第5話 最強魔法と伝説の魔獣
遅めの朝食を摂っていると誰かが家の扉を叩いた。
祖父が扉を開けると慌てた顔の男が入ってくる。
「ジークさん、ワーグさん。大変だ!遺跡が変なんだ・・・」
「どういうことだ?」
父が答える。
「わからねぇ、ただ大量の魔物が遺跡から溢れ出てきてるんだ。近隣の冒険者が駆除にあたってくれてるが、とにかく数が多い」
「直接見に行くしかないか。悪いが準備をするから、人を集めておいてくれ」
男は分かった、返事をすると街の方へ走っていった。
バルガス遺跡か。
昨日、俺が隕石を落とした場所かな。
なにか嫌な予感がする。
父は皮鎧と剣を装備すると、
すぐに家を出た。
もちろん俺も一緒に行くなどと言えるような雰囲気ではない。
俺は祖父が部屋の片付けをし始めるタイミングを見計らい、
窓からそっと外に出た。
「テレシア、テレシア。聞こえるか?」
俺は女神に話しかける。
『はーい、聞こえますよ。おはようございます」
「おはようって、すまん。悠長に挨拶している時間がないんだ。魔物が大量発生してるらしい。昨日、俺が隕石魔法を叩き込んだ遺跡から」
『昨日の、、、えっとバルガス遺跡ですか?』
「そうだ、その遺跡だ。なにか分かるか?そもそも何故そこに隕石を落とした?」
『えーっとちょっと待ってくださいね。記録を調べます』
俺は早くしてくれよ、と願いながら山道を走る。
目指すは川の上流、バルガス遺跡だ。
『分かりました、その魔物の大量発生はある魔物が原因です』
「魔物?」
『魔獣バルガス、バルガス遺跡に封印される古代の魔獣です。手元の資料によると、一応、伝説級に分類されています』
「伝説・・・?それに封印ってのもそもそもよく分からないが。そんなやつが何故?」
『昨日放った<星落とし>ですが、ルーク君はターゲット指定をしませんでした。』
確かに、そんな事はしていない。
無自覚に放ってしまったのだから当たり前と言えば当たり前だが。
『その結果、<星落とし>のターゲットは魔法の射程圏内にいる最も強力かつ敵意を持つ者が対象に自動設定されました。そして選ばれたのが、バルガス遺跡に封印されていた魔獣バルガスだったのです』
「それと魔物の大量発生にどんな関係が?」
『魔獣バルガスを封印していた魔法が強力でしたため、<星落とし>一撃では倒すことが出来ませんでした。障壁が壊れ自由になったバルガスが遺跡の奥から地上近くまで出てきています。魔物たちはそれから
追われるように遺跡から逃げているだけです。』
「理解した、早く行かないと父さんが危険ってことだな。バルガスって言うのはどれくらい強いんだ?」
『伝説級とされる魔物は、通常この世界における一連隊をもってようやく討伐できるレベルです。魔獣バルガスはかつて三つの都市を滅ぼした後に、封印されたとあります』
「よく分からないが、ヤバイってことだけは分かるな。」
俺は川の流れに沿いながら、
上流に向かって走り続けた。