり着くと、
そこにはとてつもない光景が広がっていた。
「お、おぉ・・・・」
俺は思わず声を漏らす。
そこには外観からは想像できない、
ホールのような場所であった。
とにかく天井が高い。
円形の部屋の外周に、いくつもの通路があり、
俺たちが入ってきたのもその通路の一つだ。
通路の一つ一つに多くの人が出入りをしている。
行き交う旅行客のような出で立ちの人、
制服に身を包んだ人、偉そうな議員のような人。
人人人。
いったいあの狭い民家のどこにこんなに人が居たんだと
思うほど、多くの人がそこにはいた。
部屋の中央部にはこれまた同じく円形のカウンター。
どうやらあそこが受付のようだ。
各カウンターには何かの手続きを待っている人が、
列を作っている。
「良かった~!なんかここ天界っぽい感じです!」
想像以上の異空間に呆気に取られる俺の隣で、
テレシアが喜んでいる。
こちらで出会って初めて、テレシアがここまで安心しきった表情をするのを見た気がする。
「さ、ルーク君!早く手続きをしちゃいましょう!こっちです!」
「あ、おい待て」
テレシアが俺の手を握り先導する。
向かった先はズラリと人がならんだ受付のようなカウンターだ。
手続きの列に並び、待つこと数十分。
ようやく俺たちの番が来た。
「はい、どんなご用でしょうか」
そこにいたのは愛想の良いオバちゃんと言った感じの女性だ。
「あの、人間界ツアーに来たんですけどパスポートを紛失してしまって。帰れなくなってしまったんです」
「あら、大変だったわね。もう大丈夫ですよ。個人番号を教えて貰えるかしら?」
「は、ハイ!APTX4869、1級神のテレシアです。」
受付のオバちゃんはキーボードを叩くように指を動かす。
「ハイ、受付完了よ。再発行までに一週間くらいかかるからまた来てちょうだい」
「えぇ!一週間もですか?」
テレシアが泣きそうな声を出す。
すぐに帰れる訳じゃないと分かりガッカリしている様子だ。
「規則だから仕方ないのよ、すぐだから我慢してちょうだい」
おばチャンも淡々と説明する。
うん、役所って感じだな。
「うぅ分かりました・・・よろしくお願いします」
そう言って俺たちが窓口から離れようとした時、
オバちゃんが言った。
「そうそう、本国からテレシアさん宛に書類が届いてますよ。ここで受領します?」
「書類ですか?」
「詳しくは分からないけど、何かの通知文書みたい。ハイ、じゃここにサインして受け取って!」
そう言うとオバちゃんはテレシアにさっさと書類を一式渡した。
俺たちは今度こそ受付のから離れる。
「次のかた~」
後ろでオバちゃんがせっせと手続きを進める。
大使館での手続きが終わり外に出ると、
既に日が傾き始めていた。
思ったよりも時間が掛かってしまったようだ。
「すごいところだったな」
俺はテレシアに素直に感想を伝える。
「そうでしたか?確かに人間界より色々発展してますからね!」
どや顔で答えるテレシア。
「でも再発行まで一週間か、謁見はすぐに終わるしどうするんだ?」
「そうなんです。でも受け取りしないと帰れないし・・・」
テレシアとはここでお別れかな。
俺はそんなことを考えていた。
「む、ルーク君。今とても冷たいことをかんがえてましたよね?」
テレシアもかなり勘が鋭くなってきたな。
「さあな」
「さあなって!なんですか!もーー!」
俺たちはそんなやりとりをしながら宿へと戻るのであった。
気が付けば50話までいきました。
ここまで読んでいただた方、本当にありがとうございます。
まだまだ物語は半ばですため、引き続きお楽しみください。
仕事の残業時間が多くなかなか先に進みませんが、
帰りにジョナサンに寄って頑張って書きます。
よろしくお願いします。




